仮想通貨取引は2017年後半からブームともいわれるほど話題になっています。投資したコインがあっという間に10倍や100倍に高騰することも珍しくないので、誰でも大きな利益を手に入れられるチャンスが転がっています。
しかし、そんな仮想通貨業界もいい話ばかりではありません。2018年1月にはコインチェックでNEMが盗難されてしまうという事件が発生しました。この事件をうけて、仮想通貨に対してなんとなく危険なものだと思ってしまっている方もいるでしょう。
たしかに、ビットコインやアルトコインを売買し、保有することにはこのようなリスクがあることも事実ですが、必要以上に恐れる必要はありません。正しい知識をもっていれば、リスクに対処することができますし、大きなチャンスを手に入れられるものなのです。この記事では、過去に起きたハッキング事件を通じて、これから仮想通貨投資をはじめる方に知っておいていただきたい点について詳しく解説します。
取引所で起きた重大な事件といえばマウントゴックス事件
まずは、これまでに日本の取引所で発生した盗難や不正流出事件を紹介します。マウントゴックスは、もともとは2009年にトレーディングカードの交換所として誕生し、2010年からビットコイン取引所事業を開始しました。そしてマウントゴックスは2013年には世界のビットコインのうち、約70%もの取引量を誇る世界最大の仮想通貨取引所へと成長しました。ところが、このマウントゴックスで2014年に約75万BTCと、現金約28億円が消失してしまうという事件が発生しました。
この75万BTCは2018年現在の価格に換算すると約7,500億円になります。マウントゴックスはこの事件によって債務超過に陥ってしまい、事実上経営破綻をすることになり、同年に民事再生法の申請を行っています。この事件は、ビットコインを保管していたマウントゴックスのサーバーがサイバー攻撃を受けてしまい、ハッキング被害にあったことが原因であるといわれています。しかし、後の捜査によると外部からの犯行ではなく、内部の人間による操作が行われた可能性が高いと判明しています。そして、事件翌年の2015年には、マウントゴックスの元社長であるマルク・カルプレスが自分自身の口座残高を水増した容疑で逮捕されました。さらにその後、顧客の資金を着服していたことも判明し、業務上横領の疑いで再逮捕されています。
これらの容疑はビットコインや顧客資産の消失について直接罪に問われたわけではありませんが、マウントゴックス事件自体もマルク・カルプレスによるものではないかと疑われていました。しかし、マルク・カルプレスは、2016年に保釈保証金1,000万円を支払って釈放されています。このマウントゴックス事件は2018年現在も裁判が継続していますが、マルク・カルプレスは容疑を否認し、無罪を主張しています。
マウントゴックス事件が発生した2014年はまだ国内でもビットコインやアルトコインの知名度や注目度が低く、取引所の運営をするために金融庁の許可を受ける必要もありませんでした。現在は2017年施行された改正資金決済法によって、仮想通貨取引所を運営するためには金融庁に登録して認可を受ける必要があります。したがってマウントゴックスのようにあまりにもずさんな運営をすることはできなくなりました。当時のマウントゴックスは世界最大級の取引所だったので、世界中から注目を集めました。また、消失した金額も大きかったので、ビットコインやアルトコインの知名度が高くなる契機にもなったのです。
コインチェックXEM流出事件
2018年1月に発生したコインチェックのXEM流出事件は、仮想通貨界隈だけではなく社会的な話題になり、連日ニュース番組を賑わせました。この事件では、日本円にして約580億円ものXEMが流出しました。コインチェックからXEMが流出してしまった主な原因は「コールドウォレットで保管していなかった」からだといわれています。コールドウォレットとは、インターネット環境から切り離して仮想通貨を保管することです。逆に、インターネットとつながった環境で仮想通貨を保管することをホットウォレットと呼びます。なぜコールドウォレットで保管したほうがよいのかといえば、たとえ不正アクセスをうけて仮想通貨が盗まれそうになっても、インターネットから切り離した環境に保管しておけば、盗まれる心配がないからです。
このコールドウォレットの利用は仮想通貨を安全に保管するうえで欠かせない対策です。しかしコインチェックでは、コールドウォレットで保管するための技術者が不足していたようで、ホットウォレットで保管したまま営業を続けてしまったのです。顧客資産の管理は仮想通貨取引所にとってもっとも重要な業務ともいえますが、コインチェックはそれを後回しにしてしまっていたのです。
仮想通貨にかかわる3つの危険性
マウントゴックス事件当時はまだ仮想通貨投資をしている人が少なかったので、取引所のセキュリティについてそれほど大きな議論にはなりませんでした。しかしコインチェックの流出事件は仮想通貨投資が一般のひとたちにもブームになりはじめたころに発生したため、「仮想通貨ってあぶないのかも?」という疑念を抱いた方も少なくないはずです。しかし、取引所で盗難や流出事件が発生したからといっても、仮想通貨自体が危険なものだというわけではありません。以下の3つは、それぞれ別々のものなので、きりわけて考えないといけません。
・仮想通貨自体の危険性
・取引所の危険性
・個人の取り扱いにおける危険性
まず仮想通貨自体の危険性ですが、仮想通貨はブロックチェーンという技術によって取引履歴の改ざんが不可能でセキュリティが高いことが保証されています。つまり仮想通貨自体には流出などの危険性がほぼないのです。
むしろ仮想通貨はこれからさらに伸びる業界なので、投資をするうえでは非常にオススメであるといえます。しかし、取引所はこの記事で紹介したように、たしかに危険性があるといえます。しっかりとセキュリティ対策をしている取引所を利用しないと、ハッキングや流出などの危険性があるというのは事実なのです。
また、たとえセキュリティが高い取引所を使っていたとしても、アカウントIDやパスワードを個人がしっかりと管理しておかないと、ハッキング被害に遭ってしまう可能性があります。よって、仮想通貨投資をするときにはセキュリティが高い取引所を選び、アカウント管理に気をつけるようにしましょう。
事件後に仮想通貨取引所の安全性やセキュリティはどう変化したか
コインチェック社の事件をうけて、国内の仮想通貨取引所ではセキュリティ対策を強めて安全性を高める動きが盛んになっています。各取引所はホームページで二段階認証の導入や、コールドウォレットでの仮想通貨管理について顧客に知らせるようになりました。また、日本では仮想通貨取引所の運営は金融庁による認可性になっていますが、金融庁による各取引所への立入検査も行われており、セキュリティが弱い仮想通貨取引所は事業停止処分などを受けています。流出事件を起こしてしまったコインチェックも、大手証券会社であるマネックスグループに買収されて事業を継続するようです。このように、事件以降は仮想通貨取引所のセキュリティ対策が強化されており、かつてよりも安心して投資に参加できる環境が整い始めています。
仮想通貨を安全に始めるための取引所選び4のコツ
ここでは、初心者の方が安心して仮想通貨投資をはじめるために、どのような点に気をつけて取引所を選べばよいか解説します。
セキュリティーの高さ
コインチェックの流出事件からもわかるとおり、仮想通貨取引所のセキュリティーの高さは非常に重要です。セキュリティーの高さは以下の点から判断しましょう。
・会社のお金と顧客のお金を分けて管理しているか
・コールドウォレットを使用して管理しているか
この二つを満たしていることは、仮想通貨取引所として最低限求められるレベルです。これに加えて二段階認証の設定や、ログイン時に画像認証があるかなど、セキュリティ対策がしっかりと施されている取引所を選びましょう。
運営会社の信頼度
仮想通貨取引所は近年になって生まれた事業なので、会社としての信頼度が不透明な取引所もあります。しかし、DMMやGMOなどのように別事業でしっかりと実績を挙げている企業の方が信頼性が高いといえます。なので運営主体がよくわからない仮想通貨取引所ではなく、一定の信頼性がある仮想通貨取引所を選びましょう。
運営会社の資本力
会社の資本力があれば、倒産する可能性が低いうえに、万が一流出事件などが発生したときにもしっかりと補償をしてくれるということになります。コインチェックの場合、もともとコインチェック自体が大きな利益をあげていたことにくわえて、巨大な資本力を持つマネックスグループによる買収のおかげで、顧客への補償を100%行えました。しかし、もしコインチェックがあまり資本を持っていなければ、顧客への補償が十分に行われなかった可能性もあるのです。ですから、仮想通貨取引所を選ぶ上で、運営企業の資本力もとても重要です。
取引手数料
取引手数料はセキュリティとは関係ありません。しかし、仮想通貨投資で利益を出すためにとても重要な要素です。取引手数料が高い仮想通貨取引所を選んでしますと、その分損をすることになるからです。
過去に仮想通貨取引所で起きた事件を基に、これから仮想通貨投資を始める人にとって重要な仮想通貨取引所の選び方についてお話ししました。仮想通貨取引所を選ぶときにはセキュリティが高く、手数料が低い取引所を選ぶことが重要です。仮想通貨自体は信頼性が非常に高い技術で、これからより社会に広まっていく可能性が高いといわれています。そして社会に広まれば仮想通貨の需要が増し、価格もさらに上昇するはずです。仮想通貨への投資はこれからでもまだ遅くないので、この記事で紹介した点に気をつけて、仮想通貨取引所を選びましょう。