昨今、ICOが盛んに行われています。多くのICOは資金を集めるだけ集めて逃げてしまったり、いざ上場しても公募価格から大暴落し、儲かったのは発行元だけ、といったような案件です。一方で、有望なICOを見つけ、そこに早い段階で資金を入れることが出来ると莫大なリターンが得られる側面もあります。

というとICOは投資、もしくは投機的な側面がクローズアップされてしまいます。しかし、視点を変えてみるとICOとは、崇高なビジョンやそこに向けてのロードマップ、そのプロジェクトを遂行するメンバーがそろっていて、後は資金だけが必要、という状態において、投資家に対し、プロジェクト成功の暁に、大きなリターンを出せる「出資案件」としての側面もあります。

「投資」と考えると儲かることが大前提となりますが、「本当に応援したいプロジェクト」への「出資」と考えるとまた別の側面が見えてくるのではないでしょうか?今回紹介するICOは、もしかしたら、そんな「出資」の視点で見ることが出来る案件かもしれません。ブロックチェーンの技術で医療分野をより世界に貢献するためのプロジェクトの一つとして、「Trusted Health(トラステッドヘルス)」を紹介します。投資対象、もしくは、出資対象としてご参考にいただけますと幸いです。

Trusted Health(トラステッドヘルス)の概要

医療の問題・課題をブロックチェーンの技術でTrustedHealth(トラステッドヘルス)が目指すのは世界中の病気を抱える人々と、それぞれの治療の専門的な知識、技術を持つ医療従事者をブロックチェーンの技術を使って結びつけるネットワークの構築です。そのプラットフォーム上で利用される仮想通貨が通貨単位「TDH」、TrustedHealthの発行する通貨です。

「ブロックチェーンで結びつける」というのは、言い換えると現在の世界中が抱えている医療の問題・課題をブロックチェーンの技術を使って解決しようとしていると言えるかもしれません。例えば、分かりやすいところで言うと、医療格差。医療技術が未発達な発展途上国では、先進国では問題なく治療できるような病気で命を落とす人が少なくありません。

技術は発展している先進国でも、例えばアメリカであれば、高額な保険料が支払えない貧困者が病院で治療を受けられない問題があります。日本では医療業界が利権がらみで歪な構造をしていることが、連載漫画で取り上げられることもありました。また、病院の経営不振といった問題も出てきています。

医療の最先端の技術、知識をプラットフォームに共有することによって、世界中の患者、医療従事者が必要な情報にアクセスできるようになります。必要な時に、必要な情報が瞬時に入手できることで、救うことが出来る命が格段に増えることは想像に難くありません。プラットフォーム内であらゆる情報がオープンになることで、情報へのアクセスコストが下がり、患者の側の支払い額を下げることが出来る一方で、医療機関側の経営回復も同時に図ることが出来るため、双方の経済問題を解決できるモデルになっているといえるでしょう。

ブロックチェーンの技術を用いることによって、情報の透明性と、一方で重要となるプライバシーの問題も担保できるようになるため、こういった分野への応用の意義は非常に高いと言えるでしょう。既に提携を表明している企業、医療機関も多数あり、BBCニュースなどの大手のメディアにも数多く取り上げられています。仮想通貨において重要となる「コミュニティの強さ」というポイントも満たしていると言えるでしょう。

Trusted Health(トラステッドヘルス)のICOの概要とスケジュール

Trusted Heath(トラステッドヘルス)は現在、「プライベートセール」と呼ばれる段階を終え、「プレセール」の段階に達しています。プライベートセールとは、発案者、主催者に近い立場の人が初期の段階で多くの場合最も良い条件の固定レートで買うことが出来る段階のことを指します。

次の段階であるプレセールは、一般的にICOと言われる段階の「クラウドセール」の前に期間限定で行われる「早割」のような段階です。プレセールは必ずしも全てのプロジェクトに存在するわけではありませんが、Trusted Healthは現在この段階です。プレセール期間は2018年3月20日から開始しています。イーサリアムで購入することができ、最低購入単位は1ETH。次の段階であるクラウドセールが2018年3月27日からとされていますが、公式サイトでは「現在のステージ」としてプレセールが表示されています。

予定していた金額が集まっていない、もしくは何らかの別の事情で予定が延期になっているのかもしれません。

Trusted Health(トラステッドヘルス)の競合となるICOとその中での立ち位置

医療の問題・課題をブロックチェーンの技術で解決可能とするTrusted Health(トラステッドヘルス)TrustedHealth(トラステッドヘルス)のICOは社会的な意義も大きく、インパクトがあるため、有望なICOの一つであると言えるかもしれません。ですが、だからと言って盲信は禁物です。想像に難くないですが「医療」×「ブロックチェーン」を題材としたICOは、TrustedHealthだけではありません。有望な競合ICOを幾つか挙げてみる中で、TrustedHealthの界隈の中での立ち位置を考察していきます。

・Medicalchain

Medicalchainは非常にデリケートな情報となる医療データを、ブロックチェーンの技術を用いて安全、かつ迅速に共有することを可能にするプラットフォームづくりを行っています。医者、薬剤師、保険会社といった、医療データを必要とする様々なプレーヤーがその必要性に応じて情報にアクセスすることが可能になることで、性格で透明性の高い情報共有が行えます。また、患者の側からも、自身の医療データを医者と共有するような形で「セカンドオピニオン」を手間なく、正確な情報を用いて受けることが出来ます。Medicalchinは既に複数の取引所に上場しています。

・ETHEAL

世界中の医療従事者をリスト化するプラットフォームの構築を目指しています。患者はそのリストに必要な際に母国語でそこにアクセスすることが出来ます。このプラットフォー上では、コミュニティの貢献度に応じたスコアがブロックチェーン上に記載されていきます。そういった信頼が蓄積されてゆくことでコミュニティに貢献し、価値を提供してきたユーザーが、より多くの報酬を得られるような仕組みづくりが考えられています

・LIFEX

医療系のICOというと海外の案件が多いのですが、東証一部に上場するアイロムグループが中核となり進めているプロジェクトです。ブロックチェーンの技術を情報の分析や、結果、知識の記録に用いることで、ビッグデータ解析を行い、その情報の中から新たな医薬品の開発といった新たな価値創造を行うことを目的としています。研究者がそういった情報に対してアクセスできるプラットフォームを構築することで医療やソリューションの発展が加速することが期待されます。

こういった競合と比較し、Trusted Healthが焦点を当てているのは「医療のボーダレス化」と筆者は考えています。ボーダレスとは文字通り国境を越える、という視点と、もう一つ、患者と医者の間の情報格差についてもボーダーをなくすような視点でプロジェクトが進められているように見受けられます。

医療はブロックチェーンで改革しうるか、Trusted Health(トラステッドヘルス)はその中で生き残れるか

医療は人類にとって、おそらくは未来永劫切り離すことの出来ない分野になると思われます。一方で現代の医療は日本だけでなく、世界中で諸問題を抱えており、その解決策の一つとしてブロックチェーンの技術を用いるプロジェクトは価値の高いものです。

ひとえにブロックチェーンを活用と言っても、どこに焦点を当てるかはプロジェクトによって様々。その中でも患者が世界中から必要な情報にアクセスできることを主軸に進められているTrusted Healthは意義の大きなものですし、まだ上場もしていませんが、話題性や協賛者も多く有望なプロジェクトであると言えるでしょう。

勿論、金銭的なリターンを得る目的でのICO参加も悪くないのですが、自身を救うかもしれないプラットフォームの完成に向けて、先行投資を行うような視点も持ってみるとよいかもしれません。とはいえ、ICOは必ず成功するとも限らず、また同様のビジョンを持つプロジェクトに市場を取られてしまう、といったこともあるので一歩引いた目線からの考察も欠かすことはできません。