仮想通貨の元祖であるビットコインは、今でこそ数十万、数百万といった価格が付く「金融商品」ですが、開発された当初はゲームの商品程度の認識のものでした。
現在、ある程度の時価総額がある仮想通貨に関しては、ビットコインに限らずある程度の資産としてみなされるようになりましたが、そんな中で再び、仮想通貨がゲームの商品のようになるシステムが開発されました。取引所を運営するなど、仮想通貨事業に積極的になっているGMOがゲームに実装することで、報酬として仮想通貨を受け取ることが出来るシステム、CryptChipsを開発しました。これに伴い、GMOGPが提供するウィムジカルウォーと提携することが決まっています。ゲームで遊ぶことで、仮想通貨を得ることが出来るようになります。
CryptoChipsとは?
CryptoChipsは仮想通貨を「ゲームの賞金」としてプレーヤーに配布するシステムです。ゲームの中でのステージクリア時や、ミッション達成時、ランキング獲得時など、一般的にはゲームの中で使えるアイテムが配布されるようなシーンにおいて、代わりに現実で資産となるビットコインが配布されます。
CryptoChips自体がゲームとして機能するわけではなく、他のゲームアプリと連携することにより、元々存在していたゲームの報酬として新たに仮想通貨の要素が加わってきたり、もしくは今後開発されるゲームの中には、CryptoChipsとの連携が前提になっているものも出てくるかもしれません。今後、GMOの関連各社や、ゆくゆくは他社が開発したゲーム、開発するゲームとも連携することが予定されていますが、最初の提携するゲームとして、ウィムジカルウォーが選ばれました。サービスは8月から開始予定です。
ウィムジカルウォーとは?
ウィムジカルウォー(通称ウィムウォー)は2018年初頭にリリースされた、可愛らしい動物のキャラクターを用いたソーシャルゲームです。具体的には自身のキャラクターをフィールドの中で活用することで、「陣取りゲーム」を行います。アプリをダウンロードしている世界中のプレーヤーと対戦を行うことが出来ます。
キャラクターを新たに入手したり、アイテムを使って育成したりしながら、他のプレーヤーとの対戦や、ランキングの推移を競うことで楽しむことが出来ます。ソーシャルゲームの例に倣い、基本料は無料。一般的なソーシャルゲームによく実装されている「ガチャ」といった課金要素は見当たりませんが、アイテムの入手に際して課金が必要となるケースがあり、時間を省略したいプレーヤーや、熾烈な上位ランキング争いを行うプレーヤーはゲームに対して課金を行う可能性が高くなってきます。
ルールそのものは非常にシンプルで、初心者にもとっつきやすいものとなっていますが、中級者以上同士の戦いとなってくると、戦略的な要素も大きく絡んでくるため、「無課金」ユーザーでも工夫次第である程度の領域までは進めるようですが、やはりトップ争いをするためにはゲームにお金を落とす必要性が出てくるのではないでしょうか。
仮想通貨をインセンティブとして配布するメリット
枠組みや仮想通貨が貰える仕組み、シーンについては理解しても、そもそも、「なぜ仮想通貨を配布するのか」という部分に疑問を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今まで、ソーシャルゲームの報酬と言えば、ほとんどはゲーム内で使えるアイテムやキャラクターなどゲームの外の世界では価値を持たないものでした。
こういったものであれば、開発費用を除けば原価などほとんど存在しないため、いくらでも運営の側で供給をコントロールしながら荒稼ぎが出来ました。しかし、現実の仮想通貨を、それも、運営が独自に発行したようなものではなく、ビットコインなど現実に市場に流通している通貨を配布するとなるとその仕入れに費用が掛かってきます。一体どこにそこまでのことをして仮想通貨を配布するメリットがあるのかを考察してみました。
1. インセンティブ目当てでゲームの認知やDL数が向上する
一つは単純な考え方で「仮想通貨が貰えるゲーム」となると、注目も浴びますし、とりあえずダウンロードして、プレイしてみようというモチベーションにもつながります。ゲームの注目度やDL数は、特に最初の内はどれだけのユーザーが「廃課金」と呼ばれるヘビーユーザーになるかよりも大切な要素です。とりあえず新しいゲームを探しているという段階で、一方のゲームは現実には何の見返りもない、もう一方は仮想通貨が貰えるとなるとどちらが選ばれやすいかは明らかです。
2. 課金への心理的負担が下がる
次に、クリア報酬やランキングでの報酬など、ゲームで遊べば遊ぶだけ報酬を獲得できるとなると、課金を行うことへの心理的負担を下げることが出来ます。実際のところ、報酬としての仮想通貨をどの程度の分量配分するのかは定かではありませんが、上位ランカーになれば高額の賞金が得られる、というような状況になれば、賞金獲得のための「必要経費」として課金を行うユーザーが増えることが想定されます。おそらく、十分なインセンティブを獲得できるのはその一部、ユーザーの課金は賞金の購入及び、運営の利益として吸収される構造なのではないでしょうか?
3. 取引所ビジネスとの親和性が大きい
このシステムを利用し、仮想通貨を受け取る場合、受信するアドレスを用意する必要があります。この際、同時に運営している取引所を絡めることでさらに利益を追求することができます。受取先のアドレスとしてGMOビットコインの取引所アカウントでのアドレスを指定することによって、手数料を優遇したり、もしくは同時に開設のキャンペーンを打つなど、登録者数を増やし、仮想通貨の取引量が上がれば莫大な利益を得ることが出来る、取引所のビジネスをゲームに上手く絡めていくことにより、グループ全体としてより利益を上げることが出来るようになります。
4. 将来的に独自の仮想通貨を発行する際の配布手段としての下地が創れる
ウィムジカルウォーのプレイ報酬として受け取ることが出来るのは、当初はビットコインを予定しています。今後、どういった形になるかは分かりませんが、他の有名な仮想通貨への支払いが可能になる可能性もあれば、例えばGMOが独自に開発した仮想通貨に対応する、といったことも考えられます。この時、例えばどう受け取るかをプレーヤーが選択できるとしても、そのレートに差をつけることで、自社が流通させたい通貨での受け取りへと誘導することが出来ます。そういった構想があるかは想像の域を出ませんが、独自の通貨を流通させるチャネルの一つとしても機能するのではないでしょうか。
原点回帰しつつも社会への浸透が進む仮想通貨
ビットコインの起源を知らない人にとっては、ビットコインがゲームの報酬になる、というのは驚くような発想かもしれませんが、実際のところ、この一件は仮想通貨が原点回帰しているようにも見えます。ただし、当初のように「単なる記号」ではなく、現実に膨大な価格がついている金融商品です。個人的にはこういった形で、仮想通貨が若年層に、よりイメージしやすい形で浸透していくこと自体は、今後の仮想通貨の広まりのため、意義の大きなことなのではないかと考えています。
ゲームという仮想の世界と、現実の世界の架け橋となるのが、他ならぬ仮想通貨である、などと考えると興味深いですね。仮想通貨が広まる上であ新たな形の一つとして象徴的なケースであると言えるでしょう。