スマートフォンが普及した現在では、多くの方がインターネットへ接続し日常的にデータ通信を行っています。しかし、契約内容によってデータ通信量には上限があるため、規定のデータ容量を超えてしまうと通信速度は極端に遅くなってしまいます。今回の記事では、このような問題を解決出来る仮想通貨「DENT」について解説していきたいと思います。
仮想通貨Dent(デント)はどのような仮想通貨か?
DENTとは、Dentというプラットフォーム内で使用されるトークンであり、モバイル通信データを自由に売買することを可能にする仮想通貨です。イーサリアムを基盤としており、発行上限枚数は1,000億DENTとなっています。そして、2017年6月から取引が開始されました。
ここまではやや難しい説明になってしまいましたが、より簡単に説明すると、スマートフォンの余ったデータ容量を仮想通貨で売買することが出来るサービスということです。スマートフォンの契約内容は人によって違いますが、毎月使えるデータ容量は決まっています。使用する通信データ量が多くなると、1ヶ月に通信できるデータ容量は上限を超えてしまい通信速度が遅くなってしまいます。
しかし、スマートフォンを所有していてもそれほど多くのデータ通信を行わない人も存在します。この場合、通信できるデータ容量を毎月余らせているため、それを足りない人に売買しようというのがDentというプラットフォームの仕組みです。そして、そこで使われる仮想通貨が「DENT」というわけです。
これまではデータ容量を余らせた場合には、ただ余らせるだけでした。しかし、DENTはデータ通信量を足りない人に分けることによって、これまでは価値の無かったデータ容量の余剰分に価値を与え、新たな市場分野を開拓したことになります。つまり、データ容量の余剰分の需要と供給をマッチさせることになります。
仮想通貨Dent(デント)の4つの特徴について
次に、DENTには4つの特徴があるため、そちらを解説していきます。1つ目は、すでに解説しましたがデータ容量を売買できることです。この場合、誰からでも購入することができますし、販売や寄付をすることも可能です。具体的には、スマートフォンのデータ容量が余っている場合には、データ容量をDENTで売ることができます。また、その際の価格は通信事業者ごとに決められますが、どの通信事業者を選ぶかは利用者が選べるため、価格競争が起こる可能性が考えられます。
2つ目の特徴は、データ通信の費用が適正価格になることです。現在は、docomo、au、Softbankという3社によってデータ通信価格は決められています。しかし、3社とも価格が適正かというと疑問が持たれます。そこにデータ容量が売買できるDENTが導入されることで、適正価格になることが期待されます。
3つ目は、国際ローミング問題の解決です。海外に出張や旅行で出掛けた場合には、日本の通信事業者の電波は届かなくなるため、現地の通信事業者のネットワークを使用することになります。しかしこの場合、ローミング費用が必要になり日本の定額制のプランも適用されないため、高額な請求に繋がります。このような場合にDENTが活用されることになれば、高額な通信費用が掛からなくて済むようになります。また、海外用に携帯電話やWi-Fiルーターを購入する必要もなくなります。
4つ目は、自動購入機能があることです。事前に設定しておくことで、データ容量が不足した場合には自動でデータ容量を補充することが可能になります。この機能は個人の利用者だけではなく、IoTデバイスでも利用可能です。これにより、インターネットへの常時接続を安い費用で維持することが可能になります。
今のところ、仮想通貨Dent(デント)が日本で普及する可能性は低い
では、日本での可能性について考えてみましょう。もし日本の通信事業者がDentを導入する場合には、仮想通貨交換業者として登録し金融庁から認可を受ける必要があります。仮想通貨交換業者として登録するには、申請や審査などに様々な労力が掛かることになります。通信事業者からすればその労力に見合った見返りは少ないため、日本でDentが普及する可能性は低いと考えられます。
また、何よりもDentを導入するとなると、利用者としては通信費用が安くなりメリットがありますが、通信事業者としては収益となる対象が少なくなることを意味します。つまり、通信事業者には今の所メリットとなる部分が存在しないため、これから積極的に導入に向けての動きがあるとは考えにくいと言えます。そのため、Dentは利用者目線では非常にメリットが大きく感じますが、その母体となる通信事業者へのメリットが確立されない限り、日本ではサービスが普及することは考えにくいのが現状です。
今後の仮想通貨Dent(デント)ロードマップについて
次に、DENTの今後のロードマップについて解説していきます。今後は、広告を見ることで報酬が得られるサービスの提供、プリペイドSIMの提供、インド・ブラジル・韓国などでの市場の立ち上げ、2018年中頃を目標にユーザー数100万人を達成すること、データ容量を売買するためのプラットフォーム「Dent Exchange」の立ち上げ・第2四半期(7~9月)の取引開始、通信事業者との交渉が予定されています。
広告を見ることで報酬が得られるサービスは面白い取り組みですが、ロードマップの中で特に注目すべき点は、インドやブラジル、韓国での市場の立ち上げと、通信事業者との交渉です。
IT関連の動きが盛んなインドや韓国、人口の多いブラジルで市場が拡大すれば、DENTの普及が一気に進むことが期待できます。また、すでに取り上げていますが、通信事業者との交渉がどのように進むかは今後の鍵になると考えられます。現状では通信事業者にとっては何のメリットもなく、むしろ収益の元となる通信費用が安くなってしまいデメリットしかありません。
そのため、今後は通信事業者に対してメリットが生まれるかどうかがDENTの普及に大きく影響すると考えられます。また、ユーザー数100万人の達成が目標になっているため、ユーザー数の変化もDENTの開発具合を見定めるポイントと言えます。
DENTの将来性は通信事業者のメリットを生み出せるかが鍵
それでは最後に、直近のニュースを取り上げながら将来性について考えていきます。直近ではDENTにとって非常に大きなニュースがありました。2018年7月6日に、中国の仮想通貨取引所であるBinanceにDENTが上場しています。以前からBinanceでの人気投票で上位につけていましたが、上場のニュースを受けて価格は20%も高騰し、大きね値動きを見せることになりました。
Binanceへ上場したことは良いニュースですが、将来性を考える上では通信事業者に対してメリットが生まれなければ、サービスの普及は難しいと言えます。また、現在の日本ではスマートフォンは大きく普及していますが、通信事業者大手3社による価格設定は高いと言わざるを得ません。この3社に楽天が第4の携帯電話事業者として参入することが決まっているため、今後は価格競争が起こり通信費の価格は安くなることが期待できます。
しかし、スマートフォンを使用する上では人によって使用するデータ容量には差があり、データ容量の足りない人と余らせる人が存在することに変わりはありません。そのため、そこを新たな市場として捉えたDentの取り組みは非常に興味深いものと言えます。ただ、そこには通信事業者が存在するため、将来的に発展していくかどうかは今後通信事業者にとってメリットとなる「何か」を生み出せるかどうかが鍵と考えられます。