仮想通貨ビットコインの基幹システムである“ブロックチェーン”。このブロックチェーン技術を応用して利用すれば、私たちの生活のみならず、企業運営にも変革をもたらす可能性を秘めているとのことです。2016年4月に経済産業省が調査発表した「ブロックチェーン技術が社会経済に与える影響」では、ブロックチェーン技術を利用した潜在的な国内市場規模は67兆円になると試算されております。
一方で、日本ではブロックチェーン技術を応用した技術の進歩取り組みが、海外に比べて完全に後手にまわっており、このままではこのブロックチェーン技術が次世代プラットホームとなった場合、海外企業に完全に主導権を握られてしまい、日本にとって大きな損失になる事は間違いありません。
ブロックチェーン技術について
ブロックチェーンとは2008年にサトシ・ナカモトによって(日本人なのか?個人なのか?正体は現段階では不明の人物名)開発された、分散型取引台帳や分散型ネットワークと呼ばれるもので、仮想通貨ビットコインの中核技術を原型とするデータベースの事です。従来多くのデータベースは集中型(中央集権)であり集中管理型のシステムです。データ管理者がハッキリとしており、管理者が効率よくデータを管理できることができます。
ATMでのお金の取引では、カードや本人確認で金融機関独自のデータベースにアクセスし、承認されれば預金を引き出したり送金したりすることができます。しかしこのような中央管理型データベースでは、例えば未曽有の天災が起こった場合などデータベースに損傷がおこった時に、取引証明のデータが一瞬にして消滅してしまう恐れがあります。また、悪意のある人物や内部犯行によってデータを改ざんされたり、個人情報の流出やデータベース自体の破壊という危険性もあります。
こういった事態が起きない様に中央集権型データベースでは、システム自体も高性能なものを使用し大変高額です。さらに莫大な費用を掛けてセキュリティー対策や運用の管理維持を行わなければなりません。一方ブロックチェーンと呼ばれる分散型ネットワークでは、一定時間にブロックというデータの単位を作り出し、そのブロックを鎖(チェーン)の様につないでデータをインターネット上で共有管理するシステムです。ブロックチェーン技術で世界中のいたるところにあるサーバーを介してパソコン同士で情報を共有管理するので、一部のデータベースが破損したりしても、他のサーバーやコンピューター上にデータは残りますし、もし改ざんしようとしても他のデータと合致しなければ不正に運用する事は不可能です。
このように、ブロックチェーン技術を用いれば、従来の中央集権型データベースを構築し運用するシステムに比べて、改ざんや不正なアクセスが困難になり、莫大なコストを掛けずとも安価にシステムを運用する事ができます。さらに、一か所集権型データベースでは、保守メンテナンスなどでサーバーを停止させなければなりませんが、ブロックチェーンでは一か所をメンテナンスしたとしても、他のところにデータベースが存在しますので、運用を止める事がありません。これを“ゼロダウンタイム”といい、金融機関では画期的な金融システム技術(フィンテック)といえます。ちなみに、ブロックチェーン技術を用いている仮想通貨ビットコインでは2009年よりゼロダウンタイムが続いております。
2種類のブロックチェーン
ブロックチェーンは記録と承認のプロセスがあり、プルーフオブワーク(poW)と呼ばれる作業で選ばれたものが「ブロック」と呼ばれる情報記録を作り出します。その後にマイナーと呼ばれる人、あるいは組織が次の「ブロック」を繋げる事によって徐々に承認されていきます。マイナーそしてノード(不特定多数のコンピューター)によってブロック内の情報は検証作業を行っており、不正なブロックであった場合に承認されないので、ブロックチェーンは安全性や正確性が高くなるのです。
ブロックチェーンには「パブリックチェーン」と「プライベートチェーン」とあります。これは、様々なブロックチェーン技術を大きく分けた時にこの二つとなるのですが、この違いは前述で述べた承認のプロセスを誰が行うのかという点です。簡単に違いを述べると、パブリックチェーンでは承認のプロセスを不特定多数のマイナーやノードが行い、プライベートチェーンでは一部のノードに限られています。
パブリックチェーンは不特定多数によって承認プロセスが行われるため、正当性の根拠となります。一方プライベートチェーンではその利点が薄れがちですが、管理しやすいという側面があります。管理者によって特定の信頼できるノード内部で承認プロセスが完結する為、迅速で効率的な作業を行う事ができるのです。ブロックチェーンの利点を既存の金融機関に取り入れれば、システムの効率化や情報の安全性といった他に、信頼性の高い人物だけに情報公開できたりと、既存システムの効率化に多く利用されます。この2つのブロックチェーンには利点、欠点はありますが、既存組織の効率化といった点ではプライベートチェーンが適しているのではないかと考えます。
日本ブロックチェーン協会(JBA)とブロックチェーン推進協会(BCCC)
金融機関やIT企業が中心となり、ブロックチェーンのインフラ普及と拡大促進させるため、2つの団体が立ち上がりました。
日本ブロックチェーン協会(JBA)の目的は、「仮想通貨・ブロックチェーン技術による、産業振興や社会インフラへの応用のための普及促進活動、関係省庁への政策提などを行う事で産業発展に貢献する」とあり、一方ブロックチェーン推進協会(BCCC)の目的は「ブロックチェーンの普及啓発・情報共有に加えて、業界に応じた実用的な利用方法なども発信。国内産業の国際競争力増進に貢献するとともに、ブロックチェーン技術の進化に付与」とあります。
この2つの団体は、今後ブロックチェーン技術の普及と、ブロックチェーンを使った新たなサービス提供や開発が今後の国内産業の世界における競争力の一つと考えており、目的はそれぞれ違いますが、JBAは政府、省庁関係に働きかけを行い、BCCCは一般、対外的に対応するという事を行動目標にしているようです。
ブロックチェーンによる社会変革の可能性
インターネットの爆発的普及により、私たちの生活は20年ほど前に比べて大きく変化しました。遠くが近くになった。ありとあらゆる世界が近くなったといっても過言ではありません。そして仕事の内容も大きく様変わりし、従来の作業がどんどん簡略化され効率よく作業が行えるようになりました。
インターネットやデータベースといったものは、我々の生活の様々なところで運用、利用されており、今その基本となっているものがブロックチェーン技術によって更なる進化を遂げようとしています。ブロックチェーン技術は幅広い分野に応用が期待されており、経済、産業の基本システムを根本的に変革していく事となるでしょう。
その一方で、日本はブロックチェーン技術の普及と活用は、先進各国に比べると遅れ気味感は否めません。発展途上国でもブロックチェーン技術の活用と取り組みは進んでおり、土地活用決済や国際送金、金融や保険が進みつつあります。経済のパワーバランスも、ブロックチェーンの使い方次第によっては変えてしまう可能性は十分にあります。今後どのような形でブロックチェーン技術が進んで行くかはわかりませんが、新たな企業やサービス、民間のみならず公的サービスの発展によって、我々の生活が変貌していくのは遠い将来の話ではないでしょう。