投資において、相場の分析方法は、大きく分けてファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の2つに分けられます。仮想通貨においても、相場を考える際には、この2つの方法を使っていきますが、仮想通貨の場合は、新興市場ゆえに、相場の特徴も、株や為替とは違った一面があります。ここでは、仮想通貨における相場の分析方法について解説していきます。
株やFXと仮想通貨の相場の違いとは?
仮想通貨は歴史が浅いため、相場を考える場合は、株やFXとの違いを認識しておく必要があります。細かくあげればいろいろありますが、まずは仮想通貨の相場で特徴的なものをいくつかご紹介します。
まず、仮想通貨の相場は365日24時間取引ができるという特徴があります。株の場合ですと取引所の稼働時間のみ、FXの場合は営業日のみの取引となります。つまり、常時、仮想通貨の取引が可能ということになりますから、相場の変動も365日24時間いつでも起こる可能性があります。次にあげられるのが、ボラティリティ(価格変動率)の高さです。仮想通貨の場合、短時間で相場が大きく動くことも多く、1日で20パーセント程度の上昇・下落は普通にあります。そのため、大きな利益を出すことも可能ですし、逆に大負けして損失を出してしまう危険性も高いです。現在の仮想通貨投資の人気は、このボラティリティの高さが大きな魅力となっているのは間違いありません。また、投資の参入障壁が低いのも仮想通貨の特徴です。2017年の11月あたりから、テレビCMなどの影響もあって、新規参入者が一気に増えました。海外の取引所の場合ですと、メールアドレスだけで登録可能なところもあります。これらの手軽さから、投資経験のない人も仮想通貨市場に参加しており、この新規参入者による相場への影響は大きなものがあります。
株やFXに比べると市場規模がまだ小さいため、新規参入者が増えたり、機関投資家が大口の買いや売りを入れると、一気に相場に影響が出ます。これは、それぞれのコインが本来持っている価値とはまったく関係なく動くことが多いため、相場をあらかじめ予想することは難しいと言えます。
仮想通貨におけるファンダメンタルズ分析について
ファンダメンタルズ分析は、株投資などでも使われていて、財務諸表や成長率などから相場を考える方法です。仮想通貨の場合は、実際に通貨として流通しているとは言い難い状況ですから、個々の通貨に対する適正な評価は難しいのですが、開発状況や各国の規制、法的整備などの要因によって相場が動くことが多いです。中でも相場に一番大きな影響を与える要因は、各国の規制によるものです。2017年9月には中国がICOを全面禁止にするなどの大型規制によって市場が弱気になり、仮想通貨全体の価格が一気に下落しました。その後のG20の際にも不安感から相場が一時下落しましたが、結局マイナス要素になるような発言がなかったため、すぐに価格は元に戻りました。このように国の規制による相場への影響は甚大なものとなりますので、今後も注視していく必要があります。
仮想通貨特有の要素として、ハードフォークによる相場への影響があります。通常は、ハードフォーク実現までは価格が上昇し、その後いったん下げて、分裂後は、それぞれの通貨同士が類似した値動きをするパターンが多くなります。ビットコインとビットコインキャッシュのハードフォークの時にも、相場に大きな影響がありましたが、その後、他の通貨でもハードフォークが頻繁に行われたためか、今ではハードフォークによる相場への影響は小さいものとなっています。
また、コインチェックのXEM流出事件のようなハッキングが相場に与える影響も大きいと言えます。仮想通貨の相場は、集団心理的な要因がとても強く働くという特徴があります。市場全体から考えれば、コインチェックのXEM流出による損失額はそれほど大きくはなかったはずですが、仮想通貨自体がこの先どうなるかわからないという不安感から、相場が下落したと考えられます。
仮想通貨の相場分析では効果的な手法であるテクニカル分析
仮想通貨の場合は、ファンダメンタルズ的な要因と相場が一致しないことが多いため、必然的にテクニカルを使った手法を利用することが多くなります。テクニカル分析は、その方法を覚えてしまえば、初心者でも利益を上げることが可能な方法です。ただし、多くの指標を駆使しますので、それをマスターするにはそれなりの時間がかかります。一般的にテクニカル分析は短期投資の際に使われることが多い方法で、トレンド分析とオシレーター分析の2つに分けることができます。
トレンドの流れを読む際に、よく使われるのが移動平均線です。移動平均線は、過去のある一定機関のコイン価格の終値の平均値を計算して、グラフにしたものです。ローソク足が、その時の価格の勢いを表しているのに対して、移動平均線は仮想通貨市場のトレンドを把握するのに適したチャートになります。仮想通貨においても、FXのようにトレンドが存在します。短期的な上昇・下降とは別に大きな流れがありますので、トレンド分析によって、この流れを意識すれば仮に注文とは逆の動きになったとしてもトレンドを信じて待つといったことが可能となります。オシレーター分析のオシレーターとは「振り子」の意味で、この指標の動きが振り子のように、ある一定の範囲を行ったり来たりすることから、こう呼ばれています。基本的には「買われすぎ」「売られすぎ」を判断する指標で、もみ合い相場の時に威力を発揮する分析方法です。
ローソク足は短期・長期のどちらでも使うことが可能な分析方法
ローソク足はテクニカル分析のひとつで、江戸時代からあった日本発祥の伝統的なチャートです。現在では海外でも使われており、多くの取引所のチャートとして採用されています。ビジュアルで直感的に理解できるところが海外でも広く支持されている理由と言えます。ローソク足の見方をマスターすれば、ある一定期間の始値、終値、高値、安値の4つの価格情報がひと目で分かるようになります。ローソク足は、分析の期間を1日単位や週単位、月単位などに設定することができますので、短期取引、長期取引のどちらでも使うことが可能です。ローソク足を理解しておけば、ファンダメンタルの知識がなくても相場の状態をある程度推測することができます。
しかし、仮想通貨の相場の場合は、株式市場とは異なり、値動きが非常に激しいという特徴がありますので、株価と同じような見極め方はできません。また、相場が動く時は一気に動くため、上昇・下降のサインは参考程度にしておくほうが間違いありません。他のトレードのサインを補強するようなものとして使うという位置づけで考えておいたほうがいいでしょう。
短期投資と長期投資によって相場の分析手法が変わってくる
短期投資でも、さらに時間軸によって「スキャルピング」「デイトレード」「スイングトレード」といった3つのトレード方法に分けることができますし、中長期投資においては、数か月から数年単位と期間の幅が広がります。当然、どの時間単位で投資を考えるのかによって、相場を考える方法は変わってきます。短期投資であればテクニカル分析を使うことになりますし、中長期投資においてはファンダメンタルズ分析が重要となってきます。
今後の仮想通貨の相場において、より重要になってくるのはファンダメンタルズ分析です。まだまだ、未成熟な市場において、今後も様々な規制や法整備がされていくでしょう。たとえば、仮想通貨の証券化の話題がありますが、証券にすること自体は投資家にとっては悪いことではないのですが、仮想通貨の相場に影響を与えることは必至です。
仮想通貨の投資に限りませんが、どのような情報を入手するかによって投資の明暗が分かれることがあります。Slackなどのツールを使って最新情報を得ることも、仮想通貨の相場の分析には必要となってくるでしょう。