ビットコインの価値の根拠はどこにあるのか?:暴落の底を抜けて仮想通貨の相場上昇が続く
1月末の「コインチェック事件」を受け、2~3月まで下落を続けてきたビットコインをはじめとする市場価格が、4月から強い盛り返しの動きを見せています。5月に入ってからビットコイン(BTC)やアルトコインの上昇トレンドは続いていましたが、米国・中国などの仮想通貨規制強化(不正なICO摘発運動)を受けて5月23日頃から再び下落を始めました。70万円を底として110万円近くまで反発しているBTC価格回復の理由としては、「仮想通貨関連の悪材料の出尽くし+米国の確定申告期間の終了(税の還付金のBTC投資への流入)+マネックスグループによるコインチェック買収(種類が豊富なアルトコイン売買の復活予定)+ヤフーやSBIVCなど大手企業の仮想通貨交換事業への参入+イスラム圏の仮想通貨容認の可能性」などを考えることができます。
ビットコインやアルトコインの価値の再上昇の背景には、金融庁認可の条件を満たせない取引所の淘汰が進み、「取引所の信用」が回復されつつあることも関係しています。一方で、ビットコインの本質的な価値の根拠はどこにあるのか、国・中央銀行が発行しない通貨は無価値なのではないかという「仮想通貨価値の懐疑論」が今でもあるのは事実です。ビットコインの価値の大きな根拠の一つは、「大勢の人が欲しがっているという市場価値=需要」であり、ビットコインの「未来社会における仮想通貨流通の拡大予測(決済・交換の手段としての利便性向上の予測)」にあります。そのビットコインの需要やポジティブな予測を支えているのが、「ブロックチェーン技術とマイニングによる正しい取引履歴情報の完全な保存と共有」なのです。
ウォーレン・バフェットはじめ「ビットコイン(仮想通貨)には内在価値がない」という声もある:仮想通貨無価値論の根拠と反論
世界的に著名な投資家で米国第3位の大富豪(投資会社バークシャー・ハサウェイの経営者)でもあるウォーレン・バフェット氏も、仮想通貨に価値はないと主張している人物の一人です。バフェット氏が約800~900億ドルもの巨万の個人資産を築いた長期投資手法は、コカ・コーラ株の長期投資で大成功を収めた事例で有名な「バリュー投資(割安株投資)」と呼ばれるものです。バフェット氏が投資戦略として好むバリュー投資では、「企業の収益力・財務状態・将来性」に対して、株式市場が割安なままで放置している銘柄(=割安株)を見つけて長期的に投資していきます。
バリュー投資では、その銘柄の企業がどれだけの価値(利益)を生み出せるのかという「企業価値」が最大の目安になるのですが、事業をする企業ではないビットコイン(仮想通貨)は「将来の期待収益=内在価値」がゼロであるために、バフェット氏は投資価値がないとしているのです。バフェット氏は「仮想通貨投資は投資ではない(ゲーム・ギャンブルのようなもの)」として批判しており、その根拠として「仮想通貨自体は何も生産しないので価値は増えない=仮想通貨には内在価値がない」を上げています。仮想通貨無価値論に対する反論は、「キャッシュレス化社会における仮想通貨自体の需要増加+ビットコインの上限発行枚数=希少価値を生む有限性+未来の仮想通貨と法定通貨の競合性」などを上げることができるでしょう。
今後のビットコイン(仮想通貨)は「通貨」と「金のような資産」としての価値上昇が期待される:マネックスグループの松本大氏の仮想通貨の未来予測
仮想通貨無価値論がある一方で、今後のビットコインが「通貨(お金)」あるいは「資産(ゴールドのような希少性のある資産)」として価値を高めていくという主張も増えてきています。世界最大のユダヤ系証券会社であるゴールドマンサックスは、昨年までビットコインの価値に懐疑的な姿勢でしたが、ビットコインなど「仮想通貨は詐欺ではなく今後利用が拡大するとの見方」を示し、ビットコインなどの取引の仲介ビジネスに積極的になっています。
経営再建中のコインチェックを買収したマネックスグループの松本大CEOは、仮想通貨は「1980年代の規制当局が嫌ったデリバティブ(金融派生商品)に似ている」と指摘しており、当局の適切な法整備・税制改革が進むほど、「仮想通貨投資+仮想通貨の資産クラスター化」が活発になる可能性があるとしています。松本CEOは「金(ゴールド)のような資産」として、金融資産のポートフォリオの一部を担ってビットコインなどの価値を保存できるようになる未来も想定しています。
ビットコインと金(ゴールド)には、「偽造困難+希少性+期待収益がない」などの共通点があり、いずれも「価値保存手段としての資産」として利用できる特徴を持っています。金(ゴールド)は現在までに約17万トンが採掘されて時価総額は約800兆円、ビットコインは約20~30兆円ですから、ビットコインの時価総額が金を超えることは簡単ではありませんが、ビットコインが「金(ゴールド)に似た特徴を持つ資産」としての需要増に期待が集まります。
仮想通貨と法定通貨(フィアット)の偽造防止と価値の裏づけの比較:ビットコイン発行にはマイニングコストが必要
ビットコインに価値がないという「仮想通貨無価値論」を信じる人の多くは、日本円や米ドルといった「法定通貨(フィアット)」の価値の高さが、今後も変わらずに続くと信じています。お金の一般的な価値を担保している前提条件は、「それがマネー(お金)であると大勢の人が信じていること」であり、お金としての本物性や希少価値を維持するためには「お金の所有者が分かること+お金を偽造できないこと+お金の二重支払いを防ぐこと+お金を誰でも簡単には発行できないこと」などの条件も必要になってきます。
マネー(お金)を発行することができれば、発行コストを大きく上回る「シニョレッジ(通貨発行益)」を得ることができるので、マネーには常に「偽造リスク」がつきまといます。現代の法定通貨(フィアット)は「高度な印刷技術=特殊なインクや紙や透かし(ホログラム)」によって偽造を防止していますが、ビットコインは「ブロックチェーン技術+マイニング(採掘)の仕組み+暗号化技術」によってビットコインの偽造を防いでいます。
ビットコインであれば発行上限枚数(約2,100万枚)が決まっていて、専用の高性能PC(ASIC)によるハッシュパワーと電力が必要な「マイニング(採掘)」によってビットコインが新規発行されるので、誰でも簡単に低コストでビットコインを発行できるわけではないという「価値の裏づけ」もあるのです。マイナーはビットコインの新規発行分を受け取る利己的な動機づけで、ハッシュパワーを提供してビットコインのマイニングを行いますが、それが結果的にビットコインの公共性とブロックチェーン(取引履歴データ)の正当性を保証する仕組みになっているのです。
ビットコインは“マネー(お金)”になる潜在的な可能性を秘め続ける:「身近・簡単・安全な決済手段」としての流通を目指す仮想通貨
ビットコインやアルトコインは、「金(ゴールド)のような希少価値のある資産」として価値を保存する資産クラスターになることが期待されています。それだけではなく、「通貨=マネー(お金)」として決済・交換にも活発に使われるようになれば、ビットコイン(仮想通貨)の価値はより大きくなっていくと予測されます。ヤフーやLINE、メルカリ、DMMなどのECコマース(物販)・中古品売買・動画レンタルを手掛ける大手IT企業が「仮想通貨事業」に新規参入してきたことも、「決済手段としてのビットコイン(仮想通貨)の利用機会」を増大させる可能性があります。
ヤフーやLINEの通販、メルカリの中古品売買、DMM.comの動画レンタルの決済手段として、ビットコイン(仮想通貨)を使用できるようになればそのインパクトは非常に大きくなります。さらに、Amazonや楽天のECサイトでもビットコイン(仮想通貨)での決済ができるようになれば、社会全体の仮想通貨流通を後押しするインパクト(仮想通貨がクレジットカードに次ぐECサイトでの支払い手段になる可能性上昇)は計り知れないでしょう。確かにビットコインやアルトコインがクレジットカード並みの簡単かつ安全な決済手段になるためには、まだまだ解決すべき技術的課題(時間あたりの取引処理件数)やセキュリティー問題、簡単に決済できるアプリ開発が多く残されています。
しかし、「ビットコイン(仮想通貨)も普通に使えるマネー(お金)である」とより多くの人が信じてくれるようになればなるほど、仮想通貨のリアルマネー(本物のお金)としての需要は高まり、その流通量も多くなっていくという自己循環性があります。仮想通貨と法定通貨の流通量のバランスや価値の認識が変わっていく未来の世界も有り得ないわけではなく、ビットコインやアルトコインが「今よりも身近で安全な決済手段(特にネット上の買い物・送金に使える手段)になる潜在的可能性」を信じる人ほど仮想通貨に対する需要は強くなっていくでしょう。