仮想通貨のICO(イニシャル・コイン・オファリング)は、クラウドセールやプレセール、などとも呼ばれており、非常に注目を集めています。なぜならば、ICOに参加して手に入れた通貨が、上場と同時に数倍、数十倍の値をつけることが多く、「ICOは儲かる」というイメージが定着しているからです。しかし、このICOの仕組みを利用した詐欺も横行しており、リスクも非常に高くなっています。ICOに参加する場合は、しっかりとICOの仕組みを理解し、正しい情報を収集し、納得した上で参加することが大切です。

仮想通貨のICOは次世代の資金調達方法

【仮想通貨のICO入門】株式のIPOとの違いやICOへの参加方法 仮想通貨のICOとは、通貨の開発者側が、未上場の通貨を事前に売り出し、資金調達を行う仕組みをいいます。証券会社などを通さずに、開発者が直接、しかも簡単に資金調達を行えることから、ICOの仕組みは次世代の資金調達方法ともいわれています。ビットコイン以外の通貨は、このICOという仕組みで生まれています。今も、毎日新しい通貨が生まれており、それらのICO後、決められた日にいずれかの取引所へ上場する、という流れとなっています。

投資では、人よりも先に有望なものを発見し、先行投資を行うと、大きな利益を得ることができます。ICOの仕組みで通貨を手に入れるということは、その通貨が生まれた、最初の段階で買うことができるということです。将来そのコインが評価されれば、大きな利益を手にいれることができます。2017年も様々なICOが行われ、価格が高騰したものがたくさんありました。

SBIやみずほ銀行が出資していることで話題になった「OmiseGo」は、当初22円ほどの価格でしたが、2018年6月時点では約1300円となっています。また、中国系コインの一つでもある「Qtum(クアントム)」は、当初約37円ほどだったものが、約1500円になっています。日本で知名度が高い通貨であるリップルは、最高で400円の値を付けましたが、最初は1リップル=0.61円ほどの価格しかありませんでした。

このように、ICOは、上場後、どんどん価格を上げ、数十倍以上の値がついているものも珍しくありません。このように、ICOに参加して大きな利益を得る人が増えたことから、夢がある投資方法として、ICOの仕組みが注目されているのです。もちろん、どのICOでも高騰するというわけではありませんが、高い確率で、上場前の価格より、高い価格で取引されています。

仮想通貨のICOと株式のIPO(新規公開)との違い

仮想通貨のICOは、「上場前の仮想通貨を手に入れることができる」という点で、株式の新規上場と似ています。しかし、その仕組みには大きな違いがあります。株式の新規公開の場合は、発行者ではなく、主幹事証券と言われる証券会社が「この企業は上場できる」と判断した場合に、上場手続きを開始する仕組みです。しかし、ICOの場合、発行者(開発者)が誰の許可を得ることもなく、自由に資金調達を行うことができる仕組みです。

株式の新規公開の場合は、証券会社が財務諸表や経営状態などを厳しく調査し、上場できると判断された場合のみ、新規公開を行います。経営者側が「上場したい」と思っていても、証券会社の審査をクリアできなければ、株式を上場することはできないのです。また、発行株数や、1株あたりの価格など、証券会社がすべてリードして行うので、発行者側が何でも自由に決められるというわけではありません。

これに対して、ICOでは証券会社が介在しないので、自由にICOを行い、好きなだけ資金を調達することができます。ICOの仕組みの魅力的な点は、これから有望な新規プロジェクトを行おうとしている人達が、簡単に資金を調達できるという点です。ビジネスを始めるときには初期投資が必要ですが、ベンチャーなど、「これからビジネスをスタートする」という企業や開発者は、潤沢な資金がないことがほとんどです。銀行もなかなかお金を貸してくれませんし、起業家は、エンジェル投資家など、お金を貸してくれるところをまわり、どうにかお金をかき集めるという場合が多くあります。

しかし、ICOの仕組みを使えば、将来のビジョンや計画、将来性を認めてくれた投資家から直接資金を集めることができるわけです。株式の新規公開では、実績があり、ある程度成長した企業しか行うことができませんが、ICOでは「これからプロジェクトを始める」という段階の人でも、簡単に資金を調達することができます。このICOの仕組みが広まれば、社会のビジネスや開発のあり方が、大きく変わる可能性を秘めています。

仮想通貨のICOに参加する上での注意点

株式のIPOとの違いやICOへの参加方法仮想通貨のICOの仕組みは、大きな利益を生む可能性がある一方で、上場した通貨が暴落する危険性もあり、リスクもあります。上場後、大きく値上がりしそうなICOを見つけるには、情報収集をしっかりと行い、将来性がある通貨かどうかを判断する必要があります。

ICOが有望かどうかを判断するためには、開発者が発行しているホワイトペーパー(論文)をしっかりと読むことが重要です。ホワイトペーパーには、今後の事業計画や開発計画、ICOに参加するための方法などが書いてあります。これらをしっかりと読み、将来性があるか、これから社会の役に立ちそうな通貨であるか等を判断することが大切です。

ただし、これらのホワイトペーパーは、ほとんどが英語で書かれています。また、中国政府がブロックチェーン技術を高く評価し、中華コインと呼ばれる、中国系の通貨が増えてきていることから、中国語のものも増えてきています。そのまま読める人は少ないと思いますので、日本語で書かれていない場合は、Google翻訳などを活用して、しっかりと内容を読み解くようにしましょう。

危険な仮想通貨のICOの見分け方

ホワイトペーパーを読み、通貨の将来性を判断することは必須ですが、「将来性がある仮想通貨」なのか、「ただ資金を集めたいだけの詐欺まがいの仮想通貨」なのかを判断することは非常に難しいのが実情です。よって、ICOに参加するときには、大きな利益が期待できる反面、価格が数分の一になってしまうかもしれないという、大きなリスクを含んでいることも忘れてはなりません。

詐欺まがいのコインは「SCAMCOIN(スキャムコイン)」と呼ばれており、ICOの中には、そのようなリスクが高いものも含まれています。その通貨の将来性や、今後値上がりするかどうかを100%見通すことは難しいのですが、ICOの気を付けるべき点を頭に入れておくことで、リスクが高いかどうかを判断することができます。

まず、将来かならず値上がりすると言っていたり、紹介制や販売代理店を通じて通貨を販売しているところは、リスクが高いと言えます。ICOは、誰でも参加できることが基本となっており、紹介でしか買えない、ある販売店でしか買えない、ということは、通常とは違うやり方ですので、警戒した方が良いでしょう。

また、国内でしか販売されていないものも注意が必要です。仮想通貨は世界中で売買されており、価格が上がっている通貨は、世界中の人達が「将来性が高く、投資したい」と思っているものばかりです。つまり、日本だけではなく、世界中の人々から評価され、将来性を認めてもらえないと、価格が上がっていくことは難しいということなのです。日本だけで販売されているものは、日本人の中で売買され、世界の人から見ると、名前も知らない通貨ということになりますので、上場後は買いたい人よりも売りたい人の方が多くなり、価格が下がるリスクが高くなります。

ICOを規制している国、認めている国の両方がある

ICOの仕組みは、画期的な資金調達方法であり、今後も多くのICOが行われると予想されています。しかし、「上場したものの、通貨の開発が進んでいない」として価格が下がっていったり、「開発陣が、調達した資金を持ち逃げした」などという悪いニュースが出て、暴落してしまったものもあります。

このように、詐欺コインと呼ばれる通貨も多く、投資家が被害にあう例が多かったことから、ICOを厳しく監視し、ICOを規制をする国も出てきています。アメリカでは、いくつかのICOが強制的に終了させられた例もありますし、フランスでは、金融規制当局がICO規制法案を準備しているとの報道もあります。

しかし、長い目で見れば、このようなICO規制は、市場にとってはプラスであると考えられています。詐欺コインが横行すると、被害者も増え、仮想通貨自体のイメージも悪くなってしまいます。しっかりとしたICO規制がなされ、きちんと内容がある通貨だけがICOを行えるようになれば、ICO規制がプラスに働き、市場の成長をより後押ししてくれると考えられています。

このように、ICOの仕組みは、大きな利益が期待できる反面、リスクも高いので、しっかりと情報収集を行い、将来性が高いものを見極めたうえでICOに参加することが大切です。また、将来性が高いと判断しても、様々な要因から暴落する場合もありますので、ICOには大きなリスクが伴うということを忘れないようにしましょう。既に上場している通貨の購入に比べ、ハードルが高いと思われるICOですが、まだ大衆が知らない通貨を最初に買えるという楽しみもあります。自分が許容できるリスクをしっかりと判断したうえで、お気に入りの通貨を見つけてみましょう。