リップル(Ripple)はPoWチェーンを利用した仮想通貨ではない:ビットコイン(BTC)が示す仮想通貨の典型的特徴との違い
リップル社は子会社「XRP Ⅱ」を介して仮想通貨リップル(Ripple)を販売していますが、リップルはその独自の特徴や仕組みから「厳密な意味での仮想通貨ではない」と言われることがあります。仮想通貨取引所では、リップル(XRP)もビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、ビットコインキャッシュ(BCH)などと一緒に売買されているので、リップルも仮想通貨(アルトコイン)の一種と見なされています。しかし、リップル(XRP)はビットコインやイーサリアムが採用している「PoWのブロックチェーン」を採用せずに、独自の「XRP Ledgerのレジャー」という分散台帳に取引データを記載しています。
不特定多数のマイナーがブロックの内容を、ハッシュパワー(マシン性能+電力)を使った複雑な計算作業で検証していく「マイニング(採掘)」の仕組みもリップルにはないのです。仮想通貨市場で、基軸通貨的な役割を果たしているビットコイン(BTC)の特徴として上げられるのは「ブロックチェーン+PoW(Proof of Work)・中央管理者の不在・非中央集権的なシステム+自律分散的な運用」です。リップル(XRP)はこれらのビットコインが示す仮想通貨の特徴を部分的には満たしていますが、「PoWのブロックチェーンの不採用・中央集権的なシステム(バリデーターの特権的な承認権限+リップル社のXRP大量保有)・新規発行なし」といった独自の仕組みを持っています。リップル社も自社のリップル(XRP)を「仮想通貨」とは定義せず、「デジタル資産(digital asset)」と呼ぶことが多くなっています。
“コンセンサスアルゴリズム”から見たリップル(Ripple)とビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)の違い:PoWとXRP Consensus
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などで採用されているブロックチェーンとは、送金のトランザクション(取引結果のデータ)をブロックに記入して、そのブロックの数字の正しさを検証しながら次々にブロックを鎖のようにつなげていく仕組みで、原理的に数字の改ざんがほぼ不可能になっています。ブロックチェーンでブロックに記入されたトランザクションの正しさを検証(承認)する仕組みをコンセンサスアルゴリズムといいますが、BTCとETHではコンピューターのハッシュパワーを活用して複雑な計算を行う「PoW(Proof of Work:仕事の証明)」が採用されています。ETHは将来的には承認コストが大きいPoWから、通貨保有量に応じて承認権限を与える「PoS(Proof of Stake)」に移行することが予定されています。
仮想通貨リップルでは、コンセンサスアルゴリズムとして「RPCA(XRP Consensus,XRP LCP)」というPoC(Proof of Consensus)とも呼ばれる仕組みを採用しています。リップルのトランザクション(送金データ)は、PoWチェーンではなく「レジャー(XRP Ledger)」と呼ばれる各ノード間でデータを共有している分散台帳に記入されていきます。レジャーには「RTXP(リップル送金プロトコル)の全口座残高」が記録されており、数秒に1度更新されて最新のレジャーの状態である「LCL(Last Closed Ledger)」が生成されています。LCLにデータを反映させるための承認アルゴリズムが「XRP Consensus」ですが、仮想通貨リップルではビットコインのように誰でも承認作業(=マイニング)ができるわけではなく、リップル社が認定した「Validator(バリデーター・承認者)」だけしか承認作業を行えないのです。ValidatorはUNL(Unique Node List)に記載されていますが、マイクロソフトやSBIなどの信用力のある企業・団体が選ばれています。
リップル(Ripple)の発行枚数は「1,000億XRP」で固定されている
リップル(Ripple)は「RPCA(XRP Consensus)」のコンセンサスアルゴリズムで、「特定のValidatorの同意率」に基づいてレジャー(分散台帳)の取引データの承認を行っています。そのため、リップルは「ビットコインのPoW・マイニング(採掘)の仕組み」にある「送金処理能力の限界(送金速度が遅くなるリスク+送金手数料が上昇するリスク+ネットワークの不安定化)の問題」を上手く解決することができているのです。
その代わり、リップル(Ripple)にはリップル社やValidatorという実質的な権限者(中央管理者)が存在することになり、ビットコインが理想とする「非中央集権的かつ自律分散的なシステム」からはやや離れた中央集権の要素も持つ仮想通貨(デジタル資産)になっています。リップルには、大量の電力を消費してマイナーへの報酬も支払わなければならない「マイニング(採掘)」の新規発行の仕組みがないので、リップルはビットコインよりも「送金処理が速い・送金手数料が安い・ネットワークが安定」というメリットがあるのです。
ビットコインはマイニングによる発行上限枚数を「約2,100万BTC」に設定することで、BTCのインフレ(価値低下)を抑制しようとしています。リップル(XRP)も発行枚数は「1,000億XRP」とあらかじめプログラムによって決定されており、XRPにはマイニングによる新規発行もないのでこれ以上の追加発行は今後もないのです。また、XRPの送金手数料がこの1,000億XRPから少しずつ引かれて消滅していく仕組みになっているので、XRPは年月が経てば経つほど1,000億XRPよりも発行数が少なくなっていきます。リップルの最小単位は「0.000001XRP(小数点以下6桁)」とされており、0.000001XRPのことを「1 drop(1XRP=100万drops)」と表現しています。
リップル(Ripple)は決済・送金に最も適した「デジタル資産」である
リップル(Ripple)というシステムやデジタル資産(仮想通貨のXRP)は、「決済・送金」に特化されて開発された経緯があり、現時点では性能面で最も優れた仮想通貨と言われています。リップルの送金システムであるRTXPは、多くの金融機関や企業に採用されている実績があり、「国際送金手段としての性能」が非常に高く評価されています。リップル社がデジタル資産と呼ぶ仮想通貨リップル(XRP)も、「送金速度の速さ・手数料の安さ・送金処理能力・ネットワークの安定性」において、ビットコインをはじめとする他の仮想通貨よりもかなり優れています。
仮想通貨リップル(XRP)の性能は、「送金速度は約3秒・送金手数料は最小0.00001XRP=10drops・処理能力は1500件/秒」となっています。毎秒の処理能力こそ、VISAやマスターカードの送金処理能力「5000件/秒」と比べるとやや低いですが、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)は「10~20件/秒」の処理能力しかないのです。送金速度もBTCは早くても数時間以上はかかることが多く、ETHも数分間以上はかかりますから、XRPの約3秒の送金速度は驚異的です。送金手数料も法定通貨建に連動していて低く抑える仕組みが採用されており、通常1円以下の手数料で送金が可能になっています。
リップル(Ripple)のロックアップ・ブリッジ通貨とリップルの将来性
リップル(Ripple)の仮想通貨としての特徴に「ブリッジ通貨」がありますが、ブリッジ通貨とは法定通貨をはじめとする「価値のある複数のものを接続(架橋)する機能を持つ通貨」のことです。リップル社の企業理念・目標は「価値のインターネット(IoV)」の実現であり、XRP発行はお金(価値あるもの)を手軽・迅速かつ低コストで移動させるための手段に過ぎません。全ての価値あるものを、ブリッジ通貨のXRPを媒介として交換できるようにするため、リップル社はXRPの流動性を必死に高めようとしているのです。
リップル(Ripple)の発行枚数は1,000億XRPと決められていて、手数料が引かれることで少しずつ総量は減少していきます。1,000億XRPのうち、約500億XRPが「ロックアップ」という市場に流入させない「インフレ(価値下落)を防ぐ凍結措置」が取られています。1,000億XRPは現時点の市場ニーズに対してあまりにも多すぎるので、ロックアップという市場で売却をしない凍結措置が取られているのですが、リップル社や創業者があまりに多くのXRP(供給量の約80%)を保有し過ぎていることを「将来のインフレ(大量売却)リスク」と見る向きは強いのです。リップル社が本気でやろうと思えば、ロックアップを解除することで「価格操作・中央集権的な影響力」を行使することが可能であり、「ロックアップ解除による大量売却」を絶対にさせないようにする強制力を誰も持っていないからです。リップルは、「リップル社の中央集権的な影響力保持・XRP大量保有」をどう見るかによって、「リップルのシステムとデジタル資産としての将来価値の予測」が変わってくるのです。
システムとしてのリップル(Ripple)は拡張性があるだけではなく、国際送金手段で使いたいという「金融機関(銀行)の需要」が多くあります。仮想通貨(デジタル資産)としてのリップル(Ripple)は、仮想通貨ビットコインや仮想通貨イーサリアムと比較しても「送金速度・手数料・処理能力の性能面」で圧倒的優位にあり、仮想通貨リップルの将来性は非常に高いのです。一方で、中央集権的システムの要素を持つ仮想通貨リップル(XRP)は、リップル社の開発能力・財務基盤に大きく依存しているという潜在的リスクはあります。リップル社の不正・経営破綻などの「サードパーティーリスク」によってXRPが暴落したりネットワークが混乱したりする恐れがあるということですが、現時点のリップル社は莫大な仮想通貨XRP資産を持っておりシステムの分散性を高める努力もしているので、経営破綻・送金不能などの心配はしなくても大丈夫でしょう。