6月前半はビットコインはじめ仮想通貨全体が暴落:ビットコイン(BTC)が70万円を割り込む

6月10日頃から、1日に2万円以上も下がるビットコイン(BTC)の大幅な価格下落が始まり、ビットコイン以外のアルトコインも連動して大きく価格を落としています。6月14日現在、BTC価格は70万円を大きく割り込んで68万円を維持するのも難しい急落の局面を迎えています。BTCに続く時価総額第二位のイーサ(ETH)も、6月初旬には8万円近くまで価格を戻していましたが、現時点で5万円に近づく激しい下落に見舞われています。

6月に入ってから、BTCのATH(過去最高値)の更新が半年近くも途絶えているというネガティブなニュースが多く流れていたのですが、現在はATH更新がどうこうと言えるような反発を期待できる値動きではありません。6月に入ってから10~15%超の価格下落に襲われた仮想通貨市場ですが、特に日本人投資家が眠っていてトレードしづらい「深夜・早朝の時間帯」に価格下落が進む状況が続いています。BTC・ETH・XRP(リップル)などの価格がどこまで下落するのかの予測を巡って仮想通貨投資家の周辺は疑心暗鬼が募っていますが、2018年の「BTC最安値である65万円」のラインがサポートライン(支持線)として注目されています。

65万円のラインまで割り込んでしまうと、50万円以下までの急落も有り得る不安なテクニカル分析の値動きになっています。急落の最中にTwitterで大手取引所の「bitFlyer」に金融庁から業務停止命令が出るというフェイクニュース(デマ)が拡散されたことも、仮想通貨下落に拍車をかけました。仮想通貨関連のニュースは真偽を確かめるリテラシーが必要ですが、ビットコインなどの仮想通貨がここまで価格を落としている要因は何なのでしょうか。

韓国の取引所“Coinrail”のハッキング事件で約44億円相当の仮想通貨が盗まれる:取引所リスクの再燃

仮想通貨下落の中心的な要因としてあるのは、1月26日に「コインチェック事件」が発生して以降、ずっと続いているセキュリティー問題です。仮想通貨投資のネガティブなイメージを強めているセキュリティー問題は大きく、「取引所のセキュリティー問題」と「仮想通貨・ブロックチェーンそのもののセキュリティー問題」に分けられます。コインチェック事件で個人投資家の投資意欲を低下させたのは「取引所のセキュリティー問題」であり、仮想通貨業界では「カウンターパーティーリスク(取引所リスク)」として度々議論に上がっているものです。

6月10日に、韓国の取引所Coinrailがクラッカーに狙われて、約4,000万ドル(約44億円相当)のアルトコインが盗まれるという被害が起こりました。Coinrailは世界的に見れば小さな取引所であり、盗まれた仮想通貨もビットコインではなくマイナーなERC20型トークン(PundiXのNXPS、AstonXのATCなど)なのでそれほど大きな悪影響はないとする見方もあります。

しかし、取引所に預けている仮想通貨が盗まれる「取引所リスク」は、「仮想通貨投資の安全性・信頼性」を揺るがすセキュリティー問題であり、自己保有の仮想通貨資産が理不尽に消失するリスクなので軽視することはできないのです。仮想通貨はFX(外国為替証拠金取引)と比べても「顧客資産保護のための規制」が不十分であり、取引所(仮想通貨交換業者)は「分別管理」までは行っていても「信託保全(信託銀行に顧客資産を預ける保護策)」まではしていません。取引所がハッキングで大規模な被害を受けて破産したら、顧客にほとんど資産が戻ってこないリスクもあるため、取引所リスクの解消はとても重要なのです。

モナコインやVerge(XVG)に対する“51%攻撃”の影響:ビットコインも採用するPoWチェーンのセキュリティーに疑念が生まれた

仮想通貨価格を下落させる「仮想通貨・ブロックチェーンそのもののセキュリティー問題」として最近持ち上がってきたのは、コンセンサスアルゴリズムにPoW(プルーフ・オブ・ワーク)を採用しているブロックチェーンに対する「51%攻撃」です。「モナコイン・Verge(XVG)・ビットコインゴールド」が51%攻撃の被害に遭っています。51%攻撃とは特定のマイナーが、PoWのブロックチェーンの承認作業に必要なハッシュパワー(計算能力)の51%以上を独占することができれば、ブロックチェーンを不正に書き換えることができるというハッキング手法で、ビットコインの誕生当初から指摘されていた古くからある問題です。

ビットコインやイーサリアムも「PoWのブロックチェーン」を採用していますが、マイナー数が圧倒的に多くてマイニングに必要なハッシュパワーが膨大であるために、特定の個人・企業が「全体計算量の51%以上」を独占することは理論的には有り得ても現実には不可能に近くなっています。しかし、マイニングに必要なハッシュパワーが小さいモナコインは、「公開していない秘密のブロック」を隠し持って一気に公開するBlock Withholdig Attackで支払い履歴を誤魔化されてハッキングされてしまいました。Verge(XVG)に至っては2回も51%攻撃を受けて被害を出しており、トランザクション承認時間などのアルゴリズム自体に深刻なセキュリティーの脆弱性があるのではないかとの疑念を受けています。仮想通貨やブロックチェーン自体のセキュリティーが信用できないと思わせるハッキング被害が続いたことも、仮想通貨下落の一因でしょう。

国際的な仮想通貨規制強化の動きが強まる:フェアトレード・顧客資産保護・KYC(本人確認)の不十分さの指摘

仮想通貨の“セキュリティー・規制強化・取引量・クジラ”の懸念が価格上昇を阻む2019年6月に、EUのECON(欧州議会の経済通貨委員会)が中心となった国際的な「マネーロンダリング(資金洗浄)防止法」の発効が予定されていることがあり、世界各国の政府が取引所(仮想通貨交換業者)やウォレットの「KYC(本人確認)の徹底」に関心を寄せています。しかし、欧米の25の取引所を対象にした調査では、「約68%の取引所」が公的な身分証明書(肖像写真つき)を提示させない不十分なKYCしか行っていないことが判明しています。

米国のCFTC(商品先物取引委員会)が、ビットコイン先物における「不正な価格操作(見せ玉・馴合いの相対取引など市場相場操作)」を疑って、Bitstamp、Coinbase、Kraken、itBitに「詳細な取引データの提出」を求める捜査に乗り出したニュースも仮想通貨市場に冷水を浴びせました。CFTCの捜査は「ビットコインのフェアトレード(公正取引)」を懐疑するものですから、仮に不正な価格操作の事実などが露見すれば大暴落の引き金にもなりかねません。

次のG20が近づくにつれ、「国際的な取引所+仮想通貨の規制強化」が行われるのではないかとの見方が、一時的に価格を下げている可能性があります。政府間会合の金融活動作業部会(FATF・本部パリ)でも「ガイダンス(指針)」から「スタンダード(基準)」へ仮想通貨交換業者の規制レベルを上げることが検討されています。しかし、顧客資産保護(分別管理・信託財産の義務付け)や金融犯罪防止のKYC徹底、不正な価格操作の監視などは、「将来の仮想通貨市場の健全な成長・発展」のために、逆にやらなければならない規制強化の側面を持っています。

ビットコインの取引量減少とBTC寡占の“クジラ”の影響がBTC価格を下げる恐れ

米国のFOMC(連邦公開市場委員会)の利上げも、ビットコイン価格を下落させる要因の一つです。仮想通貨は一般に保有しても利息がつかないため、法定通貨の米ドルの利上げがあると、米ドルに投資資金が流れやすくなるのです。ビットコインの下落要因で心配なのは、個人投資家の数が年初よりだいぶ減って、「BTCの流動性(取引量)」が減少傾向にあるため、少数の「クジラ」と呼ばれるBTC大量保有者の価格決定に対する影響力が強くなっていることです。約1600人いるとされるクジラはBTC全体の約28%を独占して、上位3つのウォレットは「44万8218ビットコイン」も保有しているため、BTCを購入する個人投資家が減れば減るほど、「クジラの価格決定力(売り圧力)」が強くなってしまうのです。

BTCを寡占しているクジラが大量の売り注文を出すと、「流動性の低さ」によって大幅な価格下落が起こりやすくなっているのです。6月の大暴落で仮想通貨全体の時価総額は約6,000億ドルから約3,000億ドルを大きく割り込むまでに減少して、仮想通貨の下落率は50%を超えています。ビットコインをはじめとする仮想通貨の大幅下落に対して、世界最大の取引所BinanceのCEO・CZ氏のように「仮想通貨は毎年、暴騰→暴落のパターンを繰り返している(いずれ価格は戻る)」という楽観的な見方もある一方で、国際的な共通ルールとなる規制強化が一巡しない限り、BTCの本格的な上昇トレンドには転換しないという厳しい見方もあります。

ビットコインやアルトコインが上昇トレンドに転換するには、「国際的な仮想通貨の共通ルール設定+取引所のセキュリティー強化(国の認定基準の厳格化)+仮想通貨自体の技術革新(安全性・利便性・実用性のアップ)」が必要になります。しかし、「BTC相場は300回も死亡し、そして蘇ってきた」という格言が残されているように、今回の暴落だけでBTCの価値が決定的に損なわれたわけではなく、上に挙げた上昇トレンド転換の条件を満たせば、再びBTCは流動性と高い価値を取り戻せるでしょう。