米国のSECが仮想通貨のリップル(XRP)やイーサ(ETH)を未登録証券と見なす動きが強まっている

仮想通貨市場における時価総額のトップは、仮想通貨の基軸通貨として流通するビットコイン(BTC)であり、80万円台にまで価格が下落してもBTCは約14~15兆円の時価総額を維持しています。ビットコインに続く時価総額第二位の仮想通貨は、プラットフォームのイーサリアムで多種多様なアプリケーションの開発が精力的に行われているイーサ(ETH)です。イーサの時価総額は約6~7兆円で、今後もバージョンアップによる価値の上昇に期待が集まっています。

仮想通貨の時価総額第三位が、銀行が採用する国際送金手段(RTXPのRippleNet)やブリッジ通貨で注目を集めているリップル(XRP)です。リップルの時価総額は約3兆円で仮想通貨XRPの価値上昇だけではなく、速度・手数料・安定性に優れている国際送金手段の「RippleNet」がこれから更に普及していくと予想されています。アナリストや大口投資家によっては、ビットコイン以上の将来価値が期待されているリップルとイーサですが、マサチューセッツ工科大学(MIT)のブロックチェーン研究者・上席講師のゲーリー・ゲンスラー氏の指摘によって、リップルとイーサが証券(有価証券)と見なされてしまう恐れが出てきました。

ゲンスラー氏の前職は米商品先物取引委員会(CFTC)の委員長なのですが、「リップルとイーサが非準拠証券(未登録証券)であるという十分な揺るぎない根拠がある」という主張をして市場を動揺させました。リップルとイーサが仮想通貨(コモディティー商品)ではなく「非合法的な非準拠証券」であると見なされてしまうと、規制の甘い仮想通貨の取引所では売買できなくなる可能性があります。アセット型の仮想通貨の証券化は、リップルとイーサの価格が暴落する恐れがあるのです。しかし、SECの企業財務部門部長のウィリアム・ヒンマン氏が「イーサ(ETH)は証券には分類されない」という発言をしたことで、一時ETH価格が上昇しました。

証券取引法の規制対象となる「証券・有価証券」とは何なのか?:トークンと証券の違いについて

仮想通貨と呼ばれているICOによって発行されるトークン(代替貨幣・コイン)は、「商品(コモディティー)」なのか「証券(株式のような有価証券)」なのかは、2017年後半から盛んに議論されている問題です。当該仮想通貨を商品と見なすのか有価証券と見なすのかは、法規制・監督官庁とも関係してくる重要な問題ですが、2018年3月の段階では米国の連邦地裁が「ビットコインのような仮想通貨はコモディティー(商品)である」という判決を出しています。この判決だけを見ると、ビットコインが商品と見なされたのであれば、リップルやイーサも商品になるのではないかと思いがちなのですが、同じ仮想通貨(トークン)でも銘柄によって「運営方法・価値変動の性質+発行主体の有無(発行主体との利害関係の深さ)」に大きな違いがあるのです。

米国の証券取引法の規制対象となる「証券(日本では法律上は金融商品と呼ぶ)」とはそもそも何なのでしょうか。証券は大きく「有価証券」と「証拠証券」に分けられますが、仮想通貨の証券化で問題になるのは価格のついた有価証券になります。

株式・債券に代表される有価証券とは「財産法上の権利・義務に関する記載がされた価格のつく文書」のことで、有価証券を所有することで株主や国債所有者としての権利を得られます。「証券化」とは大きな財産を分割したり収益を受ける権利を小口にしたりして、複数人に所有させるもので、「売買の流動性」が高まる効果が期待できます。トークンと証券の違いは明確ではないですが、リップルのように発行主体の影響が強い中央集権的な運営の要素があるトークンほど、「発行主体のビジネスと連動した株式的な証券」と見なされやすくなるのです。

ビットコイン(BTC)よりもリップル(XRP)のほうが「未登録証券」と見なされる可能性が高いのはなぜか?

ビットコイン(BTC)に関しては、米連邦地裁が商品(コモディティー)と見なす判決を出したように、ビットコインを有価証券と見なして再規制すべきという意見はあまり見られません。それは、ビットコイン(BTC)が実質の発行主体が存在しない非中央集権的で自律分散的な「カレンシー型(通貨型)のトークン」であるのに対して、イーサやリップルは発行主体が存在する中央集権的な要素もある「アセット型(資産型)のトークン」であるからです。

ビットコインのようなカレンシー型のトークンは、「発行主体が存在しない(大量所有して利益を得ている発行主体がない)+マイニングによって新規発行(採掘)される+発行元のビジネスと通貨価値が連動していない+通貨供給量を勝手に変更できない(BTC発行上限は約2,100万枚)」などの特徴を持ち、株式のような有価証券的性格が弱められています。

それに対して、リップルやイーサのようなアセット型のトークンは、「リップル社やイーサリアム財団のような発行主体が存在する・発行元のビジネス(アプリ・技術)や信用力と通貨価値が連動している・通貨供給量を発行元が変更できる(株式分割のようなトークン増加ができる)」などの特徴を持っています。そのため、アセット型のトークンはカレンシー型のトークンよりも「株式のような有価証券的性格を持つ=証券取引所でしか売買できない強い規制の対象になる」と見なされやすいのです。特に仮想通貨XRPは、リップル社が全供給量の約80%を独占的に保有していることが証券化に当たるとして問題視されています。

リップル社とイーサリアム財団の「XRPとETHを証券と見なす訴訟・規制強化」に対する反論

xRapidの国際送金実験に成功したリップルに立ちはだかる未登録証券訴訟・SECの壁米証券取引委員会(SEC)ではジェイ・クレイトン委員長らが、兼ねてからICO(新規仮想通貨公開)で発行されているトークンはすべて、「商品」ではなく「証券(有価証券)」であるという主張をしています。SECもさすがに、トークンの価格上昇によって直接の利益を得る発行主体がない「非ICO・カレンシー型の仮想通貨」までは証券と見なさないと考えられます。「非ICO・カレンシー型の仮想通貨」には、ビットコイン(BTC)やライトコイン(LTC)、モネロ(XMR)などがあり、これらは原則としてコモディティー商品と見なされるでしょう。

もちろん、リップル社は仮想通貨リップル(XRP)は有価証券ではないとする反論を行っています。リップル社は「自社」と「仮想通貨XRP」は切り離された個別のものであるから、仮想通貨XRPは株式的な証券ではないと主張しているのです。つまり、「仮想通貨XRPはリップル社の株式ではない・仮想通貨XRPを保有してもリップル社の株主にはなれず配当金を受け取ることもできない・仮想通貨XRPの歴史はリップル社よりも古くリップル社が倒産しても仮想通貨XRPはなくならない」という論拠によって証券と見なされる事を回避しようとしています。イーサリアム財団も証券化を避けるため、「イーサリアム財団は仮想通貨ETHの供給や発行をコントロールしていない(財団は仮想通貨ETH発行主体ではない)・仮想通貨ETH保有量は発行数の1%以下で仮想通貨ETHから利益を得ていない」と抗弁しています。

英国企業が「xRapidの国際送金実験」に成功してRippleNetの実用化が進む:「XRP証券化(証券と見なす訴訟・規制)」に対抗するリップル社の動き

リップル社が未登録証券のリップル(XRP)を違法に販売したとして、カリフォルニア州で訴訟を起こされていますが、仮にSECが規制できる未登録証券として裁判所に認められてしまうと、仮想通貨XRPだけではなく「ICO・アセット型のトークン」のビジネスモデル自体が成り立ちにくくなる危険性が出てきます。仮想通貨XRPの証券化のリスクがある一方で、リップル社の国際送金技術そのものは金融機関の採用が進み、国際送金の実証実験でも成功の結果が出てきています。6月初頭には、イギリスの外貨交換・国際決済プロバイダーのCurrencies Direct社が、国際送金プロダクトの1つ「xRapid」のプラットフォームを利用した国際送金・決済の実証実験に成功したというグッドニュースが報じられました。

xRapidのプラットフォームを使った複数の金融機関の間での「XRPの国際送金実験」は、従来の銀行経由であれば「約4~5日間」の長い送金時間がかかっていましたが、xRapid使用の国際送金であればわずか「数秒」での高速送金(決済・着金)を確認することができました。仮想通貨XRPやRippleNetがフィンテックの金融サービスを効率的に向上させる可能性が見えたことで、仮想通貨XRP価格も上昇しやすくなっています。仮想通貨XRPが「仮想通貨の価値移転の機能(コスト・送金時間を削減する価値移転の機能)」を高めていること、日本で大手証券会社SBIが開設する取引所「SBIVC(VCTRADE)」で真っ先にリップル(XRP)を販売することもXRP価格上昇を煽りやすい要因になります。

リップル(XRP)に追い風となりそうなニュースも多く続いているだけに、「XRPが証券なのか商品なのかの訴訟・論争・規制の行方」がどうしても気になります。リップル社は「XRP証券化の訴訟・規制」に対抗するために、元SEC委員長であるメリー・J・ホワイトと元SEC執行局長であるアンドリュー・セレズニーを弁護人として起用しています。更に、リップル社と仮想通貨リップル(XRP)が混同されることを防ぐために、「XRPシンボルプロジェクト」を開催してリップル社と異なるXRP独自のロゴを作ろうとしているのです。