ビットコイン価格が130万円を超える急騰
1週間ほど前に100万円を突破したことで話題になっていたビットコインですが、11月29日に一時130万円を超える価格をつけて過去最高値を更新しました。2017年初頭のビットコイン価格は約10万円で、今年一年で「約13倍」にまで高騰したことになりますが、一体どうしてここまでビットコインの価格が上がり続けているのでしょうか。現時点でも、ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)に対しては、「ドル・円・ウォン」による強い買い(値上げ)の勢いがあります。どちらも多少の上げ下げはあるものの、基本的には右肩上がりのチャートを綺麗に描いています。
ビットコインのチャートは、テクニカル分析ではそう簡単に暴落しそうにはない理想的な形ですが、「SegWit2Xのハードフォーク(分裂)の延期」が11月9日に発表されたことで、逆に「ビットコインのブロックチェーンの正当性」が留保されて価値が高まったという理由もあります。SegWit2Xの実装で誕生するとされる新仮想通貨「B2X(仮称)」は、8月に分岐したビットコインキャッシュ(BCH)や10月に分岐したビットコインゴールド(BTG)よりも、ビットコイン本体の価値と正当性に与える影響が大きいと予測されています。それはBCHやBTGというのは、あくまでオリジナル・ビットコインのブロックチェーンから分岐して、別のアルトコインとして存在するだけなのですが、B2Xはオリジナル・ビットコインのブロックチェーンと置き換えられる可能性がゼロではないからです。
正当性争いでオリジナル・ビットコインのブロックチェーンが消滅しないとしても、マイナーがB2Xばかりをマイニング(採掘)して、オリジナル・ビットコインのマイナーが大幅に減少すれば、市場原理によってビットコイン(BTC)の価格が激しく落ち込むリスクが想定されます。SegWit2Xの延期が、その暴落リスクを暫時的かつ心理的にヘッジしたために、BTCの価格上昇に拍車を掛けたとも言えます。
2017年のビットコイン(BTC)の価格上昇のパフォーマンス
もし、あなたが2017年初頭に「100万円のビットコイン(BTC)」を購入して12月現在まで保有していたら、あなたの保有するビットコインは「1300万円以上の時価評価額」となり、投資資金は約13倍(含み益は1200万円以上)にまで急増していたことになります。これほどの含み益を、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)の投資で出すことはまず不可能ですし、それだけの利益を出すためには「安値で買って高値で売る」ための頻繁な売買を、的確なタイミングで行い続けなければならないでしょう。
しかしビットコイン投資の特殊性は、2017年の相場であれば「ビットコインを売らずにただ保有し続ける投資戦略」こそが正解だったことにあるのです。もしその時からビットコインを持っていたら大金持ちになっていたという「Ifの投資論議」は、楽しくて「夢」があるのですが、現実には2017年1月の段階でBTCの価格が「100万円」を大きく超えると予想できた人はまずいなかったでしょう。
ビットコインはじめ仮想通貨の将来価値の増加を信じる人たちは、「BTCの保有継続(いわゆるガチホ)」を決め込んでいるので、結果としてBTCの価値が10倍以上になった人もいるはずです。それでも日本の仮想通貨取引所で口座開設数が急増し始めたのは、今年後半からと言われるので、2017年1月以前の時点でBTCをすでに大量保有していた人がいたとしたら、仮想通貨の投資家としては目利きのアーリーアダプター(早期参加者)と言えるでしょう。
ビットコインの価格上昇要因1
ビットコイン考案者とされるサトシ・ナカモトは、通貨の価値下落である「インフレ」を嫌い、ビットコインの供給量が増えすぎないように入念な制度設計をしていました。中央集権的な法定通貨は、政府・中央銀行の景気対策である「量的金融緩和(供給量増大)・ゼロ金利政策」によって、インフレになり通貨価値が下落します。国家のインフレ目標の景気対策としては、企業が資金を借りて設備投資・雇用を増やしやすくなり、所得上昇で個人消費が増大する等のメリットもありますが、ビットコインは「発行上限枚数=約2100万枚」を事前にプログラムすることで、通貨価値が上がりやすいように設計されているのです。
ビットコインの新規発行は、「マイニング(採掘)」と呼ばれるブロックチェーンの追記作業の承認によって行われます。マイニングに成功したマイナーに現在は「1ブロックあたり12.5BTC」の報酬が支払われますが、このマイニング報酬は「約4年に1回の頻度(マイニングの半減期)」で半分に減らされる仕様になっています。2020年にはマイニング報酬は「6.25BTC」まで減り、2030年台にはビットコインの発行上限枚数2100万枚のうち約99%の採掘が終わります。つまり、年月が経てば経つほど「BTCの希少価値」が高まる制度設計になっているわけです。
価格上昇要因としては、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が「ビットコイン先物取引」を近く解禁すると発表した影響も大きいでしょう。BTCが先物取引できるようになれば、価格下落でもショート(空売り)で利益を出せるようになり、今以上にBTCのボラティリティーが大きくなる可能性があります。
CMEのビットコイン先物取引は「ハイリスク・ハイリターンの投資」になりますが、「暴騰と暴落の変動幅」が大きければ大きいほど、大儲けしたい投機家にとっては魅力的な取引になります。2017年前半まで、ビットコインの投資マネーのかなりの割合を中国の投機マネー(信用の弱い人民元をBTCに転換する動き)が占めていたのですが、自国通貨の価値下落を恐れた中国政府が9月頃から「仮想通貨規制」を強めたため、一時的にビットコインが暴落しました。中国政府はICO(新規仮想通貨公開)の禁止や取引所閉鎖の規制強化を行いましたが、中国が許認可制などで一部の取引所の運営再開を認めるのではないかという憶測情報も飛んでおり、「中国の仮想通貨規制緩和の可能性」もまたビットコイン価格上昇の一因となっています。
ビットコインの価格上昇要因2
ビットコイン含む仮想通貨に大量に流れ込むマネーの大半は、「投機マネー(価格上昇による利益が目的)」と「リスク回避マネー(自国通貨からの乗り換え)」です。ビットコインはじめ仮想通貨は「国家の経済財政・企業の事業や財務」と関係なく、欲しい人がいれば価格が上がるという「純粋な市場原理(需給原理)」だけで価格が決定されます。仮想通貨は法定通貨よりその価値が不安定であると同時に、「ボラティリティー(価格の変動幅)」が大きくなります。投機対象としては、安定して価格がほとんど変わらない通貨・商品より、「暴騰・暴落の双方の可能性」を含んだボラティリティーが大きな通貨・商品の方が好まれます。ビットコインは暴騰・暴落のボラティリティーの条件を十分に満たしています。
国家・中央銀行に発行量を左右されない仮想通貨は、「法定通貨の信用・需要の低下」によって、価値を高める特徴も持っています。9月頃に、世界のBTC相場に先駆け、アフリカのジンバブエでBTC価格が80万円台に高騰して騒がれましたが、これは政府の経済政策の失敗と独裁政治でハイパーインフレが起こり、自国通貨の信用が完全に失われた事が原因です。南米のベネズエラでも物資不足と通貨の供給過剰でハイパーインフレが起こり、ビットコイン需要が高まって価格が高騰しました。自国の通貨の信用力が落ちたキプロスやアルゼンチンでもビットコインが買われやすくなっています。
政府や法定通貨の信用が失われたりインフレ率が高くなったりすると、「政府・国家財政の影響を受けないグローバルな仮想通貨(ビットコイン)」が欲しいという人が必然に増えるのです。世界各地で「物価上昇のインフレ・社会保障費増大による財政破綻リスク・自国通貨の信用低下」を抱える国が増えていることも、法定通貨から仮想通貨に資産を移す人が増えている原因でしょう。
130万円以上に高騰した今でもビットコインは買いか?
一時120~130万円以上にまで高騰したビットコインを、今の時点から買っても大丈夫なのか(欲しいけれど暴落が怖くて買えない)という不安を持つ人は多いと思います。確かに、BTCの価格には市場原理以外の根拠がないので、欲しい人が大幅に減れば暴落リスクは常にありますが、ここまで説明した「価格上昇要因」に加え、「12月以降のハードフォーク予定の多さ」もBTCの高価格を支えています。
ビットコインのハードフォーク予定
○ビットコインプラチナム(496525ブロックで分岐)……12月12日頃
○スーパービットコイン(498888ブロック)……12月15日頃
○ビットコインウラン……12月31日頃
○ビットコインキャッシュプラス(501407ブロック)……1月2日頃
○ビットコインシルバー……分岐の予定日は未定
今年8月にハードフォークして無償配布されたビットコインキャッシュ(BCH)は、その後に非常に高い価格をつけましたから、その成功体験を忘れられない人たちが、12月以降のハードフォークでの配布を狙ってBTCを大量保有しようとしているのです。しかし日本の大手取引所は、ビットコインゴールド(BTG)さえ配布しておらず、11月末のビットコインダイヤモンド(BCD)を配布したのも海外取引所のBinanceだけですから、上記したビットコインからフォークするアルトコインも恐らく配布されないのではないかと見られています。
ハードフォークの回数や分岐したコイン数が多すぎると、希少価値が薄れて価格がつかなかったり、マイニングされなかったりする恐れも高いですが、1月初旬までは「ハードフォークの期待感」で100~120万円以上の現在のBTC価格は概ね維持されるでしょう。中長期的にも仮想通貨特有の買いの材料はあるので、今からビットコインを買っても(投資は自己責任で実際に儲かるか損するかは別ですが)、必ずしも遅すぎるというわけではありません。