最近ではSTOという言葉が少しずつ話題になってきており、一言で簡単に説明すると資金調達の方法の一つとなっています。仮想通貨を用いて資金の集め方として「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」があります。企業の仮想通貨の資金調達方法として投資家が参加しやすい代表的な方法の一つです。しかし、ICOでの資金調達を行う企業の8割は詐欺の疑いがあり、安全性が保証されません。ですので、安全だと考えられているSTOについてとICOとSTOとの違いについて解説していきたいと思います。
STO(セキュリティ・トークン・オファリング)の概要
STOはセキュリティ・トークン・オファリングの略で、投資的な側面を持つトークンを各規制機関のルールにしたがって投資的なトークンとして発行することをいいます。つまり、規制に則って通貨を発行することです。株式のように金融商品には必ず規制がかかっています。
インサイダー取引や有価証券報告虚偽記載などの案件についての疑いが持たれれば、証券取引等委員会が立ち入り検査や取引審査を行い、株式の取引を行う際の監視など取り締まっています。STOはそういった各規制機関が定める規制にしたがって投資的な側面だけを持ち合わせたトークンを発行するというものです。このSTOで発行されたトークンのことを「セキュリティトークン」と呼びます。次にこのセキュリティトークンについて解説していきたいと思います。
セキュリティトークンとは
セキュリティトークンは取引可能な資産で裏付けされている通貨をいいます。株式をイメージするとわかりやすいと思います。株式は会社が事業で得た利益の一部を株主に配当していたり、会社の所有権を株式に添えて均等に分配したり、と株式にはこういった特徴があります。株式などはこういったことを行う際に規制が存在しますが、セキュリティトークンはこのような株式などの金融商品と似た形に定義するとわかりやすいと思います。
株式は金融商品として見なされるかどうかを判断する方法に「ハウイテスト」を用います。ユーザーがお金を投資しているかどうかまたは投資先が法人であるかどうかなどを判断材料としており、そういった条件を踏まえハウイテストで認められたものは金融商品と見なされます。セキュリティトークンはこのような規制を乗り越えて発行されるため必然的に金融商品となります。
ICOとの違いとは
ICOはもともと参入障壁が低い資金調達方法のため、どんな会社でも技術さえともなっていれば誰でもトークンを発行し資金調達を行うことができます。一般的な投資と比べると参加しやすいため、ICOでは詐欺の被害が数多くなっています。以前には国公認のトークンを発行していると資金集めを促し、宣伝のために芸能人を多用したりして最終的にリテラシーの低いユーザーをターゲットに資金を巻き上げ、騙すために行なった詐欺行為もありました。
STOはこういった誰でも簡単にできてしまい、詐欺被害が横行しているという問題を解決するための新しい資金調達方法となっています。ですので、ICOで発行されたトークンよりは規制をしっかり整えたセキュリティトークンは詐欺で騙されてしまうリスクが低く、安全性が高いといえます。
STOのメリット・デメリット
・規制に則った通貨のため詐欺被害が少ない
STOで発行された通貨は規制に則って発行されるためその安全性が担保されています。ですので、必然的に詐欺の被害にあうことが少なくなるでしょう。また、公開通貨として発行されるためそのトークンの社会的な信頼を得られます。この方法を用いることによって審査に通過した有望プロジェクトのみがSTOを行うため、詐欺のトークンは淘汰されることになります。
・安全性が担保された通貨に投資できる
これは投資家としてのメリットですが、詐欺で騙される可能性の低いトークンに投資を行うことにより、安全な取引ができるようになります。ICOで発行されてきたトークンに投資をすることとSTOで発行されたセキュリティトークンは危険性も安全性も大幅に違ってきます。ですので、従来の投資を行う際にSTOで発行されているか、されていないかが出資する時の判断基準になりえます。
では反対にデメリットを述べていきたいと思います。
・誰がセキュリティトークンに投資できるかが懸念されている
STOで発行されたトークンには誰が投資できるのかということがとても懸念されています。証券取引等委員会では特定以上の年収を持つもの、資産を持つ個人または法人が投資を行うことができるといった規制があります。このような規制がSTOに適用された場合はICOのトークンに今まで誰もが参加しやすくなっていたというメリットが失われてしまう可能性があります。
現在、STOを検討しているプロジェクトとは
STOはまだまだ検討中の提案ですので、これからの仮想通貨の市場にどういった影響をもたらすのかはわかりません。しかし、今現在STOの実施を行なっているプロジェクトがいくつかあります。
・FINOM(フィノム)
FINOMはブロックチェーン技術を構築する世界に利便性を広めたいという思いで取り組みを進めている会社です。FINOMはユーティリティトークンのNOMとセキュリティトークンのFINの両方を発行しています。ICOで発行できるトークンとSTOで発行できるトークンを発行しているということです。FIN保有者は企業の総収益の20%までを配当として受け取ることができ、所有するFINの枚数でユーティリティトークンのNOMを受け取ることができます。
・Polymath(ポリーマス)
Polymathは株や債券などの有価証券をトークンにすることで配当の流れを自動化にしようと事業を進めている会社です。セキュリティトークンのPOLYを発行し安心の資金調達を行おうとしています。この仕組みで通常の証券と同様に配当の支払いなども可能になり、法律上の証券の扱いを受けて投資をする側からして信頼のおける通貨ともいえます。Bittrexに上場したため、さらに信頼のできるトークンとも言えるでしょう。現在のICOが抱える課題を解決する優れたプロジェクトだと考えられます。現在ではこういったプロジェクトが進められています。
ICOとSTOの違いはお分かりいただけましたでしょうか。仮想通貨を発行する際はICOでトークンを発行し、資金を集めることが主流となっていましたが、ICOに対する規制の曖昧な部分が多くあったためSTOがこれからはICOの流れを断ち切る資金集めの手段となるかもしれません。
仮想通貨に対する規制がこれから証券のような形になっていくのかどうかはまだまだ先に話なのかもしれませんし、すぐにきてしまう話かもしれませんが、仮想通貨の取引を行う投資家の方々にとっては安全に取引が行える制度があれば安心して資金を回すことができる方が気持ち的に資産を回す余裕が出てきます。
ですので、こういったプロジェクトをしっかりと理解しておくことが大切です。ICOにもSTOにもそれぞれのメリット・デメリットがあるので、それぞれの良さを踏まえた上で投資する仮想通貨を選ぶのもまた一つの手となります。