仮想通貨にしろ株式証券にしろ、こと投資系金融商品というものは些細な出来事でチャートが左右され、投資家たちはやきもきするものですが、今月6日から中盤にかけてのビットコイン(以下BTC)の続落には、目をそむけたくなったユーザーも多いはずです。今回は、これまでのBTCチャートを振り返るとともに、なぜそのような事態に陥ったのか、下落の要因を整理・解説するとともに、今後の行方を占ってみたいと思います。
5月6日に急きょ下落傾向を見せ以降続落!今はどうなってる?
年末年始の乱高下を経て、3月末には「1BTC=72万7千円」まで落ち込んでいたものの、4月に入って回復傾向を見せ、「1BTC=100万円」レベルにまで値を戻していたBTCに異変が生じたのは、5月6日深夜のことです。
突如として値下がりを始めたBTCは、その後約10日間連続でベアマーケットの傾向を見せ17日にはついに、今年4月20日以降保持していた、「90万円」の壁を割り込んでしまいました。とはいえ、割安感が買い注文を呼んだのか、執筆現在である20日時点では上昇傾向を見せており、100万円台回復とはいかないまでも、94万円台で取引が行われています。また、今回の値下がりはBTCにだけみられた現象ではなく、業界を牽引する基幹通貨である、BTCのチャートに引きずられて、イーサリアムやビットコインキャッシュ、リップルなども、同時期にそろって値を下げました。
仮想通貨が下落することなんて、そう珍しくない事なのですが、問題は今回の値崩れが本来チャートにおける、好材料として値上がりのきっかけとなりうる、「コンセンサス2018」の開催期間中に起こったことです。5月14日に開幕し、2日間の日程で行われたコンセンサス2018では、前年の会議期間中にBTCが高騰したこともあり、一定の価格回復への期待感が高まっていました。
また、仮想通貨価格について、いつも強気な予想することで有名なマーケット・ストラテジーファーム、「ファンド・ストラット」の設立メンバーであるトム・リー氏も、「期間中BTCの価格は上昇するだろう」と予想しましたが、あえなくその予想は覆される形となりました。実は、コンセンサス自体は前年比約3倍となる、約8,500もの参加者が集まるほど成功に終わりました。しかし、会議参加チケットが2,000ドルと高額なうえ、仮想通貨コンセンサスでありながら「仮想通貨でチケットを購入できない」という矛盾から、コアユーザーがあまり参加しなかったため、大きな値上げ材料とならなかったとみる専門家もいます。
事実、イーサリアムの創始者であるVitalik Buterin氏は、コンセンサス運営サイドから参加を強く要請されたものの、「チケットを仮想通貨で購入できないなど、コンセンサスが提唱する技術に対する背信である。」という考えから、イベントへの参加を拒否しました。結果として同氏が参加した、2017年コンセンサスのような仮想通貨マーケットに対する強い求心力を、今回は得ることができなかったという訳です。
BTC下落の要因その1「Bingによる仮想通貨広告の禁止発表」
コンセンサス2018の不発は、価格高騰の機会をそいでしまった原因と言えますが、BTCの下落要因とまではなりえません。まず最初に下落要素となったのは、マイクロソフトが運営する検索エンジン「Bing」が、今年7月までに順次仮想通貨に関する広告の掲載を、禁止する旨を発表したことです。
Yahoo!やGoogleなどの大手インターネット企業、並びにフェイスブックやTwitterなどの、大型SNSが取った措置に追随する形となりましたが、それらと同様にユーザーを悪質な仮想通貨関連詐欺から保護することが、広告禁止の目的です。そして、Yahoo!やGoogleなどが広告禁止を発表した時と同様、最も広告として利用されているBTCのチャートに悪影響が及び今回の下落につながったとみられています。
BTC下落の要因その2「マウント・ゴックスによる大量の売り注文」
次に、BTCマーケットを冷え込ませてしまった要因として指摘されているのが、初期からBTCに関わっているユーザーなら、名前を見ただけで顔をしかめるはずである、かの「マウントゴックス」のウォレットから大量のBTCが送金されていることが、それを監視する追跡データである、クリプト・グラウンドによって確認されたことです。
送金が確認されたのは、8,214BTCほどであり日付は5月10日、当時の時価で換算すると約83億7,800万円になりますが、翌11日と12日にかけてBTCの取引量が急増し、しかも10万円もの下落を示していることから、おそらく送金されたマウントゴックスの残存BTCが、「何者か」の手によって売りに出されたものとみられています。何者かについて断定することはできませんが、倒産したマウントゴックスのコールドウォレットを自在に扱えるのは、破産管財財団しかあり得ません。
破産管財財団が当事者の場合は、いまだに20万BTCが残っている、マウントゴックスウォレットの小規模分散換金による、債権者への補填という可能性が高くなってきます。ですが、このマウントゴックス破産管財財団は、管財を進めるにあたって同社保有のBTCを、直接的な相場影響が出にくい、店頭取引での売却をしていないという非難の声が強くでています。店頭取引では、取引所取引よりも価格面で不利になるため、管財財団は避けているものと考えられますが、今回の行動によってBTCの値崩れという、マウントゴックスと一切関係ない多くのユーザーに、損益をもたらす結果となってしまいました。
BTC下落の要因その3「韓国随一の取引所Upbitへの現地当局による内部調査」
3つ目の要因として挙げられるのが、韓国では第1位、世界で見ても4番手となる取引量を誇る「Upbit」が、粉飾決算を行い投資家を欺いたとされる詐欺容疑で、韓国当局の内部調査を受けた、というニュースが世界中に駆け巡ったことです。そして、韓国国内で最も早く影響が出始め、内部調査が実施された10~11日を境に、UpbitにおけるBTCの取引量は売り中心に増え始め一時報道前の14倍ほどにまで膨れ上がりました。
当然ながら、この韓国国内でのBTC売り注文集中の余波は、隣国である日本はもちろん、米国などBTC取引量の多い国々に飛び火し、世界中のトレーダーにマイナス材料として、認識されていきました。そして、ここまで触れた3つの下落要因はすべて同じ時期に集中してしまったため、大きな流れとなって長期間BTCがベアマーケットを続けることになったのです。
今後のBTCチャートを大胆予想してみた!
最後に、今後BTCがどのような値動きをするか、上記までに解説した3つの要因をそれぞれ分析しつつ予想していくと、まず最初に指摘したBingによる広告禁止発表の影響は、「一時的なもの」という見方が有力です。なぜならば、Bing始めYahoo!やGoogle、さらに各SNSによる広告禁止措置は、BTCや他のアルトコイン自体、もしくは取引所などのシステムが確立し、ユーザーへの弊害が出なくなった時点で解除される見込みが高いからです。
一方、マウントゴックス資本の流出は、破産の管財が完了するまで続くと考えられますが、財団も残存するBTCの価値が急落しかねない、数万単位の換金はしないでしょうし、専門家からの指摘に応じて換金を店頭取引に移行すれば、試乗への悪影響は出てこないとみられます。加えて、Upbitへの内部調査についても、このところの金融庁による国内取引所への監視・指導体制強化でもわかる通り、ずさんな管理体制である仮想通貨取引所、及び関連企業は淘汰されている真っ最中で、そのおかげもあって仮想通貨市場は、どんどん健全化・成熟の兆しを見せています。
また、一時のBTC価格は市場における普及度や認知度、決済利用可能サービスの数とかけ離れた、高すぎるバブル的なモノでしたが、このところの下落によりかなり適正なレベルまで、落ち着きを見せているとも言えます。以上のことから、2018年のBTC及びアルトコインのチャート動向は、小幅な値動きは見せるものの、いい意味での低空飛行をしながら、市場の完成を見るのではないか、と予想しています。