2017年末の爆発的な盛り上がりから、世界中のさまざまな大手企業が仮想通貨業界へと参入を果たしています。日本国内でもLINEや楽天など、日本の産業を支える企業がこぞって仮想通貨市場への参入表明しており、話題を集めています。そして先月、エンターテイメント業界最大手のエイベックスも仮想通貨業界への参入へと名乗りを上げました。そこで今回はエイベックスがどのようにして仮想通貨事業を行っていくのか、その全容を細かく解説していきます。
エイベックスが子会社「エンタメコイン」を設立
エンターテイメント業界最大手といっても過言ではないエイベックス社が、2018年5月24日に子会社である「エンタメコイン」を設立することを発表しました。エイベックス社は5月11日に公表した新資料の中で「今後はフィンテック、ブロックチェーン業界へと進出していく」と事業拡大を掲げており、今回の子会社設立とも密接に関係していることがうかがえます。
まずは、エンタメコインの会社概要を紹介していきます。商号はエンタメコイン株式会社、代表者にはかつてエイベックスで、May Jやシシドカフカなど人気アーティストを世の中に輩出した有田雄三氏が就任します。設立年月日は6月とされており、主な事業内容は電子マネー等の電子的価値情報及び前払式支払手段の発行、販売並びに管理、電子決済システムの提供 等、とされています。これらに関しては詳しく後述します。
所在地は東京都港区南青山三丁目1番30号とされており、これはエイベックスの本社の所在地と同様です。資本金は9億9,000万円、このうち資本準備金が4億9,500万円とその資本力からさすがエイベックス社ということがうかがえます。また、株主構成はエイベックス100%で、エンタメコインはエイベックスの完璧な子会社として設立されました。
エンタメコインの目的は?
エイベックスは主に音楽やアニメなど、総合エンタメ事業を主軸としています。一見仮想通貨事業とは関係なさそうに思えますが、どのような目的でエンタメコインを設立したのでしょうか?エンタメコインが設立された本筋の目的としては、エイベックスグループや関連する芸能事業関係者のためにブロックチェーンを用いた決済システムを構築することです。
具体的には電子決済システムを導入し、電子マネーの発行、販売、そして管理までをも行います。この電子システムを導入することにより、エイベックスグループに所属するアーティストのファンクラブ会員やコンサート来場者がグッズなどの購入時に電子決済が可能となります。
また、エイベックスは新事業・イノベーション領域としてフィンテックやブロックチェーン事業以外にさまざまなコンテンツを公表しています。具体的にはVRなどの仮想現実空間での疑似体験、ゲーム関連、ライブ配信、さらには今流行りのV-tuber(アバターなどのキャラクターを用いたyoutube配信者)などです。このようにエイベックスは今後多種多様な事業展開を掲げているため、エンタメコインではそれぞれの業界にマッチしたサービスが提供されると予想されています。
エンタメコインは仮想通貨事業への参入も検討中!
エンタメコインの設立が公表されたのと同日、同社の定款が一部変更されることも発表されました。その変更内容として、次のものが挙げられます。事業目的の項目に「電子マネーの発行、販売、管理」「電子決済システムの提供」など先ほど挙げた内容とともに「仮想通貨交換業」も追加されていました。
仮想通貨の将来性を見据えてか、最近では仮想通貨事業に参戦表明する企業が増えてきました。しかし国内で仮想通貨事業を行うには金融庁への登録が必要です、金融庁によると、現在100社以上が金融庁へ申請をしているとのことです。
金融庁はコインチェックのXEM流出事件を受けてから事業者へ厳しくチェックをするようになり、さらに既存事業者への対応も相まって新規登録には時間がかかるとされています。エイベックスは電子マネーの発行を2019年以降を目処としているため、仮想通貨に関する事業が進むのもそれ以降になりそうです。
また、一概に仮想通貨交換業といっても独自通貨の発行、ICOプロジェクト、仮想通貨取引所の運営など、その内容は多岐に渡ります。どのような事業を行っていくかは今後発表されるはずですので、エイベックスの動向は要チェックです。
エンタメコインの将来性は高い?
今までエンタメコインの概要や目的、サービス内容などを説明してきましたが、一番気になるのが「エンタメコインの将来性は高いのか?」ということですよね。結論からいってしまうと、エンタメコインの将来性は高いということができます。ここでは、その理由を2つ解説していきます。
まず一つ目の理由が、エイベックスの実績と知名度によるものです。エイベックスは日本を代表するエンタメ企業であり、業界最大手といっても過言ではありません。エイベックスにはアーティストでは安室奈美恵や小室哲哉、女優では沢尻エリカなど、国民的な有名人が所属しています。このことから、エイベックスが仮想通貨事業へと参入したら多くの日本人から注目を集ることが容易に想像できます。
そして知名度が高いということは、それだけで他の通貨よりも一歩リードすることができます。ファンの数が多ければ多いほどユーザーも増加するため、仮に独自通貨を発行したら流通量も大きくなります。ファンクラブ会員数やコンサート動員数など、あらゆるデータが手元に蓄積しているため見通しも立てやすくなります。また、大企業ということは投入できる資本も大きくなるため、展開できる事業の幅をも広げることができます。
そして二つ目の理由は、提供するサービスの内容です。いくらエイベックスが大企業で知名度があろうと、事業内容やサービス内容のクオリティが低かったらユーザーは満足せず事業が伸びることはありません。しかし、現在発表されている電子マネー決済のプラットフォーム構築は、明らかにニーズがあります。
また、最近ではLINEや楽天、三菱フィナンシャルグループなど仮想通貨事業へ参入を表明する企業は数多く存在しますが、エイベックスのようにエンタメを基軸とした仮想通貨事業は多くありません。そのため、他とサービス内容がかぶることなく競争相手が少ないというのも、将来性の高さに関連しています。
エンタメコインに関するネット上の反応は?
あの大手企業であるエイベックスが仮想通貨参入を表明したことにより、ネット上ではさまざまな反応がありました。そしてその反応の多くが、好意的なものでした。やはりエイベックスという資本力がある大企業が参入することにより、仮想通貨市場を安定させてくれるのではないか、という意見が多く見られました。
しかしその一方で「事業内容が不透明で怪しい」「仮想通貨ブームの波に乗りたかっただけ」という厳しい意見も見られました。確かに事業内容の詳細についてはわかりませんので、今後に期待することしかできません。また、大手企業がどんなにこぞって仮想通貨事業へと参入をしても、仮想通貨市場が盛り上がらなければ意味がありません。
2017年末の仮想通貨ブームから一点、2018年に入ってからは市場全体に下火が続いています。ただし、仮想通貨やブロックチェーンといった技術の進歩は止められませんし、今後我々の日常生活でもスタンダードになっていくことは明らかです。また、国内の大手企業たちが参入をしていることからも、仮想通貨の未来には期待できるといえるでしょう。まだまだ始まったばかりですので、数年後を見据えて期待しましょう。いずれにせよ、エンタメコインが今後どのようにして仮想通貨事業を始めていくのか、その動向は要チェックです。