仮想通貨ビットコインが急落し、6月11日には約2ヶ月ぶりの安値をつけました。ビットコインだけではなく、ほぼ全ての仮想通貨が下落した様相です。市場全体の時価総額が、この一日で約200億ドルも減少したことになります。

今回の暴落の原因はいくつかあると言われています。一つはビットコイン先物取引を管轄する米国商品先物取引委員会(CFTC)による、主要取引所に対する取引記録提出要請です。

もう一つは韓国の仮想通貨取引所「コインレール」が、6月10日に4,000万ドルのハッキングを受けた事を発表したからです。現在コインレールは犯人特定のため、韓国警察に捜査協力を求めています。

今回はこの暴落に関しての解説を加えていきながら、仮想通貨の今後の将来性について説明していきます。今後の仮想通貨投資の参考にしていただければと思います。

CFTCの取引データ提出要請はネガティブインパクトなのか?

今回のCFTCによる取引データ提出要請は、一見すると適切な管理の一環のように見えますが、なぜ価格暴落に繋がっていると考えられているのでしょうか。まずはこの件について説明をしていきます。

CFTCは今回、Bitstamp、Coinbase、itBit、Krakenの四つの取引所に取引データの提出を求めました。なぜこれらの取引所なのかというと、この四つの取引所のビットコイン価格がビットコイン先物に関わってくるからです。

CFTCはビットコインの先物取引を管轄おり、昨年12月のビットコイン先物の上場に伴い、価格操作が行われていないかの操作を行なっています。この理由から、これらの取引所にデータ開示を求めるのは正当性があります。

万が一これらの取引所で価格操作があった場合、ビットコイン先物の価格が崩れ、相場が大きく変動する恐れがあります。これまではシカゴカーマンタイル取引所グループ(CME)が、これらの取引所にデータの開示を求めていましたが、限定的な情報しか得られなかったため、先物価格の不透明感が指摘されていました。今回はこの状況に対して、ついにCFTCが介入したという背景があります。

さて、これによりなぜビットコイン価格が下がったのかというと、規制が強化される可能性があることと、実際に価格操作があり価格が下落した場合に備えたリスクヘッジの売りポジションである可能性が高いです。

今回ハッキングを受けた韓国の取引所「コインレール」とは?

次に、今回ビットコイン暴落のきっかけの一つとなったとされる「コインレール」のハッキングについて説明していきます。そもそもコインレールとはどのような取引所なのでしょうか。

コインレールは韓国に拠点を構える世界第100位前後の取引所です。24時間の取引額は約250万ドルと比較的規模の小さい取引所と言えるでしょう。

50種類以上の仮想通貨を取り扱っており、大手取引所では取り扱っていないような市場規模の小さい仮想通貨も取り扱っているのが特徴の一つです。しかし今回はその市場規模の小さい仮想通貨を取り扱っていたことが、ハッキングのターゲットになった理由にもなっているようです。

今回主にハッキングのターゲットとなったのは、コインレールで最も多く取引されているPundi Xが発行するトークンのNPXSです。NPXSは最近ICOを行なった新進気鋭の仮想通貨で、同取引所の取引の約40%を占めていると言われています。

コインレールは公式サイトにてハッキングを受けたトークンの入出金を全て凍結し、被害を受けていない仮想通貨もセキュリティの高いコールドウォレットに移管する旨を直ちに発表しています。

コインレールの迅速な対応で、被害は最小限に抑えられているようです。さらにコインレールは、もともと規模の小さい取引所なので、一見今回の暴落とは関係がなさそうに感じます。

ブロックチェーンを逆手に取ったサイバー攻撃、51%攻撃とは

ここで今回のコインレールの件とは直接は関係ありませんが、市場がサイバー攻撃に過敏になっている理由の一つとなっている51%攻撃について説明していきます。

昨今51%攻撃などのブロックチェーンの穴をついたサイバー攻撃が流行していることもあり、市場全体が信用性に関わるような問題に神経質になっている感は否めません。

51%攻撃とは、悪意あるマイナーの集まりがネットワーク全体の51%以上の計算能力を占め、自分たちに都合の良いような不正な取引を正当化するサイバー攻撃です。

規模が大きくない仮想通貨がターゲットになる可能性が高く、今年に入ってからビットコインゴールドやモナコインが51%攻撃の被害にあっています。相場が意図的に左右されるため、元からその通貨を保有している投資家にとってはたまったものではありません。

直近でこういった51%攻撃が頻発しており、コインレールでハッキングを受けたNPXSも規模の小さいトークンだったため、51%攻撃が一時疑われました。

仮想通貨市場以外の全体的な経済状況も関わっている可能性がある

仮想通貨大暴落の原因と今後の将来性についてCFTCによる取引データ開示要請と、コインレールのハッキングが今回の暴落の要因となっていることを説明しましたが、それ以外の要因として金融市場全体が短期的なリスクオフのムードになっていることも間接的に影響を与えていると言えます。

米国の中央銀行的な役割を果たすFRBが開く、米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催が6月12日から13日に控えているということがその理由です。今回のFOMCでは米国の金利引き上げがほぼ確実視されており、相場が一時的に不安定になることが予想されています。

これにより投資家全体の心理としてリスク資産からの引き上げが意識されており、それがたまたま今回の仮想通貨の暴落と重なってしまったというのが今回の出来事です。

過去の傾向からも米国の利上げ前後のタイミングで、仮想通貨市場は短期から中期にかけて下落トレンドに入ることが多く、今回もそれに基づいているという考え方もできます。

今回の暴落は市場の過剰反応である感は否めない

以上が今回の仮想通貨暴落に関するまとめとなります。一つずつ振り返ってみると、まずCFTCの取引データ開示要請は、そもそも市場の安定性を維持するための規制なので、長期的なリスクとはなり得ないという見方が優勢です。
今回は一時的にビットコイン価格の下落がありましたが、本来この規制は投資過保護と、業界の発展には欠かせないものです。CFTC監督官の一人も仮想通貨を支える技術ブロックチェーンには期待を寄せているといった旨の発言をしており、闇雲な規制を繰り返すことは本意ではないでしょう。

また、コインレールのハッキングに関しては看過できる問題ではありませんが、コインレールの市場規模を考えると市場への悪影響はそこまで大きくないというのが大方の見解です。
しかし今回のコインレールのハッキング事件が投資家の不安感を煽り、暴落につながってしまった可能性も考えられます。

今回の暴落に関しては、FOMCを控えているリスクオフのタイミングで様々な悪材料が同時期に出てしまった、というのが原因である可能性が高いです。

一方で仮想通貨市場の需要を広げると期待されているビットコインETFが、承認の動きに向けて各企業着々と歩を進めているという明るいニュースもあります。まずはこの暴落の流れを乗り切って、投資家心理が回復するのを待つばかりです。