ビットコイン価格は7月18日に10%近く値上がりし、6月10以降約1ヶ月ぶりの7,000ドル台まで戻しました。ここ最近冷え込んでいた市況に明るいニュースが舞い込んだ形です。ビットコインの上昇に伴って、アルトコインも連れ立って上昇しています。
今回の上昇は1時間足らずで急伸した形になります。一部のトレーダーはテクニカル指標の一つであるヘッドアンドショルダーボトム(逆三尊)が形成されつつあるとし、取引高が急増しています。
またトレンドの転換をはかる指標であるパラボリックでは、7月16日にビットコインのチャートが上昇トレンド入りをしたことを示しています。
今回、仮想通貨市場が上昇した理由はいくつかありますが、最も大きな要因は米最大手投資会社であるブラックロックが、仮想通貨市場に参入するのではないかという憶測があったためです。
ブラックロックは運用会社として高い認知度とブランドがあり、仮想通貨市場に投資するとなると市場に大きなインパクトを与える可能性がとても高いです。今回は、ブラックロックが市場に参入することの意味と、この度のビットコイン上昇の要因について解説していきます。
今回仮想通貨市場への参加を検討しているブラックロックとは?
ブラックロックは世界最大の運用会社の一つです。投資信託やETFなどの金融商品を世界中で提供しており、日本の投資家にも人気のある運用会社です。その資産運用総額は約6兆ドル以上と言われており、金融市場において大きなポジションを占めていると言っても過言ではありません。
そのブラックロックが仮想通貨市場を研究する作業グループを立ち上げたという報道がなされています。ブラックロックは仮想通貨市場の分析をしたのち、ビットコインに対する先物取引を開始する可能性があります。
しかしながら、ブラックロックからの公式発表ではないという点には注意が必要です。ブラックロックが7月16日に発表した同社決算では、ビットコインETF上場プロジェクトに関する言及はありませんでした。またブラックロックのCEO、ラリー・フィンク氏は顧客である機関投資家たちは仮想通貨に懐疑的であると述べており、あくまでも慎重な姿勢を崩さずにいます。
いずれにせよ、ブラックロックがビットコインひいては仮想通貨に関して興味を抱いているのは事実で、今後の動きについて目が離せない展開になりそうです。
世界的な投資銀行の仮想通貨に対する見解は?
ブラックロックが仮想通貨に関して興味を示している中で、ゴールドマンサックスグループやJPモルガン・チェースといった同じく金融市場で大きな立ち位置を占めているウォール街の雄はすでに仮想通貨市場への参入に関して動きを見せています。
ゴールドマンサックスに関しては、2017年10月ごろから複数のメディアが仮想通貨への参入を報じていましたが、2018年5月時点でビットコイン先物の取引を開始することを決定しました。
またJPモルガン・チェースに関しては、2018年5月時点で暗号資産戦力部門を創設しています。またこの部門の責任者が29歳と若いのも、市場から注目されています。JPモルガン社長のダニエル・ピント氏は、仮想通貨に対して前向きな姿勢を示しながらも現在の形では商品への採用は出来ないとしています。
このようにいずれの大手金融機関も仮想通貨に対して前向きな姿勢を見せながらも、お互い牽制しあっている印象を受けます。しかし準備は着々と進めており、競合に抜け駆けを許さないような状況となっています。
これら業界のリーディングカンパニーに続くように、海外の投資銀行も仮想通貨に絡めた金融商品を次々に開発しています。今後もこの動きは活発化していく可能性は高いといえます。
ビットコインの価格を引き上げたその他の要因
今回のビットコイン価格の上昇は、ブラックロックの仮想通貨参入の思惑以外にも複数の要素が重なった形になります。一つ目は金融最難関資格であるチャータード・ファイナンシャル・アナリスト(CFA)が試験に仮想通貨とブロックチェーンの追加を決定したということ、二つ目は米国大手仮想通貨取引所のコインベースがデジタル資産の取り扱いに対し、米国規制当局から許可を得たということです。
CFAの取得に仮想通貨とブロックチェーンの知識が必要になってくるということで、金融業界の主流派の中では仮想通貨の知識が普及するきっかけになるという見方が強くなっています。
コインベースに関しては、キーストーン・キャピタル、ベノベート・マーケットプレイス、デジタル・ウェルスの計3社の買収が規制当局により承認されたことにより、仮想通貨を有価証券として取り扱うことのできる可能性が出てきました。
これらが市場にとって明るいニュースと捉えられ、ビットコインの上昇を押し上げたという形です。また今回の件は市場にとっては一過性のものではないという見方が強いのもポイントの一つです。
今後の最注目はビットコインETF
今回のブラックロックの仮想通貨市場参入がポジティブに捉えられた理由は、ブラックロックがビットコインETF(上場投資信託)の上場を目指しているのではないかという思惑のためです。ビットコインETFの上場は、一般投資家が株式市場でビットコインを購入できるようになることと同義なので、流通量が増えるという市場にとっては非常に大きなインパクトとなります。
米国のビットコインETFの認可は、かねてより市場からも注目されており、6月にはヴァン・エック社とソリッドX社の共同で新たなビットコインETFがシカゴ・オプション取引所に申請されています。
またシカゴ・オプション取引所は投資家に対してビットコインETFに対するコメントも募集しており、積極的に投資家とコミュニケーションをはかろうとしています。
このように米国ではビットコインETF組成の動きが積極的になっています。ビットコインETFが上場することで、ビットコインの信頼性が増す、機関投資家の資産が流入する、税制が見直される可能性が出てくる、などのメリットがあります。これらを理由として、ビットコインETFは今後のビットコイン価格の上昇を牽引していく存在として注目を集めています。
ビットコイン価格は海外要因に左右される可能性が今後もありそう
今回のビットコイン価格の上昇要因をまとめると、ブラックロックが仮想通貨市場への参加を検討、CFAの試験に仮想通貨とブロックチェーンの項目が追加、コインベースの規制当局からの承認が挙げられます。
このように今回のビットコイン価格の上昇は、海外の要因によるものが強いことがわかります。ビットコインETFに関しても、日本で上場する見込みは現時点ではなく、米国当局の状況次第になっています。
やはり世界的な金融機関は米国に集中しており、大きな資金が動く際はこれらの金融機関が絡んでくる可能性が高いため、米国が今後も仮想通貨の市況を牽引していく流れになるという見方は強いです。
最近では海外のニュースも翻訳された状態で入手することができるので、今後仮想通貨の相場を見るときは海外の状況も確認する必要が出てきそうです。直近でポジティブな要因となりうるのはブラックロックとビットコインETFの動向になりそうなので、これらについては引き続き目が離せない状況になることが予想されます。