米国仮想通貨取引所運営企業の最大手、コインベースがついに日本に進出します。年内にも金融庁に仮想通貨交換業の登録を申請する見通しです。国内最大手の三菱UFJフィナンシャルグループと連携して日本市場に参入します。

最近の日本国内における海外仮想通貨取引所の動向は、世界最大手のバイナンスが日本から撤退したことが記憶に新しいでしょう。これは金融庁からの警告を受けたことに端を発します。

金融庁はここ最近、仮想通貨取引所への規制を強めており、国内大手IT企業であるサイバーエージェントも仮想通貨交換業への参入を断念しました。これから日本で仮想通貨交換業を始めるのはハードルが高くなっていますが、なぜそんな中でコインベースは今回日本市場に参入するのでしょうか。

今回、そもそもコインベースとはどのような取引所なのか、というのを説明し、今日本の仮想通貨市場に参入する意味をお伝えしていきます。今後の市況を見極める参考になればと思います。

コインベースとは?企業価値10億ドルを超えるユニコーン企業として有名

米国最大級の仮想通貨取引所運営企業コインベースはアメリカのサンフランシスコを拠点とする仮想通貨取引所運営会社です。GDAXという取引所を運営し、取引量は日本の取引所、ビットフライヤーに近い規模感を持っています。常に取引量10位以内には入る取引所です。

コインベースの利用者は約1,300万人以上と言われ、個人用ウォレットの利用は約2,000万件にも上っています。また未上場で企業価値10億ドルを超える、ユニコーン企業としても有名です。

創業は2012年で、短期間で仮想通貨業界のリーディングカンパニーに名を連ねています。また、多くの株主や出資者を抱えており、その中には今回連携先として上がっている三菱UFJフィナンシャルグループもいます。

コインベースの取扱い通貨はビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、ビットコインキャッシュの4種類です。バイナンスなどの最大手に比べると通貨数は見劣りしますが、米ドル、英ポンド、ユーロなどを利用することが出来るというメリットがあります。

コインベースが運営している取引所GDAXは現在、日本在住の人は口座開設が出来なくなっているだけに、今回の日本参入には期待が集まります。

コインベースの強みは高いセキュリティ

コインベースはセキュリティの高さを強みにしています。全社員の約5%がセキュリティ専門のエンジニアで、GDAXでは資産への保険適用もなされています。1人あたり最大で250,000ドルの保証を受けることが出来ます。コインチェックのネム流出事件では、返金の適用が後手に回りましたが、このような制度があらかじめ用意されているのは、投資家にとっては安心できる材料です。

また、ニューヨーク州の仮想通貨交換業免許に当たるビットライセンスを取得しており、そもそもの信用性も高くなっています。日本の仮想通貨市場に参入するには、現状セキュリティ対策の面は必須と言えるので、コインベースはすでに最低限の条件はクリアしていると言えるでしょう。

しかし、そんなコインベースも過去にはインサイダー疑惑をかけられたことがあります。2017年12月にコインベースがビットコインキャッシュの取扱いを始めたときに、米国の掲示板サイトで、コインベースの従業員と関わりがあると見られる人物が「GDAXにビットコインキャッシュが上場する」という旨の投稿をしたのが、嫌疑をかけられている理由です。

結果、コインベースの従業員およびその家族の取引が一時的に禁止されるという事態になりました。真偽の程は不明ですが、これに関してはGDAXが大規模な取引所で、取引量が多いからこそ起こることとも言えます。

海外仮想通貨取引所の日本国内での動き

海外大手取引所が今、日本に進出する理由ここで、海外仮想通貨取引所に日本におけるここ最近の動向を確認しておきましょう。前述の通り、インパクトの強いニュースとしてはバイナンスが金融庁より警告を受けたということがあげられます。

また、同じく仮想通貨取引所「クラーケン」を運営するペイワードも6月までに撤退することを表明しています。外資系が相次いで撤退する中で、今回のコインベースのように逆に参入を表明する企業もあります。

それが海外仮想通貨取引所のHitBTCです。取引高10位前後の取引所で、多数の通貨を取り扱っているのが特徴の取引所です。HitBTCも日本法人の設立を準備していると、3日に公式ブログで発表しています。

HitBTCの代表は、日本の規制に従うことに前向きで、規制当局と連携していく姿勢を見せています。現在は規制に従い、日本居住者向けのサービスを一時制限していますが、すぐにサービス再開をする自信があると述べています。

撤退を表明する企業がある一方で、コインベースやHitBTCのように参入を表明する企業もあります。参入を表明する企業は当然ながら、日本の仮想通貨市場の大きさが今後も広がりを見せるだろうと考えているからです。

日本の仮想通貨投資家数は約350万人。まだ伸びしろはあるのか

日本仮想通貨交換業協会が発表した資料によると、日本の仮想通貨の現物取引の顧客数は2018年3月で約350万人と言われています。その中で、口座に預けている資産は50万円未満という投資家が約90%をしめています。

日本は仮想通貨大国と言われていますが、その実情は、まだまだ一部の投資家が少額投資を行っているというフェーズです。また、欧米を始めとした海外機関投資家からの資金も日本にはまだ流れて来ていなく、欧米の規制が整ってくると今後大きな資金が日本の取引所にも流れ込んでくる可能性があります。今回、日本の仮想通貨市場に参入を表明した外資系企業はこういった点にまだ伸びしろがあると考えているのでしょう。

事実、日本の仮想通貨の手数料は海外取引所と比べて割高で、セキュリティの面からもまだまだ投資家が安心して投資が出来る環境とは言い難いのが現状です。コインベースやHitBTCの参入で、手数料が引き下げられ、セキュリティ対策の意識も高まってくれば、投資家の数や投資金額も増える可能性が高まります。

外資系の参入によって、取引所ごとのメリットが明確になり競争率が上がれば、より良いサービスがうまれる土壌にもなります。外資問わず、今後参入を検討している企業には、こういった市場のすそ野拡大に一役買って欲しいところです。

外資系企業には規制当局と協力しながら市場を作っていくことが求められる

今回説明した外資系参入の流れは、あくまで第一波に過ぎないという声もあります。今後、金融庁が求めるハードルをしっかりと満たす外資系企業が増えてくることでしょう。新しい市場参加者と協力しながら市場を作っていくことが、現状の国内仮想通貨取引所にも求められてきます。

新しい市場参加者に求められることは、やはりユーザー目線のサービスを提供していくことです。海外取引所と比べて手数料が高い、と言われているのであればそれを変えてくれるような変革者をユーザーは求めています。

外資系だけではなく、国内の新しい市場参加者も大手企業を中心に出てきています。国内外の垣根を超えて、より多くの投資家にとって安心して使いやすいサービスを作って行くことで、仮想通市場のすそ野が広がるでしょう。まずはコインベースがどのように市場に好影響を及ぼすのか、当面はその動きが見逃せなくなりそうです。