7月4日から5日にかけて、アジア最大級のブロックチェーンイベント「Token Sky(トークンスカイ)」が汐留で開催されました。トークンスカイはもともと海外発のブロックチェーンイベントですが、今回オンラインゲーム開発を手がける「アソビモ」との共催で日本開催が実現した形になります。

出展ブースは120社以上、二日間での合計来場者数は2,500人以上と今回も大きな盛り上がりを見せたようです。規制強化や相場の下落などで仮想通貨市場は元気がないものの、その根幹をなす技術のブロックチェーンは多くの企業から注目されていることが分かります。

今回のトークンスカイは日本開催ということもあり、日本人の観客が多かったと言われています。世界20カ国以上からの参加者がおり、出展ブースの半数以上が海外プロジェクトの中で、日本企業がブロックチェーンの分野で存在感を示すのは喜ばしいことです。

今回はパネルディスカッションなどで登壇した日本企業を紹介しながら、現状の日本企業のブロックチェーンに関する主要な取り組みについて解説していきます。

今回共催を務めた「アソビモ」とはどんな企業?

アジア最大級のブロックチェーンイベント「Token Sky」が開催アソビモは豊島区にあるオンラインゲームの自社開発を行なっている企業です。近年ではゲーム開発以外にブロックチェーンにも注目しており、2018年4月にはデジタルコンテンツの保護・二次流通プラットフォームとしての「ASOBI STORE」を発表し、そこで発行するトークン「ASOBI COIN」のICOプロジェクトも公開しています。

「ASOBI STORE」が目指す世界は、ブロックチェーンテクノロジーを活用したデジタルコンテンツの保護・二次流通を実現することです。これにより、様々なデジタルコンテンツ(ゲームアイテム、ソフトウェア、電子書籍、音楽など)を購入し、不要になったデジタルコンテンツを別のユーザーに売却できるようになります。

一般的にデジタルコンテンツは買い切りで、二次流通では売れません。そこに対して、アソビモはデジタルコンテンツも二次流通させたいという考えを持っています。まずは10年以上にわたるオンラインゲームの開発・運営経験からゲームアイテムの二次流通マーケットをオープン予定とのことです。

このようにブロックチェーンで現状の業界の問題を解決しようとするアソビモが音頭をとって、今回のトークンスカイ日本開催が実現しました。

パネルディスカッションで登壇した日本国内のブロックチェーン推進企業

最終日の5日にはスマホ向けゲームなどを開発する株式会社gumiの國光社長が登壇しました。このgumiは2018年5月に仮想通貨及びブロックチェーン技術に特化した投資ファンド「gumi Cryptos」を設立することを発表している、いわゆるブロックチェーン推進企業の一つです。ファンド規模は日本円にして約30億円とその規模も大きいものとなっています。

そのgumiの國光社長がパネルディスカッションの登壇時にファンド設立の狙いや、今後の仮想通貨・ブロックチェーン業界についての展望について説明しています。

まずビジネスにおいて、ブロックチェーンを成功させるには、ブロックチェーン・ファーストのUI/UXを意識したプロダクトをいかに作ることができるか、この点が非常に重要であると述べています。

またブロックチェーンのユースケースとして、今後ゲームの重要性が増すことについても指摘しています。これはパソコンやインターネットにおいてもテクノロジーの進歩にはゲームが絡んでいることを例に挙げた発言です。ブロックチェーンはゲーム業界にとって大きい意味を持つと國光社長は見ています。

最後に、昨年までの仮想通貨業界は技術やユーザーに向き合うものというよりはマーケティングだけのものだったとも述べ、今後は本格的に役立つプロダクトが作られるとも予想しています。

その他の注目すべき主要な国内出展企業

ますます広がるブロックチェーンの多様性に注目今回のトークンスカイで、もう一つ注目したい出展企業がAppBank株式会社です。AppBankは主にiPhone・iPadの情報メディアを運営している企業ですが、2018年6月中旬から仮想通貨配布プラットフォームの「@BLAST(アットブラスト)」の提供を開始しています。

「@BLAST」はゲームやエンターテイメントなど、様々なコンテンツを通じて仮想通貨を配布し、仮想通貨とふれあう場を提供するプラットフォームです。6月にリリースされたAppBankのゲームアプリ「POKER×POKER」の7月開催の大会でこの「@BLAST」を利用し、総額1,000万円相当の仮想通貨を賞金として配布することになっています。

今回のトークンスカイで、AppBankからは創業者であるマックスむらい氏が登壇しています。これを好感してか、登壇が決定した日のAppBankの株価はストップ高まで買われるほどの影響が出ています。

AppBankもゲームアプリを開発している企業で、アソビモ・gumiとは同業界といえます。やはりゲーム業界とブロックチェーンプロジェクトは親和性が高いと言えるでしょう。

ゲーム会社以外の意外な国内出展企業

トークンスカイについて報じるメディアでは、テクノロジーやソフトウェアの側面に注目が向きがちですが、トークンスカイにはハードウェアを提供している会社も出展しています。国内で仮想通貨のマイニング向けハードウェアを販売している高千穂交易株式会社もその一つです。

高千穂交易はブロックチェーンのマイニング用途として、最新のGPUを搭載した台湾TUL社製GPUボードの販売を2018年3月から開始しています。ブロックチェーンのマイニングは、取引履歴の整合性をとる際に膨大な計算能力を要します。そこで必要になってくるのが、コンピューターの計算能力を高める、このGPUボードというパーツです。

ブロックチェーンを使った未来を描くのにあたり、当然ながらブロックチェーンを生成する技術というのも同じように進歩していく必要があります。高千穂交易は優れたハードウェアの販売という面から、ブロックチェーンの発展を支援しています。

取り組み方は異なれど、様々な日本企業がブロックチェーンの発展に期待を寄せていることが、今回のトークンスカイで改めて明らかになりました。

今後の日本企業のブロックチェーンの取り組みについて

今回、トークンスカイを共催したアソビモの近藤社長は開催前に、広告の打ちづらい仮想通貨業界では、人との繋がりによるプロモーションが重要だと述べています。また日本の居住者が海外の仮想通貨・ブロックチェーン技術の発展速度に触れられずにいる現状に危機感を抱いているとも言っています。

確かに現状の日本では、ブロックチェーンへの投資などの取り組みはありながら、プロダクト開発の観点からは他国に比べて遅れをとっている感は否めません。

また、未だにどうしても仮想通貨の投機性のみがクローズアップされ、その根幹をなす技術であるブロックチェーンは一般の方への理解がまだ及んでいないのが現状です。

今回のトークンスカイは日本企業のブロックチェーンに関する取り組みが明らかになっただけではなく、世界との取り組みの違いが明確になったという点も新しい収穫になりそうです。これを機に日本企業のブロックチェーンの取り組みに興味を持つ方が増え、テクノロジーへの理解が進むことを望みます。また次回のトークンスカイは9月にドバイ、11月にバンコクでの開催が予定されています。ブロックチェーンの技術の進歩はまさに日進月歩なので、次回以降にも注目が集まります。