「難病の○○ちゃんの命を救うために必要な額、2億円」といった募金を目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。なぜ、そのような高額な費用が必要かというと、多くのケースでは日本では治療の手段がなく、海外に渡航し、保険も掛けられない中で最先端の医療を受ける必要性が出てくるためです。
相当な資産家、影響力の強い団体をバックに着けることができれば、幾分かは現実味も出てくるのでしょうが、大半のケースにおいては、億どころか1000万、100万といった単位ですら、即断で出せるような金額ではないでしょう。先進国の日本ですらそうなのですから、新興国では尚更です。
このように、治療のために国外へと渡航することを「医療観光」と言います。医療観光の市場は、全体として伸長傾向にある医療業界の中でも成長率が凄まじいものですが、医療観光のための費用が捻出できずに、そもそも適切な医療機関とコンタクトを取ることが出来ず失われていく命も多数あります。医療観光の成長市場に目を付け、そこで抱える患者、医療機関早々の問題を解決していくことを目的に作られているプロジェクトが、ETHEALです。今回はこのICOについて考察していきます。
ETHEAL(エシール)の概要
ETHEAL(エシール)が目指すものは、世界中の医療機関や医療関係者、患者を結びつけるプラットフォームの構築です。そのプラットフォーム上で決済手段として用いられるのが通貨単位「HEAL」で表される仮想通貨です。開発はイーサリアムベースで行われる計画となっています。
患者はETHEALのプラットフォーム上から、自身や周辺の患者が必要としている医療情報を、母国語で検索することが出来ます。そして、世界各国のその分野を得意とする医療機関や研究機関とコンタクトを取ることが出来、必要な情報にアクセスしたり、場合によっては治療のための予約を行うことも出来ます。更に治療を受けた後、プラットフォーム上で利用した相手の評価を、レビューとして残すことが出来ます。
ETHEALのプラットフォーム上で用いられるスコアにはユーザーの信頼性を表す「ETS」(Etheal Trust Score)とエコシステムへの貢献度を表すERS(Etheal Rank Score)の2種類があり、前者のETSはコンテンツ作成の早さやトークンの保有量に応じて、後者のERSはコンテンツの信頼性や受けたレビューの評価に応じて付与されます。これらのスコアはイーサリアムの特長であるスマートコントラクトの機能を用いて記載されるため、改ざんを行うことや恣意的に操作することは出来ません。
コミュニティに対して優良な情報のアップロードや医療コンテンツの提供を行い、評価システムを用いて患者による優良レビューの作成や、医療機関が評価を獲得することで、より多くの依頼を受けやすくなり、またそれぞれの貢献度に応じて報酬を受け取ることができる仕組みになっています。必然的に参加者がコミュニティに貢献する仕組みが多く考えられており、プロジェクトとしての設計のうまさが伺えます。
ETHEAL(エシール)の特長
ETHEAL(エシール)のプラットフォームを用いることにより、患者、医療機関、それに製薬会社といった関係者のすべてが適切な情報にアクセスして、サービスを認知してもらうための広告費、マーケティング費を削減することが出来るようになります。
とりわけ、患者が削減できるコストとして、ETHEALは7,000~50,000ドルが節約できると試算しています。医療観光の市場は年間25%という、医療市場全体と比べても目覚ましい発展を見せており、2025年には5,400憶ドルまでの伸びが予測されています。
そのような成長市場において、それぞれのプレーヤーのコスト削減や、正確な情報へのリーチを確保しながら利益を上げられる仕組みが構築されているのは、ETHEALのプロジェクトの大きな強みであると言えます。ETHEALのプロジェクトチームは「Booking.com」や「Salesforce」のような急成長サービスを目標に見据えており、将来的には100億ドルの収益を上げることを目標としているようです。
また、同様の医療系ICOのプロジェクトは他にも多数立ち上がっており、どのプロジェクトが市場を取るかという点も、投資を行う上で、もしくはプラットフォームを利用する上で重要となってきます。ETHEALは既に医療系の大手サイトを運営している実績があり、今回のプロジェクトは、いわばそれをブロックチェーンやスマートコントラクトの技術を使って応用するといった位置づけとも見ることが出来るため、ゼロベース、又はもっと小規模な母体から始まるプロジェクトと比較しても、ノウハウや信頼性という意味で優位性があると言えます。
ETHEAL(エシール)のICOスケジュール、ロードマップ
ETHEAL(エシール)のICOは2018年の6月25日から7月23日までの約1か月間行われます。ICO価格は1ETH=600HEALです。とは言っても、0.1THE~など小数点以下の単位からの購入も可能なため、少額からでも投資を行うことが出来ます。
最近横行している、詐欺同然のICOの場合、少数から多額の資金を集める必要があるため、ICOの必要額も高額に設定されているケースが多いのですが、このプロジェクトにおいては比較的小資本から参加することが出来るため、理念に沿った形でのICOを実現しようと考えていることが推測でき、その点でも信頼性が高いものであると言えます。
ICOで集めたい最小単位を表す、ソフトキャップは20,000ETH、目標値の最大額を表すハードキャップは66,667ETHと設定されているようです。また、最大供給量は100,000,000HEALと記載されています。
ロードマップとしては2018年から2019年までの間でプラットフォームを構築し、2019年には、世界各地に対して本格的なマーケティングを開始、そして2020年以降、本格的にサービスを展開する構想となっているようです。
ETHEAL(エシール)のICOの評価は?
ICOを評価する有名なレーティングサイト、ICO Benchにおいて、5点満点中、4.3点というかなりの高評価を獲得しており、プロジェクトしては信頼背が高く、有望であると考えることが出来るでしょう。(当然、レーティングサイトの評点が高いからと言って妄信してよいものではありませんし、どれだけ評価が高いプロジェクトであっても、失敗ということは当然あり得ます。)
開発元がブロックチェーンとは無関係に、既に医療サイトを運営しており、年間200万人以上の単位で新規ユーザーを獲得しているため、プロジェクトの下地ができている、という点と、元々実態のあるサービスを展開しているため、失敗するといったリスクはあっても、プロジェクトそのものがでっち上げで、集めた資金を持ち逃げするというリスクは極めて低い点も、高評価なポイントの1つとして挙げられるでしょう。
ブロックチェーン技術は人類の医療に貢献しうるか
「ブロックチェーン」というと現在では仮想通貨(≒お金)という風に連想してしまいますが、そもそも、仮想通貨はブロックチェーン技術を実用化するための実験の1つという位置づけにすぎません。現在多くのICOが仮想通貨やトークンを絡める形でプロジェクトを進めていますが、重要なのは、ブロックチェーンや、例えばETHEALで言えばスマートコントラクトなど、まったく新しい概念を用いて、現在どこかの業界が抱えている問題を解決することにより、新たな価値を創造していくという点です。
人類とは切っても切り離せない医療問題にアプローチし、そこの各プレーヤーが頭を悩ませている費用や、情報へのアクセスの問題を解決しながら、自身も成長市場で大きな利益を上げようというプロジェクトはまさに、ブロックチェーンを用いて人類の進歩に貢献するものであると言えます。まだICOの段階ですが、今後の展開が見離せないプロジェクトの一つです。