仮想通貨、とりわけビットコインという言葉を全く耳にしたことがないという方は、いまや少数派になってきたのではないかと思います。しかし実際にビットコインを所有しているという方はまだまだ少数派です。また、ビットコインを所有している人の中でも、実際にATMで決済に使ったことがあるという方は、その中でもさらに少数に絞られていくのではないでしょうか?

「使えるお店が少ない」「価格変動が激しい」といった事情も大きいでしょうが、そもそも「ビットコインATMの決済手段としての使い方がわからない」という方が大半かと思います。現状投資、もしくは投機の対象としての色合いの強いビットコインですが、そもそも根本的な利用方法は「決済手段」です。

「お金」(少なくとも近い物)と認識して付き合っていく中で、ビットコインATMという少し面白いサービスについて取り上げてみたいと思います。(※ビットコインATMは興味深いサービスでありながら、現在多くのATMが稼働休止してしまっております。事情については後述します。)

ビットコインATMとは

ビットコインATMを初心者向けに徹底解説ビットコインATMは、ATMとはいっても、銀行やコンビニに設置してあるようなお金を出し入れする機械ではなく、ATMを介してその場でビットコインを購入したり、自身の持っているビットコインを売却して、その場で現金と引き換えたりできる機械がビットコインATMです。ビットコインATMの利用にキャッシュカードが必要なのと近い感覚で、ビットコインATMの利用にはウォレットが必要になります。取引所での売買に比べて手続きが簡易であり、かつ即時性もあるのが特徴です。下記に簡単に売買の方法を示します。(※操作方法や最低取引金額など、各ATMによって異なる可能性があります。)

① ビットコインを購入する場合
ビットコインの購入を選択
→購入したい金額を入力後、指定金額を入金
→購入額分相当のビットコインを、ウォレットのQRコードで受け取る

② ビットコインを売却する場合
ビットコインの売却を選択
→売却したい金額を入力
→QRコードをかざし、ウォレットから該当する金額分のビットコインを送金する
→売却額相当の日本円がその場から出てくる

以上の手順になります。

ビットコインATMのメリットとデメリット

ビットコインATMのメリットとしては「手軽さ」「流動性」の2点が挙げられます。自国内だけでなく、国境を越えて利用する際には、更にこの特徴が際立つのがビットコインATMです。オンラインのビットコイン取引所での売買も、慣れてしまえばそれほど難しいものではありませんが、それと比較しても非常に簡単なステップでビットコインの売買を行うことができます。

それ以上に大きいのは、ビットコインATMでの流動性です。手持ちの日本円とビットコインを交換したいと考えた時に、ビットコイン取引所のアカウントへの入金を行い、承認、反映されるまでのラグや、引き出したいと思ったときに、出金申請が行われるまでのラグを考えると、ビットコインATMで交換できる速さ、という意味では圧倒的に優位性があります。

日本人が国内でビットコインを使う場合、「単に売買が早く便利」という点が強調されますが、外国人観光客の視点から見ると、わざわざ手持ちに法定通貨を空港などで日本円に両替しなくても、ウォレットさえ持っておけば、ビットコインATMから直接日本円が入手できるため、非常に便利です。

逆もまたしかりで、私達が海外旅行に行く際、渡航先にビットコインATMが置いてあれば、持っているビットコインをわざわざ日本円に替えて、それを両替所に持って行って、という手続きを取らなくても、ウォレットに入っているビットコインを売却するだけで、現地の通貨を手に入れることが出来ます。

デメリットとしてはビットコインATMでの「手数料」を挙げることが出来ます。ビットコインATMの手数料は機器によって異なるのですが、5%~10%程度が一般的です。これはオンラインの取引所と比べても、かなり割高な水準にあたります。ビットコインATMは便利な分、ビットコインATM手数料は割高な設定になっているようです。

日本と世界各国のビットコインATM

ビットコインATMは、現在日本においては十数か所に設置されています。大半が東京、もしくは首都圏に設置されていますが、それほど人口が密集している都道府県ではなくとも、ビットコインATM決済が可能な店舗に併設されているケースもあるようです。

ただし、下の項目で記載の通り、現在多くのビットコインATMが稼働を停止してしまっている状況です。世界全体でみると、アメリやヨーロッパを中心に1500台以上のビットコインATMが設置されています。最近では東南アジアに設置されるビットコインATMも増えているようです。

日本人がビットコインATMを利用するとなると、国内よりは海外のATMを旅行先、出張先で使うシーンの方が利便性は高いように思えますので、渡航先にビットコインATMが設置されているようだったら、試しに使ってもみても良いかもしれません。

ビットコインATMが休止している理由

渡航先でも手軽に使え流動性も高いビットコインATMここのところ、金融庁が三大仮想通貨取引所を含めた多くの取引所に対し、業務改善命令を出しているのをニュースで目にしている方も少なくないと思います。現在、交換業を営むためには、金融庁の認可を受けることが必須となっています。「みなし業者」も現在は認可を受けなければ営業ができなくなっております。

仮想通貨交換業、というと、多くの方がイメージされるのはインターネット上にある取引所かと思いますが、ビットコインATMもいわば無人の「両替商」ですから、交換業にあたります。

ビットコインATMを設置、運営する会社は金融庁から認可を受ける必要があるのですが、これまでビットコインATMを運用していた多くの会社が現在金融庁らの認可を得るに至っておらず、ビットコインATMを運営できなくなっている、というのが現状のようです。

法定通貨どうしでの外貨の両替であれば、銀行などのしっかりとした業者が行っていますが、ルールが制定される前の仮想通貨業界では、非常に低いハードルでの両替をビジネスに出来ていたため、新興国にたまに出てくる「ぼったくり両替商」のようなことが物理的には可能であったことを考えると、この規制は致し方ないものであると言えます。

ビットコインATMは決済手段としてのビットコインの普及の立役者になるか

ビットコインは決済の手段として非常に画期的でありながら、利用できる箇所が少ない、価格変動が激しい、将来的な値上がりを期待し利用するより所有する人が多いといった事情で、まだまだ市場には決済手段としては浸透していません。一方で、ビットコインATMも、これまで野放しであった仮想通貨業界に徐々に規制が入っていく中で、営業を再開できていないものが大半であるのが現状です。

しかし、健全な市場の形成には、適切な規制は必要なものです。むしろ、整備が進んでいく中で、コンプライアンスがしっかりとした業者が生き残り、ビットコイン自体に不信感を抱き、悪質な業者がいることに不安を感じていた一般層が参入してくることで、長い目で見るとビットコインは仮想通貨市場の育成の寄与へ期待されています。

そのような中で、現在ビットコインATMを運営している業者が金融庁の認可を獲得したり、認可済の業者がビットコインATM、もしくは、他の仮想通貨ATMを設置したりといった動きが出ることで、法定通貨とビットコインをリアルタイムに交換し、通貨本来の機能として利用されていくのがごく当たり前の光景になるのかもしれません。

現在、「支払い『も』出来る」といっただけでなく、「現金払い禁止」「NEM決済のみ」といったような取り組みも、ごく一部、もしくは期間限定だったりしますが、現れ始めています。このような流れの中で、ビットコイン、もしくはビットコインATMが発展していったり、ゆくゆくはコンビニなどに当たり前においてあるATMの機器にビットコインが対応したりといったようなことが現実になるかもしれません。