世界における仮想通貨の法規制について、確認します。
中国の規制
中国は仮想通貨のマイニング事業に力を入れていますが、2017年9月に中国人民銀行はICOを違法な資金調達方法として、ICOを全面的に禁止すると発表しました。この発表は衝撃的であり、仮想通貨の価格は一時的に急落しました。中国政府がICOの規制をしはじめた理由は、ICOは仮想通貨を用いて資金集めの詐欺が横行する面があるためと思われます。
アメリカの規制
アメリカのニューヨーク州では、2015年から仮想通貨事業を行うには「ビットライセンス」の取得を義務付けとしています。このライセンスを取得している企業はRippleなど5社のみで、企業が参入するには厳しい壁となっています。ワシントン州でも、2017年7月仮想通貨に対する新しいガイドライン規制が施行され、大手取引所はサービス停止を次々と発表しています。現状では、仮想通貨の普及スピードに法整備が追い付いておらず、州ごとに金融の規制や法律が定められているアメリカの制度により対応は州によって異なっているといえます。
シンガポールの規制
シンガポールの中央銀行であるシンガポール金融管理局では仮想通貨を「資産」と分類し、規制は最小限に留めています。しかし、シンガポールも2017年8月に、証券先物取引法の対象となるICOを規制する考えを発表しました。一方で、当局は仮想通貨自体の規制はしないという姿勢も強調しており、曖昧な姿勢をとっているといえます。
インドの規制
2016年、政府が高額紙幣を廃止したことで経済が混乱に陥り、現金の代わりにビットコインが急激に注目され始め、利用者は2017年春までにかなり、増加しました。政府は仮想通貨規制の是非を問う諮問委員会を設置しましたが、合法化に向かう兆しをみせています。IT大国インドではブロックチェーン技術を駆使する優秀な若者が多いです。しかし、詐欺による被害も拡大しています。よって、法整備を進めながら、国の強みをどう生かすかに注目です。
日本の規制
日本では2017年4月に「仮想通貨法」が施行されました。国が仮想通貨を支払手段の一つと定義した世界初の試みであるといえます。仮想通貨の取引所を運営するためには、政府に申請書を提出することが必要となりました。取引所が登録制になったということです。金融庁は、登録制について以下のように規定しています。
第四条 法第六十三条の二の登録を受けようとする者は、別紙様式第一号(外国仮想通貨交換業者にあっては、別紙様式第二号)により作成した法第六十三条の三第一項の登録申請書に、当該登録申請書の写し二通及び同条第二項の書類を添付して、金融庁長官に提出しなければならない。
(登録申請書のその他の記載事項)
第五条 法第六十三条の三第一項第十一号に規定する内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 取り扱う仮想通貨の概要
二 法第六十三条の十一第一項に規定する管理の方法
三 仮想通貨交換業の利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所の所在地及び連絡先
四 加入する認定資金決済事業者協会(仮想通貨交換業者を主要な協会員又は会員とするものに限る。以下同じ。)の名称
また、利用者との間で、仮想通貨の交換等に関しても以下のように規定しています。
第十六条 仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業の利用者との間で仮想通貨の交換等を行うときは、あらかじめ、当該利用者に対し、書面の交付その他の適切な方法により、取り扱う仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認を防止するための説明を行わなければならない。
2 仮想通貨交換業者は、前項に規定する説明を行う場合には、次に掲げる事項を説明するものとする。
一 取り扱う仮想通貨は、本邦通貨又は外国通貨ではないこと。
二 取り扱う仮想通貨が、特定の者によりその価値を保証されていない場合は、その旨又は特定の者によりその価値を保証されている場合は、当該者の氏名、商号若しくは名称及び当該保証の内容
三 その他取り扱う仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認防止に関し参考となると認められる事項
3 仮想通貨交換業者は、その営業所において、仮想通貨交換業の利用者と仮想通貨交換業に係る取引を行う場合には、前項第一号及び第二号に掲げる事項を当該利用者の目につきやすいように窓口に掲示しなければならない。
(利用者に対する情報の提供)
第十七条 仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業の利用者との間で仮想通貨交換業に係る取引を行うときは、あらかじめ、当該利用者に対し、書面の交付その他の適切な方法により、次に掲げる事項についての情報を提供しなければならない。
一 当該仮想通貨交換業者の商号及び住所
二 仮想通貨交換業者である旨及び当該仮想通貨交換業者の登録番号
三 当該取引の内容
四 取り扱う仮想通貨の概要
五 取り扱う仮想通貨の価値の変動を直接の原因として損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由
現在、日本で、仮想通貨は「資産」と定義されています。仮想通貨に関する消費税は、平成29年6月末までは、課税対象とされてきました。よって、仮想通貨を譲渡した場合は課税売上に該当し、仮想通貨を購入した場合は課税仕入れに該当して仕入税額控除の対象となっていました。しかし、平成28年6月に公布された資金決済に関する法律により、仮想通貨も貨幣や紙幣と同様に、支払手段として法律的に定められました。そのため、消費税法においても、平成29年7月1日以後については、有価証券に類するものの範囲に含まれることになり、仮想通貨を売買した場合でも非課税とされることとなりました。
一方で、仮想通貨を使用することで生じた利益は、所得となり、所得税の課税対象とされます。仮想通貨を使用することにより生じる損益は、事業所得等の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。仮想通貨への投資による国外への資金流出や国を超えて取引が行われる海外取引所の仮想通貨に、政府がどこまで規制をするのか今後の動向に注目したいところです。
韓国の規制
韓国の金融規制当局は、詐欺のリスクがあるとして、ICOを禁止すると発表した。 韓国の金融委員会(FSC)は、あらゆる形のICOを完全に禁止するとともに、デジタル通貨の信用取引も禁止すると述べた。FSCは、ICOは資産バブルのリスクが高く、投資家が詐欺や市場操作の被害に遭いやすいと述べている。また、ICOが投機目的で利用されたケースが複数あるとして、取り締まりを強化するとした。FSCは、韓国政府がデジタル通貨の取引を「制度化」しようとしているのではなく、状況を監視して今後の規制監督を改善する意向であることを強調した。 韓国ではおよそ100万人がビットコインを所有していると推計されており、利用の増加を理由に規制監督を求める声があがっていた。
ロシアの規制
ロシア政府は、中国と同様に、ICOの規制に向けて動いています。しかし、ロシアはマイニング事業とブロックチェーン技術で金融大国となることを目指しています。ロシアのマイニングファームRussian Mining Coinでは、次世代のマイニング機器を研究開発するプロジェクトを開始し、政府もこのプロジェクトを支援しています。ロシアは、仮想通貨の普及を促し、金融大国を目指していく姿勢をとっているといえます。
世界的にみて、仮想通貨の普及に法規制が追い付いていない状況となっています。ICOに対する規制は厳しいですが、各国、仮想通貨そのものを否定している状況ではなくなっています。仮想通貨取引を利用者が安全に行える環境が整えば、仮想通貨の価値は上がっていくでしょう。