VR(仮想現実)でリアルな映像のeスポーツを世界に普及させていくという使命を帯びるコインがあります。今回は、それを紹介します。「VReS(ヴィーアールエス/単位:VReS)」は、2018年7月15日までICOメインセールが実施されている仮想通貨です。VR(仮想現実)を活用した「eスポーツ」を世界に普及させるために、分散型ゲームプラットフォームを構築するプロジェクトです。

eスポーツは2024年パリ五輪正式種目に?

VReSという名前は、「VR(Virtual Reality/仮想現実)」と「e-Sports(eスポーツ)」の「eS」を合成させてできています。名前の通りVRを活用して、eスポーツをもっと普及させることを目指しています。

コンピュータゲームをプロ野球やF1のように「プロスポーツ化」し、一つのビジネスとして確立させたeスポーツは、全世界でその競技人口が7,000万人以上、観戦者(視聴者)は3億8,500万人以上、市場規模は10億ドル(1100億円)以上ともいわれ、いま急成長しています。海外には冠スポンサーがついた賞金総額20億円以上のメジャー競技会もあり、年収2億円以上を稼ぎ出すプロゲーマーが何人もいます。
日本では5月にサッカーゲームの「eJリーグ」第11回決勝大会が開かれて浦和レッズが優勝し、FIFAワールドカップ・ロシア大会閉幕直後の8月にはサッカーゲームのワールドカップも開催されるなど話題に事欠きません。eスポーツは2022年の杭州アジア大会の正式種目になることが決定していますが、東京の次の夏季五輪、2024年のパリ五輪でも正式種目に採用されて、開会式の各国選手団の入場行進ではアスリートにプロゲーマーが交じって行進するのではないかと、期待されています。

eスポーツの「競技種目」には、「鉄拳」など格闘技系、「リーグ・オブ・レジェンド」など銃器を撃ちあうバトル系、「ウイニングイレブン」などスポーツ系、「ぷよぷよ&テトリス」などパズル系、レース系といった多くの種類がありますが、中には従来型の2D、3Dの映像ではなく、VRのテクノロジーを採用して本物そっくりのリアリティを追求しているゲームもあります。仮想通貨のVReSは、VRをとり入れたライブ感があるゲームをeスポーツとして世界的に普及させることを目指しています。

eスポーツビジネスにコミットするしくみ

VReSはVRのeスポーツを普及させるために、次の5つの分散型プラットフォームを構築し、提供するとアナウンスしています。

1 Multi-device Matching System
世界中のゲーマー同士でeスポーツの対戦を実現させるしくみです。マシンや通信回線など環境が違っても、ハンデなく公平に競技ができるようにします。ゲーマー同士のVRチャットや対戦リクエスト(挑戦状)を送る機能もあります。その国の法律で許されれば、トークンを賭けて勝負することもできます。

2 Tournaments and Prizes
eスポーツのオンライン競技会(トーナメント)を開催し、トークンで参加費を徴収したり、招待したゲーマーに出場報酬を支払ったり、成績優秀者にトークンで賞金を出したりするしくみです。競技会は管理者がいなくても自動的に運営され、対戦成績に応じて順位が決まります。スポンサーやゲーマー自身が新たに競技会を開くこともできます。

3 Spectators VR Game and Sports Betting
英国のブックメーカーのように、eスポーツの競技会の試合ごとの勝敗や最終順位に「賭け(スポーツベッティング)」ができるしくみです。オッズ(賭け率)も事前に発表され、参加者はトークンで賭け金を払い、当てた人にはトークンで払戻金が支払われます。一部は競技会の出場報酬や賞金や運営資金に回るので、競技会誘致のインセンティブ(誘因)になります。もっともギャンブルなので国によっては法律で禁止される可能性があります。

4 Viewer System
eスポーツの「オンライン観戦(視聴)」ができるしくみです。有料の競技会では、会場のオフライン観戦者は入場料を米ドルや日本円のような法定通貨で、自宅にいるオンライン観戦者は視聴料をトークンで支払います。観戦者がゲーマーや所属チームにトークンでチップ(投げ銭)を送って応援することもできます。ゲーマーやチームは試合後、応援してくれた観戦者の名前を挙げて感謝を伝え、そんなコミュニケーションを通じてサポーターを増やすことができます。

5 VR Game Companies
VReSのプラットフォームや、競技会のようなプレイスペースのデータをゲームの開発会社に提供し、VRのeスポーツの普及を促していくしくみです。既存のゲームも、ゲーマーたちの意見もとり入れながらよりリアルに、より高度にバージョンアップしていけば、eスポーツの競技種目として採用されて進歩し、人気も上がっていきます。

なお、VReSのトークンは競技会の参加費や出場報酬や賞金、ベッティング(賭け)の賭け金や払戻金、観戦の視聴料、競技会やゲーマーやスポンサーの関連グッズの販売、そのライセンス料、投資家への特別編集限定商品の配当などでひろく使われます。そのため全世界でeスポーツのゲーマーや観戦者がトークンをスムーズに購入・利用できるように、VReSは流通量などをコントロールすると言っています。技術的には、ブロックチェーンによって改ざんされない信頼性を確保し、スマートコントラクトによってベッティングなどで不正が行われないような安全性を確保します。eスポーツは、アメリカの4大スポーツ(野球、バスケットボール、アメリカンフットボール、アイスホッケー)やプロレス、F1グランプリなどスポーツビジネスのしくみにならって発展していますが、VReSは仮想通貨でありながら、その「eスポーツビジネス」に深くコミットしています。

VRでリアルになるとまずいこともあるが

 eスポーツのオンライン観戦や選手との通信もできる仮想通貨「VReS」VReSはイーサリアム(ETH)ベースのERC20トークンで、発行量の上限は33億VReSとなっています。15%のボーナスがついたICOプレセールが2018年5月28日から6月16日まで行われました。続いてICOメインセールが6月18日から7月15日まで行われています。どちらも購入可能通貨はイーサリアムだけです。メインセールにボーナスはなく、交換レートは1ETH=3,400VReS、最小購入単位は0.5ETHです。ハードキャップ(資金調達額の上限)は29,411ETHとなっています。なお取引所上場の予定は公表されていません。

VReSの運営チームのCEO(最高経営責任者)、CTO(最高技術責任者)は日本人で、「日本発」と言っても差し支えないようですが、最近はその人事で大きな動きが起きています。サンリオで「ピューロランド」の企画に関わり、セガに移ってジョイポリス(ゲームセンター)の開発プロジェクト統括だった元執行役員の田畑俊哉氏がアドバイザーに就任しました。アミューズメント施設で入場者を楽しませたプロが、観戦者を楽しませることも重要なeスポーツの世界に関わります。

VReSは、ロケーションVR(店舗型VR体験施設)を商業施設などに設置・運営する企業と提携しています。中国、韓国、日本などアジアが中心ですが欧米でも展開しており、全世界約3000店舗、約1,200万人のユーザー・ネットワークを持っています。そのインフラと人の基盤を、eスポーツの競技会場、またゲーマーの養成、eスポーツの魅力を伝えるVRゲーム体験の場や、スポンサーとタイアップした関連イベントの開催で活用することができます。野球やサッカーのゲームは、選手の姿が人形やロボットのようであったり、選手名が一字違いでコントのネタにされそうなものより、選手のビジュアルがよく似ていて、実名が入るもののほうがリアリティがあり、人気もあります。VRが使われれば画面はよりリアルになります。ファンを増やして商業ベースに乗せるには観戦者をどれだけ獲得できるかが重要で、それは大きな課題でもありますが、VReSが目指すリアルさはその課題解決の大きな武器になります。

しかし、eスポーツは偏見にさらされているのも事実です。「スポーツと呼んでいいのか?」という疑問はともかく、トップクラスの人気があるバトル系や格闘技系の一部は「狙撃や爆破で人が死ぬ」「暴力的なシーンが多すぎる」と批判され、IOCのバッハ会長もそう指摘し「サッカーのゲームならいい」と言っています。競技種目が選別されるのはeスポーツの将来にとってリスクですが、VReSにとってはさらに都合が悪いことに、VRは批判の的の狙撃や爆破、暴力などのシーンをよりリアルに、刺激的に見せてしまいます。eスポーツ系の仮想通貨はGeAR、MOLD、WAXなどがありますが、VRに的を絞っているのはVReSだけです。それだけにリアルさがあだになる恐れがあります。バトル系や格闘技系の種目でもアジア大会やオリンピックで採用されるかなど、eスポーツが今後、社会にどのように受け入れられていくかは、VReSの今後を大きく左右する要因になりそうです。