「COOLCOUSIN(クールカズン/単位:CUZ)」は2018年6月5日までICOパブリックセールが行われたイスラエル発の仮想通貨です。「世界の主要都市のロコ・ピープルしか知らないような情報がわかってクールだ」と、旅行する若い世代に支持されている旅行情報アプリ「Cool Cousin」が、仮想通貨の発行・運営に進出しました。

「Cool Cousin」はどんな旅行情報アプリ?

COOLCOUSINとは英語で「カッコイイいとこ」という意味です。90年代まではクール(cool)を「カッコイイ」という意味で使うのは辞書にない俗語でしたが、今では「クールジャパン」のように日本語としても定着しています。では、どんな人が「カッコイイいとこ」なのでしょうか? それは旅行先で「案内人兼遊び相手」になってくれる人です。アメリカは移民の国なので、たいていのアメリカ人は外国に親戚がいます。たとえばアイルランド系の人はアイルランド、イタリア系の人はイタリアに親戚がいて、たいてい同じ年頃の男女がいます。遠い親戚で本当のいとこではなくても、彼や彼女をいとこ(カズン)と呼んでいます。その〃いとこ〃が、実際にアイルランドやイタリアに旅行した時に街を案内してくれたり、盛り場などで一緒に遊んでくれたりしたら、それを「クールカズン(Cool cousin)」と呼びます。逆のパターンで、外国の彼や彼女がアメリカに来て、たとえばニューヨーク在住の〃いとこ〃が街を案内してくれたり、お酒を飲みに行くなど付き合ってくれたりしたら、それも「クールカズン」です。アメリカは地理的に「巨大な島国」で、かつてのアメリカ人は海外への関心が薄かったのですが、20世紀に二つの世界大戦とテレビと「ワンダーラスト」と呼ばれる若者の海外旅行ブームのおかげで国際感覚を身につけたといわれています。「ワンダーラスト」に「クールカズン」も少なからず貢献しました。

その名をそっくりいただいたのが、「Cool Cousin」という旅行情報アプリです。これは観光局や旅行会社の公式サイトや、「ブルーガイド」や「ロンリープラネット」のような定番旅行ガイド本には載らない、地元民しか知らないようなローカル情報を中心に掲載しています。たとえば、音楽が好きな人向けにライブが聴けるお店をジャンル別に紹介する、サッカーが好きな人向けに地元サッカークラブのクラブハウスやサポーターが集まるお店を紹介する、ファッションが好きな女性向けにそのお店をテイスト別に紹介するというように、若い世代の趣味や嗜好や生活スタイルに合った情報を載せています。それはまさに〃クールないとこ〃の口コミでしか得られなかったような情報です。そんな情報を収集するためにニューヨーク、ロンドン、パリなど世界主要都市の地元の若者を対象に「カズン」を募集し、登録しています。登録は世界約100都市、1,000人以上に及び、アジアやアフリカにも拡大中です。日本でも6月に「Cool Cousin Japan」として進出したので、東京にも公募で選ばれ、地元ローカル情報の提供や旅行計画へのアドバイスで訪日外国人をサポートするカズンがいます。Cool Cousinでは「カズンのプロ化」も進めていて、自営の旅行代理店として活動する「プロカズン」も生まれています。

Cool Cousinは、言ってみればモノや情報を共有しあう「シェアリング・エコノミー」の旅行版で、情報を共有するのにブロックチェーンの技術が使われています。アプリの利用者はメッセージ機能を使って自分と趣味や嗜好や生活スタイルや価値観が合いそうなカズンと直接コンタクトをとり、情報を確かめることができます。それによって、たとえばお店からお金をもらって頼まれたような「ヒモ付き」や「サクラ」の情報は排除され、アプリの信頼性が確保されています。Cool Cousinは、「ロコ・ピープル(地元の人)しか知らないことまでわかって便利」「趣味や嗜好に合った旅行ができて満足」と、世界中の旅行好きの若者の間で評判になって急成長しています。そのユーザー数は50万人以上に及び、2017年、「Google Trips」「Trip」「Airbnb」のような著名アプリを差し置いて「ベスト旅行アプリ」に選ばれました。

旅行アプリがなぜ仮想通貨を発行するのか?

そこに住んでいるロコ・ピープルの「カズン」から得た情報を掲載し、若者層を主な対象に現地の旅行情報を発信して好評を得たCool Cousinが、なぜ仮想通貨に進出して、COOLCOUSINのトークンの発行・運営を直接行うことにしたのでしょうか?

最大の理由は「決済の手段を持つ」ということです。一つは「サービス対価の支払い」で、旅行情報の提供、宿泊予約、ガイド役の「カズン」からのアドバイス(無料の範囲を超えた部分)、旅行代理店業務を行った「プロカズン」への5~30%のコミッションといった対価をCOOLCOUSINのトークンで支払います。感謝を込めて「チップ」も渡すことができます。その場合、アプリのCool Cousinは関与せず、ユーザーの旅行者から直接トークンが支払われます。COOLCOUSINはブロックチェーンやスマートコントラクトで透明性、セキュリティを確保した「非中央集権的プラットフォーム」だからです。

もう一つは協力者への「報酬の支払い」で、Cool Cousinアプリへの情報の提供だけでなく、たとえばお店の写真を撮ったり、お店の電話番号や営業時間など細かい部分をチェックしてくれたりした人にCOOLCOUSINのトークンで報酬を支払います。現地情報はすぐに古くなりますから、アプリの信頼性を保つためには協力者によるそうした作業が欠かせません。アプリを利用した人もカズンにお礼としてレビューや写真を送ったり、最新情報をアップデートしたりすると「コントリビューター」としてトークンで少額の報酬が受け取れます。

米ドルなどの法定通貨は、ユーロを除くと国によって違い、現地に着いた旅行者は両替しなければなりませんが、COOLCOUSINのトークンはアメリカでもフランスでも日本でもインドでも共通です。たとえば「プロカズン」主体で宿泊代やミニツアーやアクティビティの料金、航空券や鉄道・バスのチケットの購入などでもトークンによる支払いを広めることで、旅行者がスムーズにストレスフリーに国境を超えて旅行できる「COOLCOUSIN経済圏」の確立を目指しています。

評価は高かったが上場後に急落しICO割れ

世界100都市の地元民から聞いた「ここだけ情報」の旅行情報アプリ仮想通貨「COOLCOUSIN」2016年に設立されたCool Cousinは17名のチームメンバーと16名のアドバイザーで構成されています。CEOはネスレ、HBO、P&Gなどの多国籍企業で勤務した後、イスラエルでデジタル代理店やビデオ共有サイトを起業した経験があります。CTOは元・イスラエル国防軍のサイバー戦争責任者でブロックチェーンの専門家です。イスラエルは軍事技術が民間に転用されて世界有数のIT大国として知られています。他にはマーケティング戦略の専門家もチームに加わっています。COOLCOUSINはイーサリアムベースのERC20トークンで、発行上限は3億CUZです。ICOは、パブリックプレセールが2018年3月に、パブリックセールが2018年5月15日から6月5日まで実施されて終了しました。ICOはビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、米ドルで参加でき、最低購入金額は0.1ETHで、交換レートは「1ETH=3,770CUZ」で、日本円でのICO価格は「1CUZ=約22円」でした。トータルで17,000ETH、日本円換算で10億円以上の資金調達に成功しましたが、出資者にはベンチャーキャピタルも含まれています。

今後のロードマップは、2018年中にウォレットサービス、最初のトランザクションの開始、PC版、iOS版以外にアンドロイド版のリリースが行われ、2019年中にポップアップ製品、APIの開始、コミュニティガバナンスの実装、ビジネスパートナーの統合が行われます。東京五輪が開催される2020年には「社員の大量採用」で業容を拡大するというスケジュールになっています。Cool Cousinのアプリは「盛業中」で、右肩上がりで成長しています。仮想通貨COOLCOUSINのプラットフォームもすでに完成しました。登録した「カズン」や利用者によるコミュニティもできていて、満足度もなかなか高いです。仮想通貨としても、チームメンバーもアドバイザーもしっかりした専門家が揃い、格付けサイトでは100点満点で80~90点相当の高い評価を受けています。

しかし、2018年6月15日に分散型仮想通貨取引所大手のIDEXに上場したものの、いきなり大幅に下落し「ICO割れ」を喫しました。ICO価格約22円に対し、わずか7%余りの1.62円まで急落し、その後は値を戻しても6円程度が精いっぱいで、1CUZ=0.025米ドル=2.75円を軸に、2~3円の範囲で推移しています。「アプリ盛業中、高評価」を信じてICOに応募した投資家は、がっかりしています。現状、仮想通貨マーケットは軟調で、上場時期のめぐり合わせの悪さは否めません。今後はIDEX以外の取引所にも上場し、なおかつ仮想通貨の投資環境が好転して、新規資金の流入を待つことになります。COOLCOUSIN自体の中身はいいので、その時には期待を集めて上昇気流に乗れる可能性があります。