ノアアークコインとは?

ノアアークコイン(NOAH ARK COIN)は、フィリピンに関連するICOプロジェクトで発行されることになる仮想通貨トークン(コイン)の一種です。かつては、ノアコイン(NOAH COIN)と呼ばれていました。ノアコインは、フィリピンが抱えている社会課題を、ブロックチェーンの力で解決したいという問題意識の下、ICOプロジェクトによって、その解決策の構築に必要な資金を調達するために発行されることになっていたICOトークン(独自の仮想通貨)です。

フィリピンでは、海外へ出稼ぎに出て行く国民が世界でも屈指の多さで、略してOFW(Overseas Filipino Workers)と呼ばれます。人口が多いわりに国内で産業が少なく、物価も相対的に安いので、同じ労働力を使うぐらいなら、海外で稼いだお金を自国へ持ち帰ったり、家族へ送金したりしたほうが、お得なのです。

フィリピンには、1家族につき1人以上はOFWがいるとの統計もあるほどで、国境を超えた送金に大変な需要があるのです。OFWが出稼ぎ先から母国への送金は年間総額で3兆円を超えるともいわれます。
また、フィリピン人はアジアの中でも比較的発音が綺麗な英語を話すので、その会話力を活かして、欧米で活躍する人も増えてきています。

海外出稼ぎが多いフィリピン人の課題を解決する通貨

ただ、国際送金は非常に手数料が高いのが難点です。コルレス銀行という、送金仲介の金融機関も経由しなければならないためです。1,000ドルを送金するのに、数十ドルの手数料が徴収されることがあります。住み慣れない異国でせっかく得た稼ぎのうち、かなりの割合で手数料として取られるのでは、フィリピンにとっても大きな損失といえるでしょう。また、送金を申請した金融機関の窓口で、マネーロンダリングやテロ資金提供などのおそれを疑われ、厳しい身分証明を求められたり、何時間も待たされたりして、不快な思いをさせられる場合もあるのです。

しかし、仮想通貨であれば、送金にコルレス銀行の経由が不要ですので、送金手数料がほとんどかかりません。また、インターネットを通じての送金ですので時間もかかりません。ただし、ビットコインについては利用者が増えるにつれて、トランザクション(取引)をブロックチェーンに書き込む作業であるマイニングが遅れがちになり、数時間から数日ほど送金が完結しない「送金詰まり」が発生することもあります。また、送金手数料も高騰しており、送金手段として仮想通貨ならではのメリットが薄れてきています。

そこで、出稼ぎ先から母国フィリピンへの送金手段で、ビットコインに代替する、送金手数料が安価で送金詰まりもない仮想通貨として、ノアコインが用いられることになっていたのでした。フィリピン人で銀行口座を持っている人は3割ほどである一方、スマートフォンの所有率は100%を超えており、平均すると1人1台以上持っている計算になります。つまり、仮想通貨が普及する基盤も整っています。

従来であれば、OFWによる出稼ぎ先からの送金は、銀行口座を持っている人が他の家族へ分配するかたちになるため、同居の家族の間で微妙な力関係が生じます。子どもの保護者が一括で送金を受け取って預かるのならまだしも、それ以外の関係性では上下が生じかねません。その点、ノアコインであれば、それぞれの家族のスマートフォンへ直接送れるようになるので、利便性も高まります。
もちろん、送金手数料もほとんどかかりませんので、そのぶんの稼ぎを家族のために、より多く送金できるようになるのです。

ノアコインのプロジェクトは、いったんストップした

ノアコインは、ICOのプレセール(先行販売)が日本向けに早い段階で行われました。その際に、「このプロジェクトは、フィリピン政府やフィリピン航空などと提携を結んで、協力を得られている」旨が喧伝されたことで、話題を呼んだのです。「フィリピンの中枢部も動いている」との事実が、ノアコインICOの社会的信頼の裏付けとなった形で、特に日本から多くの出資(ノアコイン購入)が行われました。
しかし、フィリピン政府やフィリピン航空など、彼の国の有力者との繋がりは、ノアコインプロジェクトには特になかったことが判明し、ノアコインに出資したプレセールICO参加者からは猛烈な抗議が巻き起こったのでした。

そこで、ノアコインプロジェクトはいったん取り下げることになり、ノアコインICOプレセール出資者に対しては返金の対応がなされました。ほとんど「詐欺」であると名指しして、ノアプロジェクトを厳しく責め立てた投資家も少なくありませんでした。しかし一方で、不利な状況にも決してごまかさずに返金対応を講じた態度を、ポジティブに評価する向きもあります。確かに、ノアプロジェクトのホワイトペーパーには、誇大な表現と思しき部分も散見されます。ICOで資金を募る際に、大げさな部分や紛らわしい表現が混じっていると、ICOの全体の信頼性にも関わってきます。

「ノアアークコイン」として、起死回生の再スタート

フィリピンの発展を後押しする仮想通貨を目指すノアアークコインノアコインは、「ノアアークコイン」として生まれ変わりました。「NODE Token」「NOVA exchange」など、NOAHの表記に近い仮想通貨関連銘柄が生まれてきたために、区別をする必要性が生じてきたのと、ノアプロジェクトに「アークシステムズテクノロジーホールディングス」という名の会社が参画してきたために、その社名の一部「ARK」を冠したという経緯があります。
なお、COIN MARET CAPITALIZATIONでは、今でも「NOAH COIN」と表記されています。

ノアアークコインは、2017年末の時期に、米国の有力経済誌である「エコノミスト」「フォーブス」に相次いで掲載され、特集として採り上げられました。
フィリピンの現地で「ノアシティ」「ノアリゾート」といった不動産開発の計画に向けて、契約の締結を着々と進め、NIPPONPAY・SCI・オーガニックオスメニアといった企業と次々に業務提携を決めていったのは、まるで、「ノアコイン」時代のつまずきを払拭するかのようです。

ノアアークコインの上場の現状

ICOプロジェクトに関しては、法規制がほとんどなされていないことから、プロジェクトの遂行者は、みずからを自発的に律していかなければならないのでした。また、コンプライアンスに関する態勢も強化させ、ホワイトペーパーなどにおけるプロジェクトの説明に関しては、誤解や誇張のないよう、慎重にチェックを重ねるようになっています。2018年には、フィリピンの独立記念日である6月12日を目標に、ノアアークコインが世界各地の仮想通貨取引所に上場されて、一般販売を行う準備を進めてきています。

取引所への上場は、株式市場への上場ほどではないかもしれませんが、非常に慎重に審査が行われます。3月の段階で、海外を拠点とする仮想通貨取引所のHitBTC(ヒットビーティーシー)におけるノアアークコインの新規上場が発表されました。しかし、6月からは日本の金融庁による規制により、日本居住者がHitBTCでの取引を行うことが禁じられていますので、ご注意ください。

これから、ノアアークコインの上場が正式に発表される取引所が増えていくものと考えられていますが、気をつけなければならないのは怪しげな代理店からノアアークコインを購入することです。ノアプロジェクトと関係ない、あずかり知らない企業が詐欺を行っている危険性もあります。かならず、ノアアークコインが上場された取引所か、ノアプロジェクトの関係者から購入するようにしましょう。

仮想通貨取引所への上場が実現し、ノアアークコインの取引が定着すれば、以前の様々な騒動の記憶も少しずつ払拭され、信頼も回復されていくでしょう。プレセールで購入した人々も、上場によって価格が高騰すれば報われますし、ノアアークコインのプロジェクトも世界各地で理解され、支持を集めていくことでしょう。