2018年も仮想通貨取引や新たなコインの開発が世界中で行われていますが、一方で、取引所へのハッキング被害やダークウェブといわれる非合法取引に用いられるなど、ビットコインやアルトコインの投資家にとって良くない動きも続いています。インターネットを使った取引という性質から、ハッキングリスクは免れることは難しいですが、2018年1月に起きたコインチェック取引所へのハッキングなどの被害を見過ごすわけにはいきません。

また、ビットコインやアルトコインの投資初心者は、2018年頃から活発化している各国の仮想通貨に対する議論の中に、「規制」という議題があることに疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。しかし、それらは法定通貨に対する脅威と感じ中央銀行などの対策を考えている、という事だけではなく前述で挙げたようなダークウェブ経由による非合法取引など、不透明な部分を解消するためでもあります。

そして、最近ビットコインなどの投資を始めた人や、以前から投資を続けている人にとって、ダークウェブやハッキングリスクに対する備えや知識が必要です。そこで今回は、ダークウェブの意味や概要、ビットコインやアルトコインがどの点で関係しているのか、そしてどのような規制や対策が検討されているかについて紹介していきますよ。

ダークウェブとは

ビットコインやアルトコインのセキュリティについて考える前に、ダークウェブについて意味を知る必要があります。まずダークウェブは、仮想通貨用語ではないことを覚えておきましょう。インターネットには検索エンジンがあり、調べたいキーワードを打ち込むと関連する情報が表示されます。そして、私達一般ユーザーが検索エンジンを利用した時、インターネットに存在する全てのサイトが表示される訳ではありません。

一般的にはGoogleやヤフーなどのブラウザから、調べたい情報を探しますが表示されるサイトはサーフェスウェブと呼ばれるクローラが巡回・チェックしたサイトのみになります。従って、普段利用しているブラウザは、インターネットに記録されている情報の極一部のみが公開されているということになります。

そして、1段階深い層に位置しているウェブが、ディープウェブと呼ばれる一般ユーザーが検索しても表示されないサイトや情報になります。ディープウェブは、日本語で深層ウェブとも呼ばれており、全ウェブの約95%がディープウェブと推測されています。従って、普段私たちが閲覧しているサイトは、5%程の割合となり、ディープウェブの情報量がいかに多いかが分かります。

また、中にはディープウェブとダークウェブを混同している場合もありますが、ディープウェブ自体は危険な領域ではありません。その内容は公開されていませんが、基本的に政府や企業などが作成した機密ファイルや、個人情報など一般に公開してはいけない情報が含まれています。従って、サーフェスウェブと分けられて管理されているのです。

そして、ここから先の領域が危険といわれています。冒頭でも触れたダークウェブという領域です。ダークウェブは、ディープウェブの下層に位置しているとされており、非合法取引に用いられるなど違法性のあるウェブのことを指します。

ディープウェブ同様、ダークウェブも一般のブラウザで検索しても表示されません。したがって、特殊なブラウザを使う必要があります。特殊なブラウザを利用してアクセスすると、匿名性が保護された状態で通信が行われるため、個人を特定することが困難となり結果的に悪用する事例が増えていきます。また、そうした取引が増加することで、闇市場が形成されていき後述で紹介する、ビットコインやアルトコイン市場も巻き込まれることとなります。

ダークウェブで用いられる仮想通貨取引

ダークウェブの基本的な意味や概要は理解できたでしょうか。一般的に利用されているブラウザで検索しても、表示されませんしアクセスできません。また、闇市場が形成されており、非合法取引の温床となっています。従って、一般の方は間違ってもアクセスしてはいけません。

続いては、ビットコインやアルトコイン取引とダークウェブの問題について分かりやすく紹介していきます。前述でも解説しましたが、ダークウェブの特徴は匿名性の高い状態で通信や取引が可能という点があります。しかし、金銭の取引や送金となると、金融機関を通す必要があるので、違法取引が摘発される可能性がありました。そこで、匿名性の高さという点で、もう1つ有名なモノに焦点が当てられました。それが仮想通貨です。

仮想通貨にはブロックチェーンと呼ばれる技術が組み込まれており、ブロックチェーン技術を活用した取引では匿名性が保護されます。さらに、非中央集権方式を採用しているため、仮想通貨を送金する際には金融機関など第三者機関を経由せずに手続きが完了します。従って、非合法取引の決済に、ビットコインやアルトコインを利用する方法が用いられる事例が増えてきました。

また、これらの特徴の他にも、ビットコインやアルトコインには送金コストが抑えられる点や、世界中どこでも送金や決済が可能という点など、非合法取引に利用されやすい条件が揃っていました。後述でも紹介しますが、こういった背景から各国の政府は仮想通貨に対する一定の規制が必要であるとの意見が増えているのです。

ダークウェブ経由で仮想通貨ハッキング

続いて紹介する内容は、ダークウェブで仮想通貨が用いられるのではなく、ダークウェブを使った仮想通貨ハッキングという事例です。ダークウェブは非合法取引だけではなく、様々な違法性のある通信や取引・情報交換などに用いられています。従って、取引以外の面でも仮想通貨が狙われる事件も増えています。

例えば、ダークウェブの匿名性を利用して、仮想通貨取引所へハッキングののちに、流出させた仮想通貨をダークウェブへ送金させるといった被害もあります。コインチェック事件の際も、何者かによるハッキング侵入を許し、仮想通貨ネムが流出しました。そして、後の調査によると流出した仮想通貨ネムの6割以上がダークウェブへ送金されているのではないか、という結果が公開されました。

しかし、仮想通貨の利点がその後の調査に役立っている側面もあり、前述の仮想通貨ネムの流出後の経路については、ブロックチェーンの履歴をたどって分析していました。ただし、ブロックチェーンでたどることが難しい部分もあり、最終的にどの個人や団体がダークウェブを使ってハッキングしたのかまでは不明です。

仮想通貨規制とダークウェブとの関係

様々な違法性で取引以外の面でも仮想通貨が狙われるダークウェブを利用した仮想通貨ハッキングや、仮想通貨を悪用してダークウェブ上で非合法取引を行っている事例などが後を絶たないことから、先進国の間では仮想通貨に関する国際的な規制・ルールを設けるといった、様々な提案や議論が交わされています。また、各国でも独自の規制法や枠組みを作ることにより、仮想通貨を悪用されない健全な市場を保てるよう考えられています。

日本では、2017年4月に仮想通貨に関する法律が施行されましたが、世界的に見ると寛容といえる内容ですが、最近では匿名通貨に関して規制を検討しています。匿名通貨とは、仮想通貨の中でも特に秘匿性が高い機能を持ったコインのことで、モネロやダッシュなどが有名です。

匿名通貨は、取引履歴を辿ることも難しく、取引や個人情報を第三者に知られることなく送金・直接取引が可能です。事業として活用する場合は、秘匿性の高さによって業務上機密性が必要な取引ができるメリットがありますが、一方で資金洗浄に悪用される可能性もあります。

このように、ビットコインやアルトコインとダークウェブに関わる様々な課題が残されているため、完全な自由市場は危険な一面もあります。従って、規制に向けた枠組みが検討されている事について、必ずしも市場の活発化を阻害するということにはつながらないでしょう。また、ビットコインやアルトコインの投資家や企業にとっても安全性・健全性が保たれる大きなメリットがあります。

仮想通貨投資家はセキュリティ対策を万全に

ここまでダークウェブの危険性と、ビットコインやアルトコインとの関わりについて解説してきましたが、投資家も個人でできるセキュリティ対策を行う必要があります。簡単な所では、ハードウェアウォレットで資金管理を行い、取引する時だけソフトウォレットに引き出すなどがあります。

他にも端末のセキュリティソフトを更新することや、色々とできることはあるので、日々セキュリティ意識を高めることも大切です。