最近話題の仮想通貨ですが、中には詐欺ICOや犯罪に利用されるなどその技術が悪用される事案が懸念されるようになってきました。その中でも今回は最近注目されているコインハイブ、というサービスについて紹介していきます。コインハイブとは?といった基礎的な情報からコインハイブの特徴、そしてマルウェアなのかといった噂の真相まで、徹底的に解説していきます。

コインハイブとは?コインハイブの基礎情報

仮想通貨にあまり詳しくない人でも、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった通貨名は聞いたことがあるはずです。しかし、今回紹介するコインハイブとは、BTCやETHのような仮想通貨ではありません。どういうことかというと、コインハイブという通貨が存在しているわけではなく、コインハイブとはサービスの名称を表しているということです。

そこでまずはコインハイブとは?といった基礎的な情報から解説していきます。コインハイブとは、簡単に説明すると『他人のパソコンで仮想通貨のマイニングが可能となる』サービスです。コインハイブの特徴に関しては詳しく後述しますが、要はサイト運営者が利益を得るために開発された新たなサービスです。

コインハイブは正式表記はCoinhiveと表記され、2017年9月14日にスタートしました。コインハイブの目的は『ウェブページにおける邪魔な広告の代替手段を提供すること』とされ、アルゼンチンのエンジニア、Juan Cazala氏が中心となって、開発されました。

他人のパソコンでマイニングとは?コインハイブの仕組みを解説

コインハイブとは、『他人のパソコンでマイニングが可能なサービス』と説明してきました。しかし、これだけではわかりづらいため、かみ砕いて説明していきます。コインハイブの仕組みは、ウェブサイトの運営者が自身のサイトに専用のコードを書き込むことにより、そのサイトを閲覧しに来た人が使用しているパソコンのCPUパワーを使って仮想通貨のマイニングを行うというものです。

マイニングとは、仮想通貨がブロックチェーン上に取引情報を記録するための計算処理のことを指します。そしてこのマイニングはコンピューターリソースを利用して行われます。また、マイニングを行った人には新たな仮想通貨が付与されます。マイニング(mining)とは直訳すると『採掘』という意味ですが、これは仮想通貨を新たに得ることが鉱山で金を探しあてる行為と似ていることから由来されています。

ちなみに、コインハイブを利用することでマイニングされるのは、Monero(モネロ)という仮想通貨です。Moneroは取引の匿名性と安全性を特徴として注目されている通貨です。2014年4月に公開され、一時は、15,000円近くまで高騰しその価値が20倍以上にもはね上がりました。

本来はこのマイニング作業は自分のパソコンを利用する必要がありますが、コインハイブでは他人のパソコンを利用して報酬を得ることができます。そのため、サイト運営者からしたら画期的なサービスとして注目を集めています。

コインハイブを利用することによって得られるメリットは?

コインハイブの仕組みと特徴の次は、コインハイブを利用することによって得られるメリットを紹介していきます。コインハイブはサイト運営者とサイト閲覧者、その両方にメリットがあります。まずサイト運営者のメリットから解説していきます。

サイト運営者にとって最大のメリットは、やはり利益を上げられる点です。従来ではサイトで利益を上げるには広告を貼る必要がありました。特に最近では過剰に広告を貼る運営者もよく見かけますが、これはユーザー視点からしたら非常にサイトが見づらく、離脱の原因となってしまいます。そのため、運営者からしても利益を上げるのが難しい状態でした。

しかしコインハイブを利用すれば広告を貼るが必要なく、見やすいサイト設計が可能となります。ちなみにコインハイブで得た報酬のうち3割は手数料としてコインハイブチームに払い、残りの7割は利益として残すことができます。広告を貼ることなくリアルタイムで収益を上げることができるのは、サイト運営者からしたら大きなメリットです。

次に、サイト閲覧者のメリットを紹介します。それはやはり、広告がなくなることによりサイトが見やすくなるという点です。何か調べ物をしようとした際に、広告を邪魔に感じた経験のある人は多いはずです。スクロール途中に間違えて広告をクリックしてしまい別ページに飛ぶのはイライラしますよね。コインハイブが導入されていればこうした問題を解決でき、自分が知りたい情報をスムーズに見つけることができます。

コインハイブはマルウェア?真相を解明

他人のパソコンでマイニングが可能な「コインハイブ」コインハイブはサイト運営者と閲覧者の両方にメリットがあり一見素晴らしいサービスに感じますが、実はさまざまな問題が発生しています。その問題というのが、閲覧者に無許可で勝手にマイニングがされてしまうということです。

一時期話題となった『漫画村』というサイトを御存知でしょうか。漫画村とは、ユーザーが無料で漫画を読むことのできる違法サイトです。もちろん作者の許可などとっているわけもなく、ユーザーはわざわざお金を払って読む必要がなくなるため漫画家の収益が減ってしまい死活問題となっていました。

そしてこの漫画村には、コインハイブのコードが埋め込まれていました。無料で漫画を読めるためユーザーが増加します。そしてユーザーの増加に伴いパソコンのCPUパワーも増大し、得られる仮想通貨も多くなるという仕組みです。一説によると、漫画村はマイニングだけで1月に200万〜300万ほどの利益を上げていたそうです。

今では、すでにサイトが閉鎖されていますが、実はこうしたクリプトジャック(無許可マイニング)はYoutubeやGoogleなど、ウェブ上では3万件以上も発見されています。また、アルゼンチンのスターバックスでWi-fiを利用していた客のパソコンが勝手にマイニングに利用されていたという事件も発覚しています。

こうした事件を受け、コインハイブはマルウェアリストに加えられました。マルウェアとは、不正かつ有害に動作するよう悪意をもって作成されたコードのことを指し、コンピューターウィルスや有害ソフトに分類されます。

コインハイブの将来は?新たな可能性か、それともマルウェアか

コインハイブのメリットと問題点、両方を説明してきました。ここで気になるのが、コインハイブの将来性に関してです。結論から述べると、コインハイブの将来性は厳しいといわざるを得ません。やはりマルウェアリストに加えられ、クリプトジャックとして使用されていることは社会的に見ても大きな問題となっています。

一方で、コインハイブチームはこの事件を受けて、マイニングを行う際に閲覧者から事前に同意を得るという施策をとることを発表しています。確かにこの改善は重要ですが、この施策を決定したからといって今後クリプトジャックが減るというわけではありません。

こうした他人のパソコンを用いてマイニングをするサービスは、実はコインハイブ以外にも存在しています。仮にコインハイブが事前の同意を施行しても、他社が無許可で行っていたのでは意味がありません。また、競合他社にはコインハイブよりも手数料が安くサービス提供が可能などの特徴もあります。

コインハイブのコンセプトである『無駄な広告の代替手段』というのはサイト運営者・ユーザーともにメリットのあることですので、今後はクリプトジャックへの対策と競合を勝ち抜く施策も必要となってきます。また、漫画村のような事件を防ぐには私たちユーザーのリテラシーや倫理観も問われます。コンテンツが無料であるにはそれなりの理由があるため、しっかりとした判断ができるようにしましょう。