「ローリスク・ハイリターン」の投資も、自分の手で創れる! 仮想通貨のポートフォリオとは?
「ポートフォリオ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
仮想通貨の世界で、ポートフォリオ(Portfolio)といえば、何の金融商品を買って、保有しているのかといことの一覧や内訳のことをいいます。例えば、仮想通貨をはじめ、株、投資信託、債券、土地などの組み合わせのことをポートフォリオと言うのです。
もともと、欧米でポートフォリオは、書類などに折り目を付けずに運ぶための、カバン状の四角いケースを意味します。日本では、ライターやイラストレーター、デザイナーなどが、自分自身を売り込む営業ツールとするために、過去に制作したものをまとめた作品集を、ポートフォリオと呼ぶことがあります。
一方、仮想通貨や株など、投資の世界でのポートフォリオは、投資家が実行している行動の「全体像」や「バランス」を明らかにする面を強調する意味で使われる言葉です。どの仮想通貨を、どれだけ保有いているのかということも、ポートフォリオと言うことができます。
ドキドキ感は、長く続かない
仮想通貨が話題にのぼることが多くなりましたが、仮想通貨が生まれて、多くの人が売買するようになってから、まだ数年しか経っていません。仮想通貨の値動きが激しいので、読みが当たれば一攫千金の喜びがありますが、読みが外れると大損害に繋がる「ハイリスク・ハイリターン」が仮想通貨の特徴であると言えるでしょう。ギャンブル的な賭けの要素が大きく「仮想通貨にお金を入れるのは、投資でなく『投機』だ」と評する人もいます。
しかし、仮想通貨を買うことが、しばしばギャンブル的な投機になってしまうのは、たいていの場合「資産を分散しておらず、仮想通貨しか買っていない」場合が多く、様々な金融商品を混ぜたポートフォリオを構築していないからです。
ポートフォリオを組まず、仮想通貨という、高いリスクの投資商品に集中してお金を入れているからこそ、危ない目に遭ってしまうのです。利益が確定するまで、ドキドキハラハラし、気分が揺れ動いている間は、ある意味で楽しいのですが、そんなことを続けていれば、日常生活に支障をきたしますし、いずれは破綻します。最大の利益を取るのではなく、低リスク低リターンの商品を混ぜ、リスクをおさえたポートフォリオを組むと、比較的落ち着いて過ごすことができます。
いくらギャンブルが楽しくても「金の切れ目が縁の切れ目」ということを肝に銘じておかねばなりません。バランスの良いポートフォリオを組まずに仮想通貨だけに資金を集中していた場合は、リスクもリターンも高く楽しいと思いますが、お金が無くなり次第、その楽しみは終了するのです。
もちろん、ポートフォリオを組まずに高リスクの商品に資産を集中させて、たまたま短期間で大儲けできる場合もあります。しかし、攻めるばかりで「守り」を知らなければ、せっかく儲けた分もあっという間に無くなり、やがて大きな損失を出してしまうでしょう。仮想通貨の値動きは大きく、価格が高騰することが頻繁にあるのでつい油断してしまいますが、実は攻めよりも守りの方が重要なので、バランスの良いポートフォリオを組むことが大切だということを覚えておきましょう。
卵をひとつのカゴに盛るな
欧米では「卵をひとつのカゴに盛るな」ということわざがあります。割れやすい卵を同じカゴに盛って運ぶと、うまくいくときは1回で運べて便利ですが、つまずいて転んでしまったら、全部の卵を床に落として割ってしまいます。
割れやすい卵は、何回かに分けて運んだほうが得をするのです。1回ぐらい転んでも、卵が割れる数を限定的に抑えられるからです。
投資では、お金を殖やさなければ意味がありません。つまり、資金を死守し、お金が減る可能性を最小限に抑えることが、成功するための第一歩です。つまり、高リスクのものに集中せず、低リスクのものと合わせたポートフォリオを組むことが、お金を減らしてしまうリスクを最小限に抑えることができる方法ということになります。
仮想通貨のような「ハイリスク・ハイリターン」に、すべての資金を突っ込まず、一部の資金を安定的な投資商品にも入れて、リスクを分散させると、より安定的な資産運用をすることができきます。どのような割合、どのようなバランスで分散投資を行うかが、投資の世界におけるポートフォリオなのです。
よく知られた株や投資信託などでは、値動きが比較的安定しているものが多いです。その他には、不動産、国債、社債、為替(FX・外貨預金)、金などがあります。
中には、先物取引やレバレッジ取引(信用取引)などには、ある種ギャンブル的な性格があるものもあります。時代によっても異なり、たとえば不動産や株式を売買することも、バブル景気時ならば、ハイリスク・ハイリターンといえました。
しかし、従来型の投資商品の大半は、年に数%~数十%ほどの利益を狙う、堅実な投資商品です。
値動きが大きな仮想通貨に堅実な金融商品を加えると、大きな利益を得られる可能性は低くなりますが、大きく資産を失う可能性も低くなります。リスクが高いもの、低いものを組み合わせてポートフォリオを作ると、リスクを減らすことができます。
分散させればいい、というわけではない
ただし、仮想通貨のような「ハイリスク・ハイリターン」のものと、ゴールドや外貨預金のような「ローリスク・ローリターン」のものを、ポートフォリオでただ単に混ぜればいいわけではありません。
それは単に「ミドルリスク・ミドルリターン」になるだけです。リスクが抑えられるのは素晴らしいことですが、これでは仮想通貨をポートフォリオに入れる意味が消えてしまっています。株式投資やFXなど、初めからミドルリターンのものを選べば済む話です。
リスクは抑えつつ、そこそこのハイリターンを狙っていくポートフォリオを組むことが、仮想通貨を組み入れた資産運用において、最も大切な考え方となります。
値動きの相関を考える
まず基本となるのは、「値動きのパターンが似た投資商品は、分散させても意味がない」という点です。
たとえば、「ビットコイン・イーサリアム・リップル・ライトコイン」というふうに分散を行っても、さほどリスクを抑える効果はないことはおわかりでしょう。
なぜならば、現在の仮想通貨は、ビットコインが大きく値を騰げれば、ほぼすべてのアルトコインが一斉に騰げて、ビットコインが暴落すれば、他のアルトコインも引っ張られて下げるからです。Coin Market Capのように、仮想通貨全体の値動きを一覧できるサービスを使えば、大半の値動きがビットコインに釣られて起きていることがわかるでしょう。
違う方向の値動きをしやすい投資商品を組み合わせる
ポートフォリオの基本は、値動きが異なる商品を組みこんでおくことです。こうすることで、ただ単に、好きな仮想通貨1銘柄に集中して投資するよりも、リスクが抑えられて、リターンを伸ばせる可能性が高まります。
このようなポートフォリオ理論は本来、複雑な計算が必要です。プロの機関投資家も採用し、四苦八苦しながら理想的なポートフォリオを構築しています。
よって、ポートフォリオづくりの神髄について説明するのは難しいですが、事例をモデル化し、シンプルにして解説致します。
たとえば、「逆相関」と呼ばれる値動きをする投資商品の組み合わせがあります。一方が騰がったタイミングで、もう一方は下がり、片方が下がれば下がるほど、もう片方が騰がるという関係性です。2017年8月にビットコインキャッシュができてから、ビットコインとの間で値動きが逆相関していました。ビットコインに入っていた資金が、直接にビットコインキャッシュへ流れ込む大きな流れができた一方、ビットコインも値上がりの勢いが強かったので、一部の資金が戻ってくるような動きもありました。これはこれで密接な連携だといえます。
この場合、ひとつが「ハイリスク・ハイリターン」で、もうひとつが「ローリスク・ローリターン」なら、利益を上げるのに優位性のあるポートフォリオになる可能性があります。
ある仮想通貨Aが、上にも下にも1日10%の大きな値動きをするものと仮定して、別のとある企業の株式Bが逆相関で、上下に1日5%の値動きをするものとします。
金融の世界でリスクとは、値動きの大きさそのものを指します。つまり、仮想通貨Aのリスクは10%で、株式Bのリスクは5%となります。ただ、リスクが大きければ危険で扱わないほうがいい、というわけではありません。リスク、つまり値動きが少なければ、リターンも少なくならざるをえないからです。値動きの小さい相場から大きなリターンを得るには、相場の未来を予測できる超能力者でもなければ無理でしょう。
預貯金ならば、1年後にもらえる利息は予告されていますが、株や仮想通貨の世界では1年後の利益を予想できません。しかし、過去の平均値を取って予測することならできます。これを「期待リターン」といいます。
もし、仮想通貨Aの1年後の期待リターンが6%、株式Bの期待リターンが3%だとすれば、リスクとリターンの割合が同じ(10分の6)です。仮に、AとBを半々、50%ずつを保有していても、リスクをうまく減らせないだけでなく、リターンも得られにくくなります。
ノーベル経済学賞の受賞者でもある、アメリカの経済学者 ハリー・マーコウィッツ氏の提唱する「現代ポートフォリオ理論」によれば、お互いの保有割合を調整すれば、リスクが低くなればなるほど、リターンが高くなる「ローリスク・ハイリターン」の生じる割合の組み合わせを見つけられるというのです。この場合は、仮想通貨Aと株式Bを、おおむね7:3の割合で保有していると、期待リターンの割合がリスクを上回ります。
一攫千金の夢も大事ですが、資金がなくなったら夢も終わりますので、どのようなポートフォリオにするかということはとても重要です。皆さんも、「ローリスク・ハイリターン」のポートフォリオを見つけ出し、資金を死守しながら夢を繋げる投資にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。