Zaft(ザフト)は、大阪を本拠とする株式会社テックビューロが、独自に発行している仮想通貨です。
Zaftは、同通貨の愛好家らによる通称であり、正式名称を「Zaifトークン」(ザイフトークン)といいます。
株式会社テックビューロは、もともと日本初のオリジナル仮想通貨「モナコイン(monacoin)」の発行元だったetwingsを2014年に買収する形で仮想通貨取引所としての運用を本格的に開始しました。やがて「Zaif Exchange(後にZaif)」とブランド名を変更しています。
Zaftは、そのZaifが独自に発行している仮想通貨で、2016年7月に提供が開始されました。仮想通貨カウンターパーティ(CounterParty ;XCP)を、その技術的ベースとしてつくられています。
仮想通貨取引所Zaifは、カウンターパーティそのものを上場させているほか、ペペキャッシュ(PEPECASH)、ビットクリスタル (BCY)、フィスココイン(FSCC)、CAICAトークン(CICC)といった、XCPベースの仮想通貨も積極的に上場させています。
初期段階
Zaftは、Zaifで上場された直後、しばらくの間は1Zaft=4~5円で取引されたこともありました。「ZaicaでGO」など、スマートフォンの位置情報を利用したZaifオリジナルゲームでZaftが使われていたこともあり、局地的とはいえ需要が喚起されていたのです。
しかし、その後は約1年間にわたって、相場が低調に推移してきました。2017年7月上旬には、1zaft=0.08円以下にまで下がっています。なぜなら、「ZaicaでGO」などのゲーム以外で、Zaftがどのような目的で発行され、どのような使い道があり、持ち主にはどのような特典があるのか、テックビューロは公式に発表してこなかったからです。
COMSAトークンとの連動の噂
一方で、テックビューロは日本発のICOプラットフォームである「COMSA(コムサ)」の開設準備を進めていました。そして2017年8月3日、同社からCOMSAのリリースが正式に発表され、同時に10月2日にCOMSA自体のICOである「COMSAトークン」のセールを開始するとも予告されたのです。
その際に、「今のうちにZaftを買っておけば、COMSAトークンをお得に交換できる」との噂が、Zaifの掲示板やインターネット上でまことしやかに駆け巡りました。この時点で、ZaftとCOMASAの関わりについてZaif運営サイドは何も発表していませんでしたが、「Zaftには、何かがあるに違いない」と思わせる、漠然とした雰囲気をまとっていたのかもしれません。
また、1 Zaft=0.1円前後という割安感から、数十万、数百万Zaft単位で大量に購入したと公表する投資家が次々と現れるようになります。そして同年8月中旬、Zaftで一攫千金を狙う全国の仮想通貨愛好家が、保有するビットコインを大量に処分してまで、こぞって購入したことなどが引き金となり、最高で1Zaftが2円を超える急騰を見せたのです。その価格が短期間で20倍を超えたことから、Zaftはにわかに注目を集めました。
しかし、8月27日、Zaifの公式Twitterで「サポートに余りにも質問が多いので言葉を慎重に選んで言いますが、ZAIFトークンとCOMSAプロジェクトは、今のところまだ連携などの予定はありません。是非一度落ち着いてください。」との発表がなされたことにより、相場は一気に冷え込み、1Zaft=0.3円前後にまで急落しています。
再び急騰
Zaif取引所内の掲示板でも騒動となったことを受け、のちに、Zaif運営サイドから、ZaftでもCOMSAトークンセールに参加して購入することが可能であると、正式に発表されました。最初からその予定だったのか、急激に高まったZaftの注目度に押された形で決定されたのかはわかりません。いずれにしても、1Zaft=0.1円時代に目ざとく大量購入し、高値での利益確定に成功した投資家は少数でしょうが、相当な儲けを出せたことになります。
その後、しばらくは1円未満の位置で推移していたZaftですが、2017年末のビットコインの急騰にともなうアルトコイン全体の上昇相場に押されて、Zaftは再び急騰し、12月上旬に1Zaft=4円を超えています。
しかし、その後はコインチェックからのNEM大量流出事件を受けて、仮想通貨相場が全体的に低調となっています。Zaifの代表取締役である朝山貴生氏は、NEM.io財団の理事でもあり、同仮想通貨のあり方やプロモーションに深く関わってきました。Zaifでも積極的にNEMを売り出していたのです。それだけに、同業他社で起きたNEMの不祥事の煽りを受けて、Zaftの勢いも陰りを見せています(2018年7月現在)。
Zaifやテックビューロの将来性と連動
Zaftの将来性は、取引所としてのZaif、ひいてはそれを運営するテックビューロに対する期待感と、高い相関関係にあるといえます。現在のところ、ZaftはZaifでしか上場されていないからです。
Zaifは、Bitflyer(ビットフライヤー)やcoincheck(コインチェック)とともに、取引量や利用者数、知名度などの力量において、「日本三大仮想通貨取引所」の一角をなしているとも評価できます。金融庁の登録も正式に受けていますし、セキュリティ体制や使いやすさを高めるため、サイトのバージョンアップを繰り返しています。仮想通貨取引所としてのZaifのポテンシャルは申し分ありません。
Zaifを展開するテックビューロは、守りを固めるだけでなく、積極的な新規事業を打ち出して展開している点にも期待できます。Zaifグループは、COMSAのほかにも、独自のプライベートブロックチェーンサービスの「mijin」を提供し、業界内での存在感を着々と増しています。
悲運の仮想通貨NEMの将来性とも繋がっている
また、性能面においては仮想通貨界で随一と言われるNEMの運命に、テックビューロは深く関わっています。2018年1月に発生したcoincheck事件では、当時の日本円換算で約580億円にものぼる大量のNEMが流出しました。580億円を札束に換算すれば、約5トンの重量になります。従来の法定通貨ではまずありえない被害額です。
この事件をきっかけに、NEMだけでなく、仮想通貨全体に対する社会的信頼は一時的に地に堕ちたかもしれません。しかし、NEM自体に問題があって発生したというより、当時のcoincheckのセキュリティ態勢の甘さが突かれたにすぎません。当時のcoincheckは13種類の仮想通貨を取り扱っていましたが、ビットコインでもイーサリアムでもリップルでもなく、他でもないNEMのみが犯人グループに狙われたということは、裏を返せば、NEMのポテンシャルが抜きん出ているからこそといえるのです。
coincheck事件の犯人グループはいまだに特定されていませんし、盗まれたNEMも取り戻せない状況です。ただ、遠隔操作によって盗難NEMに事後的なマーキングを行い、途中まで行方を追跡できていたのも事実です。coincheck事件は、NEMの高性能ぶりが図らずも発揮された機会だったともいえるのです。
NEMはテックビューロが一推しの仮想通貨ですから、Zaftの運命とも連動していると捉えることも可能です。よって、Zaifやテックビューロの注目度や将来性に伴い、Zaftが三たび、息を吹き返す日もそう遠くないでしょう。
取引所トークンブーム
Zaftのように仮想通貨取引所が独自にトークンを発行する例は、日本国内では前述のフィスココインや、QUOINEX(コインエクスチェンジ)のQASH(キャッシュ)トークンがある程度で、比較的珍しい部類に入ります。しかし、世界的には「取引所トークンブーム」ともいえる大きな流れが出来上がりつつあります。BINANCEやHuobiなど、世界屈指の取引量を誇る取引所も独自にトークンを発行しており、中には保有者に対して定期的な配当を支給する銘柄もあるほどです。
Zaftが今後、大きく値上がりする機会があるとすれば、Zaif以外のどこかの取引所で上場されたタイミングかもしれません。テックビューロが仮想通貨業界に及ぼしている影響力を考慮すると、その可能性は決して小さくありません。
チャートのわずかな値動きに翻弄されて、Zaftを頻繁にトレードするのはあまり推奨できません。有力なブロックチェーン企業としてテックビューロの姿勢やアイデアに共感できるのであれば、数年単位で中長期的に保有してみるのも意義があります。