仮想通貨取引に興味を持つきっかけとなる通貨は、ビットコインなどのメジャーな仮想通貨が多いでしょう。その中でも企業が活用している通貨のイーサリアムに、興味を持って取引を始める事もあります。
イーサリアムは、ビットコインと違い通貨としての機能だけでなく、あらゆるツールのプラットフォームとして活用されることを目的として開発された通貨です。そのため、前述のように企業がイーサリアムを使って、ゲームやビジネス向けシステムの開発を進めているという訳です。
そして、最近仮想通貨を始めた初心者の方で、イーサリアム取引を始めたばかりの方の中には具体的なシステムの概要や特徴について知らないこともあるでしょう。そこで今回は、イーサリアムの概要や特徴、そしてイーサリアムユーザーに影響のあるアップデートの内容や流れについて詳しく説明していきます。
イーサリアムのアップデートについては、2018年時点ですでにいくつかのバージョンアップが完了しており、2018年8月時点でプロジェクトの半分以上は進んでいる状況です。イーサリアム取引を行っている仮想通貨投資家も、アップデートやハードフォークについて知っておくと相場の波を掴むことが可能となります。
イーサリアムとは
イーサリアムとは、アルトコインの1種でビットコインよりも実装されている機能が多いことが特徴的です。2015年7月30日に公開された、比較的歴史のある仮想通貨といえます。通貨名はイーサリアムで通貨単位は、ETHと表記されており、通貨発行上限枚数は91,786,546 ETHで、ビットコインよりも発行枚数が多いです。
国内の仮想通貨取引所でも取り扱っており、ビットフライヤーやザイフ、GMOコインなど大手仮想通貨取引所が名を連ねています。また、海外の仮想通貨取引所では、バイナンスで取り扱われていることが有名です。
取引承認方式はPoWとなっていますが、今後のアップデート予定にはPoSへ移行することも明記されています。PoW方式の特徴は、トランザクションの処理を仮想通貨ユーザーの各端末で分散して行う点で、これらの処理に協力しているユーザーをマイナーと呼びます。取引処理を待っているユーザーは、マイナーの処理によって手続きが進み、マイナーは最も処理が早くトランザクションの権利を持った者に新たな通貨を配布します。いわゆるマイニングのことです。
対してPoS方式は、端末の処理能力ではなく各仮想通貨ユーザーが、どれだけの期間と量の通貨を保有しているかによって、発行された通貨の報酬権利が変わります。どちらにも優れた点と課題がありますが、イーサリアムの運営チームはPoSの優れた点を重視しています。
PoSのメリットは、51%攻撃やスケーラビリティ問題に強い点が考えられます。51%攻撃は、マイニングの際に処理能力の割合が半数を超えると、トランザクションなどを不正操作できるリスクが発生する問題です。
過去に他のアルトコインで、51%攻撃が実施された例があるので早急に対応する必要がある事といえます。スケーラビリティ問題とは、取引処理の増加によりトランザクションが追い付かず、送金や取引の遅延が引き起こされる問題です。スケーラビリティ問題は、ビットコインでも危惧されていることで、1回のトランザクションが10という設定なのですが、既に遅延する場合があり対応が迫られています。
また、イーサリアムも人気の仮想通貨なので、今後もユーザー数は増加することが見込まれており、PoW方式の取引承認では限界を迎える可能性があります。ちなみに、今のイーサリアムのトランザクション時間は、1回につき15秒とビットコインよりも早い処理を実現しています。
イーサリアムの特徴
続いてイーサリアムの主な特徴について説明していきます。イーサリアム取引を行う上で知っておくべき機能の1つが、スマートコントラクト機能です。
冒頭でも説明していますが、仮想通貨イーサリアムはビットコインのように「通貨」として決済や送金の為に開発されたモノではありません。あくまで、あらゆるアプリケーションのプラットフォームとして、活用されるために開発された仮想通貨です。従って、イーサリアムの機能自体が、アプリケーションの開発に役立つものが揃っています。
その1つが前述で紹介したスマートコントラクト機能で、自動契約機能とも呼ばれています。自動販売機のシステムと例えられる、この機能はコンテンツなどの商品や契約を履行する上で、顧客と自動で手続きを執行してくれます。
例えば、新人コンテンツ制作者AとユーザーBがいるとします。Aは、自身が制作した動画コンテンツを販売したいと考えているのですが、今までは販売・仲介会社などとの契約が必要で、新人クリエイターや契約を行っていないクリエイターがユーザーに届けることは難しい環境でした。
そこで、イーサリアムのスマートコントラクト機能を使うと、コンテンツ管理・販売・契約・事務手続きなど、ユーザー対応からコンテンツ管理まで自動で行ってくれるようになります。従って、クリエイターAの製作した動画コンテンツは、直接ユーザーBに届ける事ができるようになります。また、イーサリアムという大きなプラットフォームがあるので、ユーザーBはその中からクリエイターのコンテンツを探すことができますし、直接コミュニケーションを取ることも可能となります。
これが、スマートコントラクト機能で、時価総額2位になるほどの人気の理由でもあります。
イーサリアムの5つのアップデート
イーサリアムには5つのアップデートが計画されており、既に4つ目まで進行しています。1つ目のアップデートは、オリンピックという名称で、2015年5月に実行されました。アップデートというカテゴリに分類されていますが、実際にはブロックチェーン技術の性能に関する検証作業が行われていました。
2つ目のアップデートはフロンティアという名称で、2015年7月に実行されました。この段階では、まだイーサリアムがテスト運用という状態だったので、フロンティアアップデートによってイーサリアの安定的な稼働を実現するための調整が行われていました。また、イーサリアムの交換やマイニング作業も可能になったのが、フロンティアアップデートです。
3つ目のアップデートは、ホームステッドという名称で2016年4月に実行されました。フロンティアアップデートにより発見されたバグの修正や、DAO事件対策などセキュリティ関係の調整が主な作業内容でした。
DAO事件とは、ドイツのSlock itという企業が始めた、イーサリアムを基盤とした自律分散型投資ファンドサービスで起きたハッキング事件のことです。同サービスの脆弱性を突いたハッキングにより、日本円で約50億円もの被害となりました。これら一連のハッキング事件の対策も含めたアップデートが、ホームステッドということです。
4つ目のアップデートは、メトロポリスという名称で2017年6月14日から、2018年8月時点も進行中となっています。2段階に分けられており、ビザンチウムとコンスタンティノーブルの内、前者のビザンチウムは完了しています。
ビザンチウムは、zk-SNARKs技術の導入やマイニング報酬の調整を行いました。そして、コンスタンティノーブルは、イーサリアムの大きなプロジェクトの1つであるPoSへの移行準備に関するアップデートで、公開されている情報ではPoWとPoSのハイブリッド型となるCasperの導入が計画されています。
このように、イーサリアムのアップデートは何度も行われており、システム開発からセキュリティ強化、そして取引承認方式の移行と、大きなプロジェクトが進行しています。
2018年10月のアップデートとは
そして5つ目のアップデートは、セレニティという名称でPoSへの移行が目的とされています。2018年8月に公開された情報によると、同年10月にアップデートを予定しているとのことですが、詳細は未定です。
また、オフチェーン技術の導入も予定されており、スケーラビリティ問題についても取り組む方向性が示されています。イーサリアムで取引をしている方や、システム面で興味・関心がある方は、2018年10月のアップデートに要注目です。