「FuzeX(ヒューズエックス/単位:FXT)」は2018年1月にICOをした仮想通貨です。複数のクレジットカードの機能と仮想通貨の機能を1枚のカードに統合するプロジェクトで、街の中の実店舗での仮想通貨による決済を促すことが、その目的です。

仮想通貨はスマートカードで〃通貨〃になる

FuzeXは、同名のアシックスのランニングシューズとは関係ありません。Fuzeは「ヒューズ」と読み、英語でダイナマイトや地雷の「起爆装置」「信管」という意味です。電気を遮断するヒューズ(fuse)にも爆弾の導火線という意味があり、語源は同じです。FuzeXは「何か(X)の起爆装置」という意味ですが、何を起爆させるのでしょうか?

それは「仮想通貨による支払いの決済」です。それもネット上ではなく、街の中にあるスーパーやコンビニや外食店など「実店舗」での決済です。「今もやっている」と思われるかもしれませんが、たとえば「ビットコインで決済できます」と言っているお店は、レジに貼ってあるQRコードをスマホで読み込んで決済するので、スマホを操作する手間がかかります。そうではなく、カードを渡して「サインするだけ」のクレジットカード、「暗証番号を入れるだけ」のデビットカード、「機械に通すだけ」の電子マネー並みの手軽さで、仮想通貨による決済が簡単に行えるようにすることを、FuzeXは目指しています。

そのような便利な決済を実現させ、仮想通貨による決済を普及させるには「カード化」が必要です。カードの中にはICチップや、電子マネー「楽天EDY」で利用されるNFC(近距離無線通信)や、「Suica」や「PASMO」など鉄道の「非接触型電子マネー」で利用されるRFID(高周波通信装置)の機能が搭載されていて、クレジットカード決済も、デビットカード決済も、電子マネー決済も、仮想通貨決済も1枚のカードで行えます。スマホを持っていく必要はありません。さらに、社員証のようなIDカードや家電量販店やドラッグストアなどのポイントカードの機能もつけられます。そんなカードを「スマートカード」と呼んでいます。

なぜFuzeXが有望なのか

仮想通貨を実店舗での支払いに対応させる目的で、すでに「UQUIDカード」というスマートカードがあります。本体部分は利用すれば銀行口座残高から即時引き落とされる「デビットカード」ですが、仮想通貨でもチャージができ、MASTER、AMEXと並ぶクレジットカードの最大手ブランド「VISA」と提携しています。おかげで全世界のVISAの加盟店ではクレジットカードを使うのと同じ要領で利用できます。残高にチャージできる仮想通貨がまだ少ないのがネックですが、「仮想通貨をVISAの店で使えるUQUIDカード」は、実店舗での仮想通貨決済の普及に道を開くのではないかと注目されています。

仮想通貨は、米ドルやユーロや日本円など法定通貨のように日常の買物の決済に使われてこそ、真の意味の〃通貨〃になり、流通量が増え、レートも安定します。「日常の決済に使えない」と言われてきた仮想通貨を真の〃通貨〃にする効果があり、すでに実現されている手段が、スマートカードなのです。

「FuzeXカード」を管理するエコシステム

FuzeXプロジェクトが発行を目指すスマートカード「FuzeXカード」は、仮想通貨を格納するウォレットの役割を果たします。それはオンライン接続した「ホットウォレット(ウェブウォレット)」ではなく、ネットワークから切り離された「コールドウォレット」なので、外部からハッキングは不可能です。

カード内のICチップに入るのは断片化、暗号化された「秘密鍵」なので、もしカードを盗まれても、それだけでは仮想通貨を復元できません。決済時にFuzeXカードをオンラインで「FuzeXエコシステム」に接続し、その中に保管されている秘密鍵と照合することで、仮想通貨を復元し利用できます。その意味ではクレジットカードや電子マネーや、QRコードを読み取ってスマホで仮想通貨決済を行う方式より、安全性は高くなっています。

利用可能額まで買物でき、後で口座引き落としになるクレジットカードと違って、仮想通貨の利用可能額は事前にチャージした残高までなので、利用可能額が法定通貨の預金残高以内の「デビットカード」に近い存在です。ただし、仮想通貨と法定通貨の交換レートはたえず変動するので、「朝は利用可能だったのに、昼には利用不可能になっていた」ということがありえます。それに備えて、カードのディスプレイで仮想通貨残高と、それとリアルタイムに変動する日本円など法定通貨換算の残高がひと目で確認できる機能を提供して、利用者の便宜を図っています。

FuzeXカードは電源ボタンをオンにしてピンコードを入力しないと利用できません。1枚で10種類の仮想通貨、10種類のクレジットカードまたはデビットカード、5種類のポイントカードなど最大30種類まで利用でき、QRコードの読取機能、バーコードの読取機能も備えています。二段階認証に加え、スマホアプリとの通信は比較的安全なBluetooth(ブルートゥース)が使われています。そのようにUQUIDカードなどにはない特徴をいろいろ備えたスマートカードの進化型です。

FuzeXプロジェクトは「FuzeXカード」の他に、FuzeXカードのアカウント管理ができ仮想通貨の管理、保管、使用、FuseXカードへの転送・受け渡し、残高照会、交換レート照会、取引履歴の照会などが行えるスマホアプリ「FuzeXウォレット」と、FuzeXカードの運用プラットフォームで、ブロックチェーン技術を活用して取引データの改ざんなど不正を防げる「FuzeX Exchange」というプロダクトもあります。カード、スマホアプリ、システムの三者が一体になり、便利で安全性の高い「FuzeXエコシステム」が運用されます。

この夏、セールスキャンペーンを続けて実施

クレジットカード、ポイントカードとも統合する仮想通貨「FuzeX」FuzeXプロジェクトは、「FuzeXカード」は5年ほど前に完成していて、クレジットカード、デビットカード、ポイントカードに機能を限定して利用が可能になっています。すでに日本でもこのカードを使って買物をしている人がいます。ただし仮想通貨はまだ利用できず、「FuzeXエコシステム」の「FuzeXウォレット」も「FuzeX Exchange」も現在開発中です。その開発資金を調達するために仮想通貨FuzeX(FXT)が発行され、2018年1月15日からトークンプレセールが行われました。イーサリアムベースのERC20トークンで、交換レートは1FXT=0.00008ETH=0.0885米ドル(約9.7円)でしたが、初日だけで売り切れるという人気ぶりでした。

その後、仮想通貨取引所のHitBTCなどに上場して、値動きはICO価格から下がって現在1FXT=5円前後で推移しています。仮想通貨FuzeXのトークンを保有するメリットは、まずFuzeXカードをトークンで購入できることで、カード年会費もトークンで決済すれば割引の特典がつきます。

7月25日から8月3日まで、公式サイトでビットコインかイーサリアムで最低75,000FXT分(およそ37万5,000円)を購入して登録し、それを10月7日まで保有すれば、FuseXカードを仮想通貨のハードウォレット機能だけに限定した「FuseWカード」(定価149米ドル)が無料でもらえるというキャンペーンが実施されました。

続いて8月13日からは、CoinEXの上場候補の人気投票制度でFuzeXに投票すると、エアドロップでトークンが無料進呈されるキャンペーンが実施されています。ランキング順位によって付与額が変わり、当初は500FXTでしたが、1ケタ順位まで上がると50FXTに減額されました。CoinEXはHitBTCよりも大手の取引所なので、そこへの上場を果たせば取引の活発化が期待できます。

FuzeXの将来性と今後

FuzeXは、資金を調達してカードだけでもハードを完成させているので、悪意はなくても新規ICOでたまにある「資金を集めたもののプロジェクトが企画倒れ」になる恐れは小さいと言えます。カード利用者の評判も上々です。今後は「FuzeXエコシステム」の考え方に賛同してその技術を評価し、便利な決済手段として自社のPOS端末で対応可能にするパートナー企業をどれだけ獲得できるかがカギです。たとえば大手航空会社やレジャー施設、大病院や大手流通企業などで支払いの決済手段として採用されたら、カード利用者の獲得で相当なインパクトがあります。

仮想通貨取引所も、仮想通貨も、FuzeXカードを通じて決済利用が拡大すれば需要が増加して取引実績や交換レートが上向くことが期待できるので、プロジェクトに賛同してパートナーになる可能性があります。仮想通貨関連の著名投資ファンドのTaas財団がアドバイザーについたのに続き、7月に「ビットコインの神」と言われるカリスマRoger Ver(ロジャー・バー)氏と提携してビットコインキャッシュ(BCH)がFuzeXに参加したことは、大きなトピックでした。

もっとも、TenX(PAY)、Monaco(MCO)、Centra(CTR)、Change(CAG)など、仮想通貨の「カード化」で日常づかいができる決済手段にするというプロジェクトはFuzeX以外にもあり、競争が激しい世界です。どこが頭一つ抜けるかは、まだわかりません。