仮想通貨FXの醍醐味と言えば、レバレッジ取引と空売りではないでしょうか。現物取引の場合は、自己資金で売買する仕組みなので、買い注文からのみとなっており、自己資金の何倍もの投資はできません。対して、仮想通貨FXでは、自己資金を保証金として取引所から資金を借りて仮想通貨投資を行います。

従って、自己資金を上回る取引のレバレッジを適用できますし、売り注文からの取引となる空売りも可能となります。しかし、仮想通貨FXをこれから始めようと考えている方の中には、このような部分的な特徴だけを捉えて簡単に利益が出せると思っている場合もあるでしょう。

そこで今回は、仮想通貨FXのメリット・デメリットを知る上で欠かすことのできない、証拠金維持率を中心に魅力や気を付ける点を解説していきます。仮想通貨FXを始めるのであれば、証拠金についてよく知る必要がありますよ。

仮想通貨FXは差金決済方式を採用している

仮想通貨FXは現物取引とは仕組みが全く違います。冒頭で簡単に触れましたが、現物取引は自己資金で売買を進めていくため、保証金という概念はありません。ですので、買い約定で保有した仮想通貨は、実際に保有しており決済手段や送金、他の仮想通貨投資に用いることができます。

代表的な使用例としては、海外の仮想通貨取引所でビットコインやイーサリアムを元本として売買するケースです。海外の仮想通貨取引所では、日本円に未対応なため国内の取引所のように円で入金から売買までできません。そこで、一般的な解決方法として、ビットコインなどメジャー仮想通貨での入金及び売買に対応している点を活用します。まず、国内の仮想通貨取引所でビットコインやイーサリアムなど、対応している仮想通貨を現物取引で購入します。

海外の仮想通貨取引所で口座開設を行い、仮想通貨を入金します。その後の売買は全て事前に用意した仮想通貨で対応します。これが、仮想通貨を他の取引に活用するために、現物取引を用いる一例です。

そして、仮想通貨FXの仕組みについてですが、元本すなわち自己資金を使って売買せず、証拠金という扱いに代わります。証拠金とは、仮想通貨取引所にとっての担保金です。この保証金を基準として、仮想通貨取引所から資金を借りて、仮想通貨取引を始めます。そして、仮想通貨FXでは証拠金取引を採用している為、買い・売り、売り・買いの1セットごとの投資結果に応じて証拠金が増減します。

つまり、現物取引のように、約定した際に通貨の移動が行われるのではなく、最終的な投資結果によって保証金が差し引かれたり利益が上乗せされたりします。これが仮想通貨FXの仕組みで、後述で解説する証拠金維持率とも関係があるので覚えておきましょう。

仮想通貨FXの証拠金維持率に関係するレバレッジとは

また、証拠金維持率に関係がある仕組みは、レバレッジ制度があります。レバレッジ制度は、保証金=証拠金の2倍や4倍。5倍や10倍といった倍率で掛けた金額で仮想通貨取引ができます。従って、現物取引のように、自己資金を投入した分だけの割合の利益しか得られないという状況から一転して、少額資金でも大きな投資ができるようになったということです。

ですので、仮想通貨投資家の中には、現物取引から仮想通貨FXに切り替えてレバレッジを活用した取引を続けているケースもあります。しかし、仮想通貨FXのレバレッジ制度には注意点があり、損失が発生してもレバレッジで掛けた金額分になる点です。例えば証拠金が10万円で、1万円を仮想通貨取引に使用したとします。仮に、レバレッジ10倍で損失が1万円の場合は、レバレッジを掛けた金額となるので10万円の損失となります。

つまり、証拠金10万円が全て損失するということです。このように、レバレッジは諸刃の剣なので使い方を誤ると思わぬミスに繋がります。仮想通貨FXはこのような大きな損失を発生させるリスクがあるので、後述で解説する証拠金維持率が必要となってきます。

仮想通貨FXには証拠金維持率が設定されている

仮想通貨FXには、現物取引とは違った仕組みが組み込まれている為、一見すると分かりにくいですが、慣れてくると仮想通貨FXの特徴を理解できるようになるでしょう。

続いて解説するのは、仮想通貨FXのストッパー的役割を担っている証拠金維持率についてです。証拠金維持率とは、買いや売りポジションと証拠金に対する必要証拠金のことを指します。ただ、この表現では、仮想通貨FXをこれから始める人にとっては、分かりにくい内容なので1つずつ順番に説明していきます。

まず、仮想通貨FXには必要証拠金という言葉があります。例えば、1BTC=100円のレートの時に、100BTCの買いポジションを得ようとしていると仮定します。この時に必要な証拠金は10万円となりますが、レバレッジ15倍を掛けて取引を行う場合は、10万円をレバレッジ15倍で割って約6667円が取引に必要な証拠金となります。

つまり、必要証拠金とは仮想通貨取引に必要な資金のことを指すのですが、仮想通貨FXの場合はレバレッジ制度があるので、レバレッジを含めた計算を行います。そして、レバレッジで割った金額が、仮想通貨FXのポジションを維持する為に必要な資金ということを表しています。より簡単に言い換えますと、買いや売りポジションを維持するために必要な資金量のことです。この必要証拠金が証拠金維持率を計算式の中に組み込まれています。

続いては、時価評価総額について分かりやすく説明します。時価評価総額とは、仮想通貨投資家が入金した証拠金と、取引で保有しているポジションの含み益もしくは含み損の総額を足した金額を指します。計算式で表すと、証拠金+評価損益となります。ちなみに、より専門的に言い換えると口座残高+建玉評価総額と表します。建玉とはポジションのことで買い建てや売り建ての総称です。時価評価総額では、仮想通貨投資家がどれだけの仮想通貨に関する、資産を保有しているのかを示しています。

そして、証拠金維持率に戻りますが、証拠金維持率には計算式が存在しており前述の、時価評価総額を必要証拠金で割った金額で算出します。これが示すことは、必要証拠金に対して仮想通貨投資家が保有している資産が、どれだけの割合を占めているかという部分についてです。

仮想通貨FXの証拠金維持率の算出方法

仮想通貨FXで利益を出すための証拠金維持率によるリスク管理仮想通貨FXの証拠金維持率の基本について説明していきましたが、ここでは証拠金維持率の計算から証拠金維持率の意味について解説していきます。

例えば、仮想通貨FXの証拠金が5,000円として10BTC購入時のビットコインのレートが、1BTC=100円と仮定します。この場合購入金額は、10BTC×1,000円なので1万円となります。しかし、証拠金は5,000円なので、残り5,000円が不足しています。

ここでレバレッジを活用します。今回は分かりやすく解説するために、計算結果が分かりやすくなるようレバレッジ2倍で設定していると仮定します。レバレッジ2倍という事は、証拠金の2倍の取引が可能となるので、証拠金5000円×レバレッジ2倍=1万円分までのビットコインが購入できます。

次に証拠金5000円のレバレッジ2倍で、10BTCを購入したと仮定します。ある期間ポジションを保有していたのですが、1BTC900円と100円下落していましたが損切を行うことを考え売り約定を行います。

この場合、損失は1,000円となるので、レバレッジを含めた資金は9000円となります。ここから、証拠金維持率を算出します。まず下落100円×10BTC=-1,000円、決済時のレート900円×10BTC=9,000円を計算し、9000円をレバレッジ2倍で割ると必要証拠金が4,500円となります。更に、証拠金5,000円-1,000円=4,000円が時価評価総額です。最後に、4,000円÷4,500円×100と計算すると約89%という証拠金維持率が算出されます。

仮想通貨FXで証拠金維持率を下回るとロスカットが適用される

前述の一例から引き続き解説しますが、約89%という証拠金維持率はロスカットという仕組みと関係があります。ロスカットとは、仮想通貨取引所が独自に定めた証拠金維持率を下回ったら強制的に決済が行われ、取引所によっては追加で証拠金を入金するまで取引ができない状態になります。つまり、仮に証拠金維持率が95%と定められていたとして、前述のような取引結果になり証拠金維持率が89%となると強制的に決済されます。

メリットは、損失拡大防止に繋がるので仮想通貨投資家にとって、役に立つシステムと言えます。ただし、ロスカットに頼って損切を待っていては仮想通貨FXで利益を得る事は難しいです。損切の管理も仮想通貨投資家自身が行うものであり、あくまで万が一の突発的な損失時にストッパー的役割を担うシステムと覚えておきましょう。