オーストラリアの仮想通貨取引所であるCoinJarが仮想通貨のインデックスファンドを設立しました。ビットコインをベンチマークする「BITOCOIN CLASS」とビットコイン、イーサリアム、リップル、ライトコインをベンチマークした「MIXED CLASS」の二種類を提供していく予定です。
オーストラリアでこのような仮想通貨のインデックスファンドが設立されるのは初めてとなります。CoinJarはオーストラリア国内において約2億円以上の資産を有する投資家、あるいは過去二年間で総収入が約2,000万円を越した大口と言われる投資家に、この仮想通貨インデックスファンドを提供していきます。
オーストラリアでは、昨今仮想通貨やブロックチェーンへの関心が高まっており、マルコム首相もブロックチェーン技術に関心を示しています。2018年の5月には予算の一部を割いていくことについても言及しています。今回は、仮想通貨のインデックスファンドについて触れながら、仮想通貨先進国として成長しようとしているオーストラリアの仮想通貨情勢について解説していきます。
仮想通貨のインデックスファンドとは?
インデックスファンドとは金融商品における主要な指標をベンチマークとし、基本的にはその指標に近い動きをする金融商品のことをさします。日本国内では、株式の主要指標である日経225に連動するインデックスファンドなどが多数存在しています。
仮想通貨におけるインデックスファンドは、時価総額上位で売買されている主要通貨で組成されていることが多いです。特定の通貨を一点張りで購入することによるハイリスクハイリターンの投資とは異なり、インデックスファンドは、それ一つで複数の仮想通貨に投資することができるので、リスクの分散を行うことができます。
今回はオーストラリアでのインデックスファンドでしたが、すでにアメリカでは大手仮想通貨取引所のCoinbaseが、2018年3月に仮想通貨のインデックスファンドの導入を発表しています。それ以外にも仮想通貨関連のファンドはすでに100以上が存在していると言われ、株や投資信託に次ぐ金融商品の選択肢として注目を浴びています。
最近ではこういったインデックスファンド以外にも仮想通貨のETFの承認に向けた動きが活発化しており、これが承認されれば仮想通貨のさらなる市場拡大が期待できます。
オーストラリアの仮想通貨情勢について
オーストラリアでは最近になり、仮想通貨規制などの法整備が進んでいます。市場としてはまだまだ小さく、オーストラリアドル(豪ドル)はビットコインの取引量で世界14位に位置しています。なお、取引量最大の通貨は日本円です。
規制については、2018年4月に政府がオーストラリア金融取引報告・分析センター(AUSTRAC)を通じて、ルール作りを行うことを発表しています。4月時点では3つの取引所にライセンスが与えられています。他の取引所についてもライセンスを取得するように推進しています。
各国の規制状況とオーストラリアの規制状況の異なる点がいくつかあります。各国の規制はマネーロンダリングやテロ資金調達の阻止が大きな目的になっていますが、オーストラリアの規制は社会や消費者の仮想通貨業界に対する信頼性を向上させるため、とAUSTRACのCEOはコメントしています。
また2017年1月には決済手段として法律で認められており、仮想通貨での資金調達ICOについても2017年10月にガイドラインを発表するなど、着々と土台作りを整えています。
クイーンズランド州では仮想通貨スタートアップの観光事業に資金を供与
オーストラリアのクイーンズランド州は2018年8月に、仮想通貨のスタートアップ企業に10万豪ドルの資金を提供することを発表しました。資金提供を受けるのはトラベルバイビット社という旅行・観光業向けにデジタル通貨決済プラットフォームを提供している企業です。
トラベルバイビットはこの資金提供を受け、仮想通貨が利用できる旅行の選択肢を提供していくことを目標としています。さらには仮想通貨が利用できる空港を作っていくためにブリスベン航空とも提携しています。
都市をあげてブロックチェーンを推進していくケースは日本国内にもあり、株式会社スマートバリューが石川県加賀市においてブロックチェーンを用いた都市システムを開発中です。
トラベルバイビットが行う旅行・観光業の場合、各国共通の通貨となりうるビットコインを用いることで、両替の手間や為替変動のリスクなどを抑えることができます。旅行者が簡単に決済を行うことができるのは、クイーンズランド州の観光業を発展させるという面でもメリットとなります。ブロックチェーンを生活に根付かせるという意味で、今後の展開に期待が寄せられます。
2020年には証券取引所のシステムにもブロックチェーン技術を導入予定
オーストラリア証券取引所は、2020年をめどに従来のシステムからブロックチェーン技術を取り入れた新しいシステムに移行することを発表しています。証券取引所においてブロックチェーンを取り入れようとする試みはこれまでもなく、実践されればオーストラリア証券取引所が一つのモデルケースとなります。
証券取引所は膨大な量の取引データを扱うため、セキュリティ管理に多大なコストがかかるので、ブロックチェーンでそのコストを抑えることができれば、株式などの取引においても数多くの貢献が予想されます。このような先進的な取り組みに興味を持つ企業は多く、世界的なIT企業であるIBMはオーストラリア政府と5年間、ブロックチェーン技術を用いてデータ保護を向上させる契約を10億オーストラリアドルで結んでいます。公的な書類に関するペーパーレス化を推し進めており、IBMはオーストラリアを世界トップ3に入るデジタル政府にする、と説明しています。
社会福祉などの福利厚生にもブロックチェーンを適用していく予定で、効率性の向上などといった利点をもたらすことができます。このような政府が中心となったブロックチェーンの推進はマルコム首相も主導しており、国を挙げてブロックチェーンの活用方法を模索していることがわかります。
オーストラリアの今後のブロックチェーン施策に注目
今回、仮想通貨インデックスファンドについて、ブロックチェーン先進国を目指すオーストラリアのブロックチェーン施策について解説しました。オーストラリアのブロックチェーン施策はここ数年で急速に進んでいるのが分かります。国を挙げてブロックチェーンや仮想通貨を活用させる方向にルールづくりや規制を進めており、首相が主導しているという点も他国にはない点です。
また2018年7月には大手仮想通貨取引所のフォビがオーストラリアで取引所サービスを開始しています。フォビは世界第4位の仮想通貨取引所で、このような存在感のある仮想通貨取引所がオーストラリアを拠点の一つとすることは、オーストラリアがブロックチェーンで発展する上で非常に重要な要素になります。
数年後にはブロックチェーンのモデルケースはオーストラリアになっている可能性もあります。日本もブロックチェーンの活用についてオーストラリアの取り組みを見習うところは多く、規制するだけではなく、うまく共存していく道を探っていくためにも、今後のオーストラリアの仮想通貨・ブロックチェーン施策については注目していきたいところです。