米最大手メディアのブルームバーグが、「次の”世紀の空売り”はビットコインかーヘッジファンッドは先物上場待ち」と、目を見張る見出しで仮想通貨の先物取引に投資家の関心を促しました。大方の見方は、先物取引でビットコイン価格がさらに上昇すること期待します。果たしてその方向に向かうでしょうか?ここではブルームバーグのコメントを詳しく紹介しながら、先物上場への動きをまとめてみました。

空売りチャンス到来でビットコイン暴落?

ビットコインが空売りから暴落へ米最大手メディアのブルームバーグ(Bloomberg)によると、ビットコイン先物取引開始を発表しているCMEグループ(シカゴ・マーカンタイル取引所運営)とCBOEグループ(シカゴ・オープション取引所運営)が17年12月中にビットコイン先物を上場すれば、値下がりを見込んだ取引が容易になります。ヘッジファンドは空売りの機会を求めるだろうという訳です。

ヒューストン大学のクレイグ・ピロン教授は「先物はロングポジションよりショートポジションを取るための障害を取り除く。空売りすることを容易にする手段があることで、ビットコインの価格は少し現実に近づくかもしれない」と語っています。一方Flight VCパートナーのルー・カーナー氏は「私も含めてビットコインは人類史上最高の出来事だと思っている人が多い」「ショートポジションの最大のチャンス」と、ビットコイン先物取引に期待をかけています。

ビットコイン価格は、2010年の取引開始時の100万倍以上に高騰しています。当時1ドルを投資していれば、単純に計算しても現在の価値は100万ドル(約1億1000万円)を超えます。CMEグループ、CBOEグループ、そしてナスダックのビットコイン先物取引開始は、価格下落に賭けやすくなります。取扱商品外の商品であるヘッジファンドは、CBOE(12月10日)、CME(同18日)が、ビットコイン先物を上場するのを待ち望んでいます。その訳は、仮想通貨を空売りする新たな機会と見ているからです。

ウォールストリートはビットコインで賛否両論

米国内でビットコインの先物取引が始まれば、金融機関はヘッジの機会を狙うチャンス到来になります。市場関係者によると、ビットコインの値下がりが見込まれる売買ができるようになって、機関投資家の本格的投資を妨げてきた障壁が取り除かれます。個人投資家にとっても、トレードの利便性が高まり、売買できる資産クラスが増えます

ビットコインはこのところ、特にボラタイル状態です。17年11月29日、ビットコインは90分足らずの間に、9,009ドルから1万1,000ドルまで高騰しました。ビットコインの価格はその後、徐々に平静に戻りましたが、ビットコインのボラティリティは大きいと言わなければなりません。

ヘッジファンドBlockTower Capitalの共同創業者であるアリ・ポール氏は、「価格変動の大きい仮想通貨は、明らかに空売り対象になると考えるのは誤りだ。トレーダーの中には、ビットコインの空売りを願っている人もあるだろうが、さらに大きなマネーが値上がりを期待して保有するロング(買い)の手段として、先物上場を待っている」とコメントしています。

ビットコイン取引会社のマイケル・モロ最高経営責任者(CEO)は「仮想通貨取引プラットフォームは、投資したマネーを失わないよう弱気なポジションを取る投資家に、約2000万ドルを貸し付けてきた」と述べ、GDAX、BitMEX、Bitfinexなど取引会社が、利益の上がる資産のショート(売り)を狙うで投資家に買ってもらうようにしていると指摘しています。

先物取引はビットコインをどう変えるか

ヘッジファンドは投資機会を求め先物上場待ちウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、先物取引がビットコインをどう変えるかについて特集しています。WSJはその中で、「ビットコイン相場は年初来550%超上昇し、今度は先物取引が開始されることになった」として、「9歳のビットコインと、1世紀以上リスク管理や投資に使われてきた金融商品の結婚だ」と表現しています

米国では、先物取引は商品先物取引委員会(CFTC)によって規制されています。CFTCは、市場の操作やほかの不正な市場取引を取り締まるため、世界中の数十の取引所が行っているビットコイン売買にも一段と合法的な雰囲気が生まれます。

WSJは、先物取引が仮想通貨の売買にいくつかのメリットをもたらすと指摘します。ナスダックなどがビットコイン先物取引を開始することで、トレードルールが標準化され、売買する投資家にとって、市場の不透明感が薄れます。市場に参入するトレーダーが増えて、売買コストが下がります。仮想通貨の極めて高いボラティリティが低減する可能性もあります。

CMEなどがビットコイン市場に関心を示しているとの報道だけで、ビットコイン相場は3%も値上がりしました。ビットコインはその後右肩上がりの価格上昇を続けていますが。それは原油、金あるいは米国債、S&P500を扱うマーケットが、ビットコインを同等に扱うことになる期待感の表れです。

先物取引はビットコインの最高値更新につながるか?

前述のように、先物取引はビットコインの売買に有利に働くようにも見えます。しかし、先物取引は投機筋の空売り、意図的な市場操作を招きかねません。市場全体に今までになかった懐疑的な雰囲気が生まれ、ビットコイン価格が調整段階に入る可能性も十分考えられます。さらに銀行など大手の金融機関がこの先物に目を付け、マーケットメーカーになる可能性があります。マーケットメーカーは、そのエクスポージャーをヘッジすれば、これまでのビットコイン相場を作ってきた環境が一変するかもしれません。

このプロセスをテクニカルに表現すれば、先物取引は一定の金額で将来資産を売買する契約です。言い換えれば、将来の相場を動かしかねない賭けでしょう。株式と同じように先物は、取引所で売買されますが、株式と違って先物は契約に従っていずれ期限を迎え、安く購入して高く売却するロングの売買でなく、仮想通貨を持っていない状態から売って、価格が下がったら買い戻す空売りのようなショートの取引ということになります。

ニューヨーク連銀も仮想通貨発行を検討

ビットコイン市場には多くの資金と人材が流入し、ビットコインとその他アルトコイン全体の価値は、年初の180億ドル(約2兆円)から3000億ドル(約33兆円)超へと急騰しました。米国など主要国の中央銀行は、数年前からその動きを注視してきましたが、今や中銀自体が仮想通貨発行の是非を含めて多角的に検討しています。

ニューヨーク連銀のウィリアム・ダドリー総裁は17年11月29日、FRBが仮想通貨導入の可能性を検討していることを認めました。同総裁は、ビットコインの規模はドルの対抗通貨となるには、規模が小さすぎると指摘しています。ビットコインは、広く普及する安定的な価値貯蔵手段という、通貨としての重要な役割を担えていないというのが、その理由です。

その上で同総裁は、ビットコインは「実際のところ、むしろ投機的な動き」だとしながらも、技術面では検討する価値は十分にあると語りました。同総裁は「FRBが仮想通貨を提供する可能性を話すのは時期尚早だが、考察は始めている」と語りました。

2017年末から18年にかけて、ビットコインは米国の株式・商品取引市場で次々と先物取引に入ります。仮想通貨市場はこれによって飛躍的に信用が高まることは間違いありません。すでに東京証券取引所も先物取引の可能性を検討し始めています。ロシア、中国などは、政府が独自のコインを発行する動きもあります。ビットコインはじめ仮想通貨は、ブルームバーグが”世紀の空売り”を心配するように、ボラティリティにどう響くかなど、目を離せない状態に直面します。