仮想通貨のトレード(投資)や仮想通貨にまつわる技術に関して普及や認知が広まりを見せている昨今。仮想通貨の値動きに関しては2017年ほどの話題性は無くなってきたものの、仮想通貨の根幹をなす技術や今後の広がりを考えると価格高騰への期待を持つ方も多くいます。

しかしながら、国内においては仮想通貨取引所から顧客の資産が流出したり、仮想通貨の不正出金なども発生したり、仮想通貨は取引において危険性を感じる方もいるでしょう。そもそも、詐欺まがいの仮想通貨が存在するのも事実です。それらの危険性から仮装通貨利用者を守るために金融庁は様々な取り組みを行なっています。今回は金融庁が仮想通貨に関してどのようなスタンスや規制などを設けているのかを解説していきます。

仮想通貨取引を規制する金融庁による改正資金決済法

仮想通貨に関してはご存知の方も多いと思いますが2017年(平成29年)4月1日より金融庁によって改正資金決済法が施行されました。主な内容として仮想通貨を取り扱う交換業者の登録制度が導入されました。導入だけではなく仮想通貨の仮想通貨取引所や仮想通貨販売所を営む時には金融庁への登録が義務になっています。利用者側から見ると仮想通貨交換業者として登録された仮想通貨取引所に口座を開設する時には本人確認書類の提出が必須となりました。

ちなみに、金融庁の施行した改正資金決済法では仮想通貨を決済手段の一つと定義し財産的な価値があるものと定めています。仮想通貨取引所利用者は利益確定によって得た利益を雑所得として計上して、その金額に応じて課税されることにもなっています。

業者や顧客に一定以上の条件を課している法律にはなりますが金融庁が厳しく監視しているのは顧客側よりも仮想通貨交換業者(仮想通貨取引所)に関してになります。場合により、金融庁は業務改善命令などを発動し厳しく監視していくことになっています。

改正資金決済法でも厳しい規制になりますが、2018年7月には金融庁はさらに仮想通貨の規制に金融商品取引法を適用させるか検討開始したことも分かっています。金融庁の施行した金融商品取引法は証券会社に適用される厳格な規制であり、自社資産と顧客資産の分別管理やインサイダー取引の禁止などが盛り込まれています。

法律の適用で仮想通貨ETFの上場など投資家にとっては好材料が考えられますが、その金融庁の規制の壁を乗り越えて運営できる仮想通貨交換業者がどれだけあるかも懸念材料となっています。

仮想通貨業者に対して金融庁は行政処分を行う

改正資金決済法により交換業者としての登録が義務付けられたのと同時に、交換業者が不正を行ったり、不具合が生じたりすると、金融庁は必要に応じて業務改善命令や停止命令を下すことができます。(いわゆる行政処分)

具体的な事例を取り上げると、2018年1月に仮想通貨の多額流出事件を発生させたコインチェック(みなし業者)は、事件後から業務改善命令を受けて運営体制の見直しを命ぜられました。業務改善命令はコインチェックに限らず、2018年6月にはビットフライヤー、ビットバンク、ザイフなど国内でも仮想通貨大手にも下されています。

業務改善命令などを受けても改善をしていけば良いわけですが、再三にわたる業務改善命令に十分な対応をしなかったみなし業者のFSHO(エフショー)が金融庁に登録拒否される事態にも発展しています。先にも触れましたが改正資金決済法に加えて金融商品取引法も適用とさせるのは仮想通貨を取り巻く課題が未だに解決されない現状があるからとも考えられます。

金融庁が出している仮想通貨のホワイトリスト

仮想通貨は1500種類以上の銘柄があると言われ、日夜、仮想通貨の種類は増えています。メジャーな銘柄であれば取引も安心して行えますが、いわゆる草コインと言われるような仮想通貨の銘柄は詐欺まがいのものも含まれています。そうした現状から、安心した取引が推奨できる仮想通貨の銘柄のリストを参考にしてほしいところです。国内では「ホワイトリスト」と呼ばれるものになります。実際のところ、金融庁が「ホワイトリスト一覧」などと掲載しているわけではありません。「金融庁に登録された交換業者が取り扱っている銘柄」をホワイトリストと一般的に読んでいるだけですので注意が必要です。

ホワイトリスト入りしているのはビットコイン、ビットコインキャッシュ、イーサリアム、リップル、ライトコイン、ネム、モナコインなどのメジャーな銘柄のみとなっています。トークンではコムサ、カイカコイン、フィスココインなど登録済みの交換業者が開発や発行している銘柄が多くなります。今の所、ホワイトリスト入りしているのは20種類弱の仮想通貨のみです。ちなみに、金融庁に登録済みの交換業者と取扱銘柄は金融庁のホームページにて確認できます。(https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/index_2.html)適宜、確認して取引に活用してみましょう。

仮想通貨について金融庁が出すガイドラインとは

仮想通貨について金融庁が出すガイドライン改正資金決済法が施行され、金融庁は仮想通貨交換業者を監査する時の金融庁職員向けの手引きを公開しています。裏を返すと、金融庁が監督していく指針が示されていることになります。(先ほど紹介した金融庁のホームページで確認することが可能)ガイドラインを確認して頂くと分かりますが、非常に細部に渡って仮想通貨交換業者を監督していくことが分かります。(正式には事務ガイドライン)経営管理、取引時確認等の措置、利用者保護の措置、システムリンク管理など顧客にとれば難解な語句が並んでいる文面でもあります。

中でも金融庁が監督する時には注目しているのは仮想通貨交換業務のリスク管理とコンプライアンスに関するものです。理由はマネーロンダリングやテロ資金供与対策で不備があると仮想通貨交換業者や日本国内の問題に留まらず世界に悪影響を及ぼす危険があったり、厳しい指摘の対象になりかねないからです。

具体的に取引時確認及び疑わしい取引の届け出の要否の判断を行っていない、取引時確認を検証する体制を整備していないなどが発覚すると金融庁からの指導が入ると考えられます。リスク管理とコンプライアンスと同様に指摘されるのは内部監査や経営管理体制に関するものです。取締役会を中心に運営会社全体でリスク管理を最重要課題と位置付けていないと金融庁による指摘の対象になります。このように金融庁のガイドラインが公表されていることで既存の仮想通貨交換業者やこれから参入を考える企業は適切な対応をしなければならなくなります。

金融庁が認めた仮想通貨登録業者

最後に金融庁が認めている仮想通貨交換業者について触れていきます。2018年9月3日現在、金融庁が認可した仮想通貨交換業者は16社になっています。

国内最大規模のビットフライヤーをはじめ、ザイフ、ビットバンクなど知名度のある仮想通貨交換業者も名前を連ねています。テレビCMなどで認知度を広めているDMMビットコイン、インターネット証券などで実績のあるGMOコインなどもご存知の方は多いのではないでしょうか。それらの多くは2017年9月29日の登録となっており、12月26日に登録されたビットオーシャン以降、新たな業者は登録されていません。

金融庁からの認可を目指すのは多額流出事件からの再建を図るコインチェックなど数社あります。インターネット事業で有名なサイバーエージェントや楽天やヤフーなどの大手企業も登録申請の準備を進めているところです。

今後、どれだけ国内の交換業者が増えるのかも見所の一つです。注意して欲しいのは金融庁が認めた交換業者、その業者が扱っている銘柄だから価値を保証するわけではありません。加えていうと金融庁が仮想通貨を推奨しているわけでもありません。金融庁が認めたから全てにおいて安全というわけではなく、改正資金決済法に基づき基準に該当しているだけにすぎません。

仮想通貨の保有や取引に関しては自己判断で行わないといけません。国がルールを設けているのは安心感を持ちますが最終的には自己責任となります。