仮想通貨を始める人にとって、「仮想通貨取引所のアカウントを開設する」ことは「ウォレットをつくる」ことと並んで、最初に必ず行うタスクです。慣れてきた方は、複数の仮想通貨取引所にアカウントを開設していることも少なくないと思います。今回は仮想通貨の取引所の存在意義や提供価値について改めて考察します。

仮想通貨取引所が果たす3つの役割

仮想通貨取引所には細かい役割はたくさんありますが、主には下記の3つの価値を提供しています。
① 法定通貨と仮想通貨、仮想通貨同士を交換できる「両替所」機能
② 購入した仮想通貨を保管する「金庫」機能
③ 仮想通貨の情報を提供する「ニュース」機能

① については仮想通貨取引所の本来的な役割です。もし、自分で仮想通貨を売買、もしくは交換できる相手を探してこられれば、仮想通貨取引所に手数料を払う必要はありませんが、多くの人はタイムリーに交渉相手を見つけてくることは困難です。仮想通貨取引所を利用することで、柔軟、かつ安全に仮想通貨の売買ができます。

② について仮想通貨取引所のアカウントには購入した仮想通貨をそのまま保管しておくことができます。他の保管方法と比べ、一長一短はあるのですが、セキュリティ面と利便性を総合して考えると(仮想通貨取引所を選べば)決して悪い保管方法ではありません。

③ については仮想通貨取引所が積極的にニュースを展開しているわけではないのですが、提供されているチャートや気配値などのリアルタイムの情報や、仮想通貨取引所によってはチャットなどを通して、最新の情報を入手することも可能です。

仮想通貨が取引所に上場することの意味

仮想通貨は多少技術に明るければ簡単に作成することができるため、世界中には何千、何万という「詐欺コイン」があふれています。しかし、有象無象の仮想通貨であっても、仮想通貨取引所に上場することで、単に簡単に売買ができるようになるというだけでなく、その通貨が仮想通貨取引所に見とれられるに足る通貨だと世間に認知されることも指します。

それゆえ、ICOの案件などで「上場確定」などといったことがセールスポイントになります。といっても仮想通貨の取引所にもピンからキリまでありますので、「どこに」上場しているのかがとても重要です。たとえば、世界最大手級のBinanceやBittrexなどに上場している通貨は、価格が上がるかどうかは置いておいて、ある程度信頼性のある通貨であると認められていることを意味します。

また、日本の仮想通貨取引所は審査基準が厳しいため、世界的にはそれほど有名でなくても、日本の仮想通貨取引所に上場することも一つの信頼性を上げる要因になります。一方で、名の知れた取引所でも、お金さえ払えば上場が認められるといったものもありますので、「どこに上場しているか」はしっかり判断する必要があります。資金集め目的の詐欺ICO案件が「上場」を大々的に告知しているのは大体、お金で上場できるような仮想通貨取引所です。

仮想通貨取引所保管とウォレット保管の比較

仮想通貨取引所に資産を保管しておくのと、ウォレットを作成して保管しておくことのメリットとデメリットを比較してみます。結論から言うと、仮想通貨取引所で保管しておくことは「ある程度の安全性」と「かなりの利便性」を同時に確保できるものになります。仮想通貨取引所は常にセキュリティ対策にはしっかりとお金をかけ、預けられている資産や自社の資産をサイバー攻撃から守っています。

また、ケースバイケースにはなりますが、万が一仮想通貨取引所に預けていた資産が盗み出されるようなことが起きた場合、約款で補償される場合や、コインチェックのように会社の方針で補償が起きる場合もあります。ウォレットで手元に保管していた場合、紛失や盗難、全てが自己責任になります。

ウォレットといっても常時オンラインに接続されているホットウォレットと、物理的にインターネットから切り離すコールドウォレットがあり、さらされるリスクの種類はそれぞれ異なりますが、自己責任になるという点はどちらも共通です。また、取引所に置いている資産は、売却、送金、決済、全ての仮想通貨の機能を即時に使うことができます。

送金と決済についてはホットウォレットも同様ではありますが、コールドウォレットはハッキングからの絶対的な安全性を担保する代わりに非常に流動性は悪くなる手法です。これらの内容を総合して考えると、仮想通貨取引所保管にももちろん一定のリスクは残るものの、総合的には評価の高い手法であると言えます。

仮想通貨取引所に資産を分散しておくことの重要性

仮想通貨取引所に資産を分散しておくことの重要性仮想通貨取引所がある程度信頼性の高い資産の保管場所である、とはいってもそれは一つの取引所に資産を集中させておいて良い、ということを意味するわけではありません。複数の取引所間で、もしくは、取引所とウォレット、という形で分散して保有することでリスクヘッジを行うことが奨励されます。

なぜなら、仮想通貨取引所のセキュリティや補償はある程度の信頼性がありますが、それでも決して絶対ではありません。コインチェック事件のように、特定の通貨のセキュリティ対策が甘い、といったことも、とりわけ日本はナーバスになっているのであまりないと思いますが、海外の仮想通貨取引所ではあり得る話です。

また、仮想通貨取引所が補償をうたっていたとして、その仮想通貨取引所が破綻してしまえば、期待されていた補償が履行されないといったことも可能性としては考えることができます。基本的に取引所は非常に高いセキュリティレベルをしいていますが、それでも一度成功すると莫大な資産を盗むことができる、仮想通貨取引所へのハッキングは、悪意あるハッカーにとっては魅力のある選択肢です。

「投資」という行為そのもの全般に言えることではありますが、いついかなる状況においても、「絶対」はありません。それを踏まえた上で、どのような形で自身の資産を守るのか、最悪のケースでも、全資産を失うよなダメージを防ぐことができるのか、最終的には自己責任です。

マルチシグに対応している仮想通貨取引所について

利用、資産を管理する取引所を選ぶ基準として使いやすさや手数料の安さ、情報量ももちろん大事なのですが、ある程度大きな資産を保管しておくのであれば、何よりも大切なのはセキュリティレベルです。具体的には、顧客資産をオンラインと切り離したコールドウォレットで管理しているか、や「マルチシグ」に対応しているか等の要件です。

コールドウォレットについてはごく簡単にですが先ほど記載しましたので、マルチシグについて解説します。技術的な詳細は長くなるので割愛しますが、マルチシグとはウォレットにアクセスする際に複数の秘密鍵を必要とするセキュリティを高める技術です。

セキュリティ面で安全性が格段に高まるだけでなく、それもあってはならないことですが、取引所自体が悪意のある不正送金を行うことも困難になり、そういった懸念も同時になくすことができます。資産をある程度の量取引所に保管するのであれば、そういったマルチシグ対応している取引所に保管するのがベターと言えるでしょう。

ただし、マルチシグ対応してる取引所がハッキングを受けたケースもあり、非常に強固なセキュリティではありつつ「絶対」ではないので、注意が必要です。大手のbitFlyerや、上場企業のGMOが母体であるGMOコイン、金融庁登録第一号のQUOINEXなどの取引所はマルチシグに対応し、顧客資産を守っています。

3大取引所と呼ばれているZaif、コインチェックは対応しておりませんので、(コインチェックのネム盗難はそれも原因の一つでした)必ずしも取引量やネームブランドとセキュリティレベルが一致するわけではない点は認識したうえで、利用する取引所を選定する必要があります。