仮想通貨の急速な人気や市場の過熱ぶりに対応するように2017年(平成29年)4月1日から改正資金決済法が定められ、仮想通貨は決済(支払い)手段の一つとして位置付けられています。仮想通貨は法の改正がない限りは資産となり、税法上では「モノ」として扱われますが、2017年7月1日からは仮想通貨取引に対して消費税は非課税になっています。

また、仮想通貨の売買などで利益を確定した際には「雑収入(雑所得)」に分類され税法に従った課税がなされることになります。少しずつ仮想通貨に関しての法律は整ってきている印象はありますが、事細かに定められていませんので2018年3月の仮想通貨の利益に対する確定申告の際にはご苦労された方もいるかもしれません。確定申告にも関係してきますが、仮想通貨を「相続」、「贈与」した際はどのようになるのか疑問に思っている方もいることでしょう。そこで、仮想通貨の相続や贈与に関して今回は解説していきます。

相続や贈与とは

まずは根本の知識として解説していきます。相続と贈与は似ていますが異なるところがあります。ポイントは財産を与える人がご存命か亡くなっているかの違いで分けて考えます。財産を与える人がご存命の時に財産の所有権を無償で誰かに譲ることが贈与です。簡単に言えば、持っている財産の所有を他の人に渡すことです。

それに対して財産を与える人が亡くなってしまって、財産を対価0円で所有権が移ることが相続です。こちらも簡潔に言うと、財産の所有者であった方の親族などが法律に基づいて財産を得ていきます。ただし、遺言書などがあると相続する人が変わってくる場合もあります。

贈与の場合は財産を所有している人が自分の意志で譲渡する人を決めるので、その後の処理はそこまで複雑ではないでしょう。一方で相続順位というものが民法により定められています。

民法で相続人と定められているのは配偶者と血縁者になります。血縁者の定義は子供、孫、父、母、祖父、祖母、と言った直系的な人々と兄弟や姉妹などとその子供も含まれます。順位的には配偶者、子、孫やひ孫が第1順位となり、父母や祖父母は第2順位、それでもいなければ第3順位の兄弟姉妹やその子供なども相続人となります。誰もいないと最終的に国庫へ財産が引き継がれることになります。

財産の相続税や贈与税について

現行の相続や贈与を行なった際には相続税や贈与税がかかることになっています。相続税に関してですが、基礎控除の計算式があり「3000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。具体例をあげて考えてみると、配偶者1人とその子供2人だとしましょう。

その場合は相続人が3人となりますので、3000万円+600万円×3人=4800万円となります。よって、被相続人の財産が4800万円を超えなければ相続税を支払う必要がありません。基礎控除の金額をみても納税者はそれほど多くありません。国税庁の発表では平成28年度分の課税割合は8.1%となっています。ほとんどの相続人が課税対象になっていないことが分かります。

一方で贈与税は1年間で一人当たり110万円までは非課税となります。例えば、財産を配偶者1人と子供2人に贈与すれば330万円までは贈与税がかからない計算になります。相続にしても贈与にしても財産が近しい人に渡るという点では変わりませんが課税方式は変わってきます。

仮想通貨に相続税や贈与税はかかるのか

相続や贈与、また、それらに関わる税制度は分かってきたでしょうか。ここからは仮想通貨の相続税や贈与税に関して解説していきます。はじめに断っておくと、仮想通貨に関する相続税や贈与税の扱いは明確になっていません。

仮想通貨の普及を考えればこの辺りの税法も整えられてくるかと推測できますが、今の所、仮想通貨に対する税は現行の法制度をもとに考えていきます。先ほども触れましたが改正資金決済法により、仮想通貨はモノとして扱われます。モノであっても財産的な価値がある以上は相続税や贈与税の対象になると考えておきましょう。

なかなかイメージできない時は貴金属などを考えてみてください。貴金属も相続税や贈与税の対象になります。相続や贈与を受けた日の業者買取価格をもとに税額計算をして評価額を計算します。

仮想通貨も同様で、相続、または贈与された時点での価格(価値)で評価額を計算していきます。ただし、仮想通貨はボラティリティーも高く価格は秒刻み、分刻みで変化します。極端な例かもしれませんが、残された財産である仮想通貨の価格が相続、贈与を受ける当日に暴騰でもすれば、相続税や贈与税が一気に跳ね上がる可能性もあります。

仮想通貨の値動きにある程度対応していくような税法が整えられるようにならないと、受けとった人が不利になっていきます。少しでも早く、仮想通貨の税制や税法が整えられることが望まれます。

仮想通貨にかかる相続税や贈与税を節税する2つの方法

仮想通貨にかかる贈与税と相続税について仮想通貨の暴騰に備え、あくまでも今の法をもとに考えた場合ですが、仮想通貨に関する税を少なくする方法があります。それは2つありますが、いずれも生前贈与と言って財産を持っている方がご存命中に贈与を行う方法です。一つ目は「暦年課税」の仕組みを利用することになります。贈与税は1年間で110万円までなら非課税とお伝えしました。「1年間で」と言う部分をうまく活用するのです。

例えば今年の1月1日から12月31日までの1年間に110万円以内で贈与、翌年1月1日から12月31日までに110円以内で贈与と言った形で非課税枠内での贈与を繰り返すと課税対象にはなりません。仮想通貨の投資家には億り人と呼ばれるような1億円以上の利益を出す人も登場してきましたので、多額の贈与を考える場合は暦年課税の仕組みを活用してみるといいでしょう。

もう一つは「相続時精算課税」です。こちらは贈与を受けた時には課税されない制度です。将来まとめて課税されることになり、生前に受け取った財産について最大2500万円までであれば課税対象にはなりません。

一つだけ注意点とすれば相続時精算課税では生前に贈与を受けた金額と引き継いだ金額の合算により相続税の課税をします。相続税の課税割合は非常に少なくなっていますが、念のため覚えておきましょう。まだまだ法律の整備が追いついていない部分もありますから、仮想通貨の相続や贈与に悩んだ場合は税理士や弁護士など専門家に相談してみましょう。

仮想通貨の相続や贈与に向けて

ここまで、相続や贈与、それらに関わる税金も含めて解説しました。仮想通貨の相続や贈与においても課税される可能性はあります。しかしながら、仮想通貨そのものを引き出せなければ相続はできません。

端的にいうと財産を持つ人が亡くなる前に、仮想通貨を保管しているウォレットや取引所のログイン情報を把握しておく必要があります。国内の仮想通貨取引所でも多額流出事件や不正出金の事案が発生していますから、身内といえ、簡単にIDやパスワードを教えることには抵抗があるかもしれません。ただ、相続や贈与を考え始めたときにはそれら仮想通貨取引の情報を共有しておくことがスムーズな処理に繋がります。

ウォレットのタイプも様々ありますから、「〇〇はウェブウォレットで■■はモバイルウォレットに保管し、パスワードは…」、「仮想通貨取引所はAとBとCでメールアドレスとパスワードは…」のように相続人と被相続人による共有はしておきましょう。ウォレットの場合はパスワード、秘密鍵がないと引き出せませんが、仮想通貨取引所の場合は最低でも仮想通貨取引所がわかると問い合わせはできます。その時は相続があったことを伝えて指示に従いながら相続してください。