仮想通貨の代表ともいえるビットコインのETFがついに米国で認可されるのではないかと、市場関係者の注目を集めています。ビットコインETFが認可されれば、機関投資家などの大口の投資資金が仮想通貨市場に流入するとされています。約半年以上低迷しているビットコインを主とする仮想通貨市場が上昇に転じるきっかけになるのではということで、ビットコインのETFに大きな期待が寄せられているのです。

ビットコインETFを始める前にETF投資の仕組みを知る

ETFとは「上場投資信託(Exchange Traded Funds)」の略で、株や債券など、様々な金融商品に連動するような仕組みになっています。ひとくちにETFといっても、様々な種類のものがあります。

日経平均のETFは、日経平均株価に連動しますし、債券に連動するETFもあります。様々な種類の中から、自分が投資したいカテゴリーのETFを選んで買うことができるというわけです。最近では、株や債券のETFだけではなく、外国株式のETFや金、プラチナや原油に連動するETFなど、たくさんの分野におけるETFが販売されており、投資家の選択肢も広がっています。

ETFの魅力は、少額の資金でも分散投資ができるということです。例えば、日経平均株価とは、日経平均に採用されている大手上場企業225社の株価をすべて足し、225で割ったもの(つまり平均値)です。

日経平均に連動するETFを購入すると、「225社の平均値に投資している」ということになり、225社に分散投資しているのと同じ効果を得ることができます。もしもETFを利用せず、株の状態で、225社すべてに分散投資しようと思ったら、資金がいくらあっても足りません。

しかし、日経平均ETFを購入すれば、たとえ投資額が1万円であっても「1万円を、日経平均に採用されている225社に分散投資している」のと同じ効果が得ることができるので、ある銘柄ひとつに投資するよりも、ETFを利用することによってリスクがぐっと減ることになります。

ETFの特徴はビットコインでも同じ

ETFのもうひとつのメリットは、株のように売買ができるということです。通常、投資信託は、1日に1回算出される「基準価額」によって価格が決まります。この価格は、市場が終わった後に計算され、公表されます。

日経新聞の投資信託欄などに出ている基準価額は「前日のもの」となっています。投資信託の解約を行う場合は、前日の基準価額を目安にして、解約することになり、解約時の正確な基準価額は、解約した日の夕方、つまり解約後にわかるという仕組みです。

このように、投資信託の解約をするときは、解約時の正確な基準価額はわからず、「前日の基準価額はこれくらいだったから、今日はこれくらいだろう」という、大まかな予測に基づいてしか、解約をすることしかできないのです。

しかし、ETFは、株と同じような性質を持っており、市場が開いている最中は、株と同じように数秒ごとに、常に値動きしています。そして、株と同じように、売りたい瞬間に、注文を出してすぐに売ることができます。また、売りたい価格をあらかじめ決めて、指値しておくこともできますし、「今とにかく買いたい」という場合は、ETFの成行注文を使って購入することもできるのです。

つまり、投資信託でありながら、株と同じように値動きがあり、買いたい価格、売りたい価格で売買できるのがETFの特徴ということになります。毎日市場の終わりに計算される、たったひとつの「基準価額」を基に計算される投資信託よりも、売買しやすいことがメリットです。もちろん、株の暴落時には、素早く売り抜けることも可能です。

ビットコインETFを購入する最大のメリットとは

今回、ビットコインETFの申請がなされているのは米国ですが、ETFの仕組みは、日本と変わりません。もし、米国でビットコインのETFが承認された場合は、ビットコインに連動して動く「ビットコインETF」が誕生することになり、株と同じように、ビットコインの市場が開いている時間は、自由にビットコインを売買できることになります。

ビットコインETFに組み入れられる仮想通貨は、今のところビットコインのみです。「ビットコインETFで分散投資できないのであれば、ビットコインそのものを買うのと違いはないのではないか」と思う人も多いと思うのですが、ビットコインではなく、ビットコインETFを購入する大きなメリットが、ビットコイン投資家にはあります。

それはビットコインの現物を管理する手間が省けるということです。ビットコインETFを購入した場合、証券会社からビットコインの売買注文を入れることになりますので、株の取引と同じように、入金してビットコインを購入、もしくはビットコインを売却するだけです。

しかし、ビットコインの現物を買った場合「仮想通貨の取引所がハッキングされて、預けているビットコインが盗まれるのではないか」「取引所に預けておくのは心配だから、ハードウォレットでビットコインを管理したいけれど、自分の操作ミスでビットコインが消滅してしまうかもしれないので、怖くてできない」など、不安を感じる人も多く、ビットコイン投資への一歩を踏み出せない人もいます。

ビットコインを始めとする仮想通貨を安全に管理する方法として、ハードウォレットが注目されていますが、コンピューターや電子機器に詳しくない人が行うと、パスワードを忘れてしまったり、やってはいけない操作をしてしまったりして、ビットコインなどの仮想通貨を取り出せなくなってしまうこともあります。

取引所を利用している場合は、パスワードを忘れた場合、身分証明書などを提示して相談し、解決してもらえることもあるのですが、ハードウォレットを利用する場合は、すべて自己責任となりますので、知識が乏しい人にとっては、逆にリスクが高いとも言えるのです。ビットコインETFであれば、そのような心配もなく、安心してビットコインに投資することができるのです。

ビットコインETFが上場した場合の仮想通貨市場への影響

ビットコインETFの将来性と可能性仮想通貨のETFが承認された場合、それに組み入れられているビットコインなどの仮想通貨は上昇します。現在は、ビットコインETFが審議されているので、それが認められれば、ビットコインの価格が上がることとなります。

ビットコインの価格が上がる理由は、ETFがビットコインを実際に買うからです。ETFの仕組み上、ビットコインの価格に連動しようと思えば、ビットコインの現物を買う必要があり、ビットコインETFに投資資金が集まれば集まるほど、ビットコインが買われることとなります。

日経平均に連動するETFは、実際に日経平均225社の株を購入していますので、価格が日経平均に自動的に連動するような仕組みになっています。ある金融商品や指数に連動させようと思うのであれば、それを実際に買う必要がありますので、ビットコインETFが始まれば、ビットコインに大きな資金が流れ込むことは、ほぼ間違いないでしょう。

ビットコインの現物の管理の問題もあり、現在ビットコインなどの仮想通貨に投資していない機関投資家でも、ビットコインETFならば投資しようと考える場合もあります。何百億、何千億という資金がビットコインETFに流入すれば、発行枚数が限られているビットコインが高騰する可能性は、非常に高いと考えられています。

ビットコインETFの申請は何度も却下されている

ビットコインのETFが承認されるのではないかと期待が集まっていますが、ビットコインETFの申請は、今回が初めてではありません。直近では、2017年3月に、フェイスブックのアイデアを考え出したとされる、ビットコイン長者の「ウィンクルボス兄弟」が、米証券取引委員会(SEC)にビットコインのETFを申請し、却下されています。

その理由としては、「過去のビットコイン記録を踏まえると、不正取引を防止し、投資家の利益を保護するための設計が不十分だと判断した」ということでした。今回、何度目かのビットコインETF申請が行われているわけですが、SECが広く投資家の意見を聞くために設置した電子掲示板でも、ビットコインETFを認めるようにという意見が殺到しているようで、今までと違い、認可される可能性が高いのではと予想されていますので、良い結果を期待したいところです。

ビットコインの価格は、ETF承認の可能性が高いとして上昇傾向にあります。しかし市場全体が楽観ムードになったときほど、注意をしなければならないという相場の格言もあります。今後、「ビットコインETFの承認の可能性が高い」「ビットコインの価格が高騰するだろう」というニュースも多く目にすることと思いますが、そういう時ほど冷静に考えて、ビットコインETFが却下されるかもしれないリスクをしっかりと頭においておく必要があります。

皆が楽観ムードの時に「却下」のニュースが出た場合、ビットコインの価格がかなり暴落することは想像に難くありません。ビットコインETFに関する発表日時は、目安はありますが、突然行われる場合もありますので、発表が想定されている8月から9月にかけては、特に情報に敏感になっておくようにしましょう。