イーサリアムにおいて大きな節目となった「DAO事件」を知っていますか?このDAO事件がきっかけで、イーサリアムからイーサリアムクラシックが分裂することとなったため、有名な事件として知られています。このDAO事件では、時価総額2位のイーサリアムが盗難されたということ、非集権のブロックチェーンを使っている仮想通貨であるのに、中央集権的な解決方法を選んだこと、イーサリアムからイーサリアムクラシックが生まれたことの3点を理解しておく必要があります。それでは、イーサリアムのDAO事件がどのようなものであったのかについて、詳しく見ていきましょう。

DAO事件で存在感の大きさを認識させたイーサリアム

DAO事件が有名な理由は、盗難されたイーサリアムが仮想通貨において、ビットコインに次いで特別な仮想通貨であると考えられているからです。イーサリアムは仮想通貨市場において、不動の時価総額2位を誇っており、他のアルトコインとは一線を画しています。また、その開発者は「ヴィタリク・ブテリン」といい、若干19歳のときに、イーサリアムのホワイトペーパーを世間に発表したということで、希代の天才と呼ばれています。

彼は、特定の目的だけではなく、あらゆる目的のために皆が使えるようなブロックチェーンのプラットフォームを目指してイーサリアムを考え出しました。そして、ビットコインには備わっていない「スマートコントラクト機能」を発案し、イーサリアムに実装しました。

イーサリアムの特徴であるスマートコントラクト機能とは?

スマートコントラクト機能とは、あらかじめ定められた条件が満たされた時に、自動的に処理が行われる仕組みのことをいい、この機能はよく自動販売機に例えられます。

自動販売機は、お金を入れ、ボタンを押すと、自動的にその商品が出てきますね。この一通りの処理は、人の手を介さずに、「お金を入れる」「ボタンを押す」という条件さえ満たせば自動的に行われています。このように、一定の条件が満たされると行われる処理を、ブロックチェーン上で自動的に行うことができるのが、スマートコントラクト機能です。

イーサリアムが生まれて数年のうちに、このスマートコントラクト機能を使って、数多くの仮想通貨が誕生しました。最初はビットコインやイーサリアムしかありませんでしたが、今日数百種類以上にまでなったのには、イーサリアムがあったからといっても過言ではありません。イーサリアムの機能を使って数多くのICOが行われ、様々な仮想通貨が誕生していきました。

このように、イーサリアムは他の仮想通貨にはない独自の機能を備えており、それがイーサリアムを特別な通貨にしている理由です。そして、そのイーサリアムが分裂してしまうきっかけを作った事件が、DAO事件なのです。

イーサリアムとDAO事件

DAO事件の「DAO」とは、自立分散組織の略で、英語でDecentralized Autonomous Organizationと表記されます。DAOのプロジェクトは、非中央集権の組織を作ることを目指したプロジェクトで、イーサリアムのスマートコントラクト機能を利用したICOによって誕生しました。

ICOでは、参加希望者はイーサリアムを送り、その代わりにトークンを受け取るという仕組みになっています。そして、このDAOのICOは非常に人気が出て、たった二日で10億以上、最終的には投資家から150億円を集めることとなりました。こうして、「DAO」のプロジェクトで使われるトークン「DAO」は、ICOに参加した人に配布され、DAOのプロジェクトが始まりました。

DAOは約150億円ものお金を集め、注目を集めた大規模なプロジェクトでした。しかし、システムに脆弱性があり、そこを狙ってハッカーが不正送金を行い、約50億円相当のイーサリアムが盗まれるという事態が発生しました。

DAOでは「報酬機能」が備わっており、報酬のイーサリアムを、DAOがICOで皆から集めた出資金を管理するアドレス(親DAOのアドレス)から、個人のアドレス(子DAOのアドレス)に、一度だけ送金できるという仕組みがありました。しかし、その機能に問題があり、一度ではなく、何度も送金が可能な状態になっていました。ハッカーはこのシステムの問題点を利用し、何度も不正な送金を行い、その結果、約360万ETHが盗まれてしまったのです。

しかし、この送金機能の仕組みには、親DAOアドレスから子DAOのアドレスに送金したETHは、送金してから27日間絶たないと移動させられないという決まりがあったため、ハッカーはイーサリアムを盗んだものの、そこから27日間は動かせない状態になっていました。DAOの運営側は、その対策を考える猶予期間として27日が与えられたということになります。犯人が盗んだイーサリアムを動かせるようになる27日後までに運営側は対応策を行わなければならないことになり、DAO事件に対する3つの対応策が考え出されました。

DAO事件で検討されたイーサリアムの問題の3つの解決策

DAO事件で検討された対応策は3つありました。1つ目は、「ソフトフォークを行い、盗まれたイーサリアムを凍結してしまうこと」、2つ目は「ハードフォークを行い、ブロックチェーンの記録をハッキング前までさかのぼること」、そして3つ目は「何の対策も行わないこと」です。

ソフトフォークとは、仮想通貨の仕様を変更することを言い、ソフトフォーク前とソフトフォーク後の通貨の互換性が保たれることが特徴です。これを行うと、ハッカーが盗んだイーサリアムの移動先に指定したアドレスを無効化することができ、ハッカーは盗んだイーサリアムを引き出せなくなります。しかし、実質イーサリアムが凍結されて、誰も資金移動させられなくなるので、DAO事件によって盗まれたイーサリアムを運営側に取り戻すこともできないのが欠点でした。

ハードフォークを行うと、イーサリアムの仕様の変更前と変更後の互換性が失われるという特徴があります。ブロックチェーンの記録を、DAO事件によってハッカーに資金移動された取引以前までさかのぼり、その取引をなかったことにすることができ、このハードフォークは、イーサリアムのネットワークに参加しているノードの過半数の支持が得られると実行することができました。この方法は、DAOが盗まれたイーサリアムを取り戻すことができる唯一の手段でした。

3つ目は、ハッキングされたイーサリアムに対して何も行わないという選択でした。DAO事件でハッキングされたイーサリアムはハッカーにそのまま盗まれてしまいますが、イーサリアムのいかなる変更を行わないという選択です。

これら3つの対応策を検討した結果、イーサリアムのネットワークに関わっているノードの約90%の支持を得ることができたため、イーサリアムはハードフォークされました。

DAO事件でイーサリアムからイーサリアムクラシックがハードフォーク

DAO事件によってイーサリアムからイーサリアムクラシックが分裂DAO事件では、ハードフォークという解決策が選択されたわけですが、イーサリアムのコミュニティの中には、この決定に不満を抱く人々もいました。なぜならば、ハードフォークという、とても集権的な方法が採用されたからです。

仮想通貨においては、ブロックチェーンという非集権的な、画期的な技術が使われています。非集権的とは、簡単に言うと、誰にも管理されないということを意味しています。政府や企業など、何者にも管理されない「非集権な通貨」であるからこそ、ビットコインやイーサリアムなどに魅力を感じたという人も多く、仮想通貨の支持者が拡大してきたという経緯があります。つまり、非集権の理念は、仮想通貨を支持する人々の間では、欠かすことができない考え方なのです。

しかし、このDAO事件では、ブロックチェーンの理念と相反する「集権的」な解決策が選択され、それに反対する開発者達が、イーサリアムからイーサリアムクラシックを分裂させました。イーサリアムクラシックは、イーサリアムと同じスマートコントラクト機能をもっていますし、機能的にはイーサリアムに何ら劣りません。

また、発行上限が定められていないイーサリアムに比べ、イーサリアムクラシックは2億1000万ETCまでと決められているため、イーサリアムに比べて希少性が高いのも特徴です。イーサリアムクラシックは、イーサリアムに比べて市場価格が低く、低評価される傾向がありましたが、最近はコインベースに上場を果たすなど、きちんと評価されるようになってきました。

このように、DAO事件は、イーサリアムクラシックの誕生のきっかけとなりました。どの解決方法が正解だったのかということは、未だに議論が続いています。ただ、非集権という理念はとても大切ですが、何か問題が起こったときそれを実際に解決するには、開発陣がリーダーシップを取り、集権的に解決していくことが必要な場合もあります。そういう意味では、仮想通貨全体として、大きなジレンマを抱えていると言えるでしょう。今後、同じような問題が起こったときには、DAO事件と同じように、大きな議論を呼びそうです。